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ときめきざかりの妻たちへ  作者: まんまるムーン
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3


「今度さ、皆で会わない? 私、セッティングするから!」

モッコが言った。


「うん! いいね!」

朋美は即答した。


「…あの子も呼んで大丈夫?」

モッコが神妙な顔で聞いてきた。


ーあの子…沙也加の事を言っているのかな…?


「私に気を使う必要ないよ。」

朋美は言った。


「…そう? だって…」

モッコは言葉を濁した。


 朋美と沙也加の関係…確かに朋美は彼女の事が苦手だった。しかし自分が苦手だからと言って、高校時代に同じグループだった子を一人だけ呼ばないというのは大人げない。


―それにしても…沙也加もこっちに住んでるの?


「沙也加もこっちにいるのよ!」

モッコに考えていた事を言われた。


「旦那さんの転勤で、二年くらい前からこっちに住んでるんだって。きさらぎ駅じゃ無くて二駅先の弥生ヶ丘なんだけどね。」


「そうなんだ…。」


 朋美は沙也加との事を思い出して、少し気分が落ちていった。でも高校卒業して何年も経つし、彼女だって大人になっている。昔とは違うかもしれない。そう思って気を取り直した。


「じゃあさ、私が皆に連絡して日程や場所とか決めるから! 今度また連絡するね。」

モッコは言った。


「なんだかモッコだけにいろいろさせちゃって悪いわ。」


「そんな事ないよ。私、今は仕事してないし。まあ、仕事してなくてもする事はたくさんあるけど、それくらいの余裕はあるから気にしないで!」


「…じゃあ、申し訳ないけどお願いするわ。」

モッコは家族の元へ戻っていった。








「朋美~! お腹空かない? そろそろお昼にしようか?」

過去の思い出に浸っている朋美は夫の呼びかけで我に返った。


「あ! もうこんな時間だ…。」

お昼と分かるとお腹が鳴りだした。


「街の探索を兼ねてどこか食べに行こうよ。」

和也の提案で、朋美たちは外食することにした。



 とりあえずレストランの多い駅の周辺めがけて歩いた。


 新しく出来た街だけあって、どこも歩道の幅をたっぷり取ってある。歩道と車道の間には自転車専用の道路もある。その道路沿いには5m感覚で街路樹が植えてあり、木漏れ日が優しく降り注ぐ。


「これだけ木が植えてあると、夏でも日傘が要らないよね…。」

朋美はふと呟いた。


「女性に優しい街づくりって感じだよね。」

和也も感心して言った。


「偶然かもだけど、日焼けにまで配慮してくれたかのような街づくりだし、これだけ広いとママチャリでも安心だし、こんな配慮って企画部に女性が多いか、そんな意見が通りやすい風通しのいい会社なんだろうね!」

朋美は言った。


「俺らも東南に面接受けに行くか!」

和也はニヤっと笑って言った。転職する気なんか、さらさらないくせに…と思いながら、ふと夫から目を逸らし、通りの向かい側を見ると、感じのいいカフェがあるのに気付いた。


「ねぇ、あそこ…良くない?」


「お! いいじゃん。入ろうか!」


 朋美たちはさっき通り過ぎた横断歩道まで戻り道路を渡った。店の前まで来ると、表のテラス席を片付けていた店員さんが朋美たちに気付き


「いらっしゃいませ!」


と、とびきりの笑顔を向けてくれた。


 その男性は朋美たちと同世代くらいだった。もしかすると、この店の店長さんかな…そんな事を何気なく思いながら二人は店内に入った。


 道路に面する壁は全面ガラス張りで、店内は明るかった。壁は打ちっぱなしで、天井も剥き出し。至る所におもしろい形の植物が置かれてあって、落ち着く空間だった。


 そして朋美はパスタ、和也はサンドイッチを注文した。スタッフの女の子は、どうやら入りたてのようで、慣れない端末作業に四苦八苦していた。奥から若い男性が出てきて、その女性のスタッフと交代した。


「大変お待たせして申し訳ありませんでした。」

男性店員は頭を下げた。「店長」と胸のプレートに書いてあった。


「どう見てもあの店長20代前半ってとこだな…。」

席に着くなり和也がカウンターの方を見ながら呟いた。どうでもいい事だったので、朋美は話を半分に聞きながら窓の外の景色を眺めていた。



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