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ときめきざかりの妻たちへ  作者: まんまるムーン
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 朋美には幼いころからずっと憧れている人がいた。


 葛城慶介。


 親同士仲が良く、二つ上の慶介に物心つく前から朋美は本当の兄のように慕っていた。


 一人っ子の慶介は、弟が欲しかったらしく、朋美を弟のように扱った。


 お転婆だった朋美はそんな慶介と遊ぶのが大好きだった。


 やがて朋美は慶介に対して恋愛感情を抱くようになった。


 あれは確か朋美が小学校高学年の頃、ふいに慶介が聞いた。


「朋ちゃんは大きくなったら何になりたいの?」


「う~ん…お嫁さんになりたい!」


 慶介君の…と言いたかったけど、そこは言わなかった。


「ダメだよ、朋ちゃん! 女の子だって一人で生きて行けるようにちゃんと職業を持たなくちゃいけないよ!」


 当時中学生だったにも関わらず、慶介はそんな事を言った。


「慶介君もそんな人が好きなの?」


「うん。女でも強い人が好き。」


「…そっかぁ…」


 それからというもの、朋美は将来慶介と結婚出来るように強くなろうと努力した。


 体を鍛えるために近所に出来た水泳教室に通い始めた。


 そして中学は付属の学校へそのまま行く予定だったけど、親に頼んでかなりスパルタな塾へも通い始めた。


 朋美の成績はグングン上がって、気が付くと、常に学内トップになっていた。



 朋美が中等部卒業間近になって、慶介の両親が離婚した。


 慶介は母と共に母方の実家に引っ越しする事になったと親から聞かされた。


 それを知って、朋美は全速力で慶介の家へ行った。


「け…慶介君! 引っ越しちゃうの? 遠いとこなの?」

朋美は息を切らしながら慶介に問いかけた。


「…うん。東京のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの家にしばらく住むことになったんだ…。」

慶介は悲しそうに言った。


「…東京…遠いよ…」

朋美はポロポロ涙を流しながら言った。


「近いよ! 車だったら二時間もかからないじゃん!」


「…だって私、車の運転出来ないよ!」


「じゃあ朋ちゃん、手紙書いてよ! 俺も返事書くからさ!」

慶介も目に涙を浮かべて言った。


「うん! 書く! 毎日書く! 私ね、めちゃくちゃ勉強して必ず東京の大学に行くから! だから慶介君、絶対待っててね!」

朋美はあふれる涙をしゃくりあげながら言った。


「うん。東京でいっぱい遊ぼうな!」

慶介も涙をポロポロ流しながらも笑顔でそう言った。



 今思うと、慶介が何かと朋美に強くなれと言っていたのは、親の離婚のせいだったのかもしれない。


 人前には全く出さなかったが、実は慶介の両親はずっと昔から仮面夫婦だった。


 子供ながらに親の離婚の危機を感じ取って不安な日々を過ごしていたのだった。


 それを思うと朋美はいつも、少年だった慶介を抱きしめてあげたくなる気持ちになった。




 慶介がいなくなって、朋美は高等部へ進学した。


 朋美は新入生代表に選ばれ、挨拶をした。


 モッコと絵梨、そして中等部になって外部から入学してきた沙也加もまた同じクラスになった。


 グループの中でも絵梨とは一番仲良しで背格好や趣味も似ていたので、周りからは「本当は姉妹なんじゃない?」言われる程だった。


 昔は明るかった絵梨が、例のドラマに出てからというもの、日に日に表情は暗くなっていった。


 彼女の事を悪く言う人間も増えてきた。


 朋美は例え世界が彼女の敵になったとしても自分だけは味方でいる、と誓った。


 朋美はずっと、絵梨も一緒に東京へ行こうと誘っていた。


 もともと絵梨は芸能活動で、高校時代はほとんど東京暮らしだったから全く知らない土地では無いし、人間の多い都会の方が逆に人目を避けられるんじゃないかと思った。


 しかし絵梨はその誘いをかたくなに拒否した。


 その頃、すでに絵梨の父親の会社は破綻寸前で両親ともに心を病んでいた。


 そんな両親を置いて自分だけ逃げるような事は絵梨には出来なかった。


 そして朋美は一人東京へ行った。



 その時、朋美は運悪くイタリアにいた。


 休みを利用して友人たちと美術館巡りに行っていた時だった。


 朋美が滞在しているホテルに母親から絵梨の父親が自殺したと連絡があった。


 朋美はすぐに絵梨に連絡した。


 しかし絵梨には全く連絡が付かなかった。


 困った挙句、朋美は慶介を頼ることにした。


 慶介はすぐに新幹線に飛び乗って絵梨の元へ向かってくれた。



 それが朋美と慶介、そして絵梨との別れのきっかけになるとは、その時思いもしなかった。





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