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ときめきざかりの妻たちへ  作者: まんまるムーン
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最終回です。



 きさらぎガーデンヒルズ駅のフードコート


「じゃあ、お正月は向こうなんだ…。一緒に合格祈願に初詣に行きたかったな…。」

満里奈の言葉に純は顔を真っ赤にした。


「純君! 向こうで叔父さんたちにたっぷりお年玉貰おうと思ったから早くにいっちゃうんでしょ!」


「ち、違うよ…。ママたちが勝手に決めた訳で…。」

純は俯いてブツブツ話した。


「いいよ! 満里奈、受験終わったら春休みにじーじとばーばのとこ行くから。向こうで一緒に遊ぼ!」

満里奈は顔をクシャっとさせて笑った。


「うん。楽しみに待ってるね!」

純は顔を赤らめながら笑顔で言った。









 ダンス教室


 リクとルイは楽しそうにレッスンをしていた。


 浩太とモッコは我が子の踊る姿を微笑ましく見守っていた。


「は~い、じゃあ今日はここまで~! みんなまた来週会おうね~!」

新しくやってきたルキヤ先生が言った。


 教室を出るなり、リクとルイは興奮気味に話した。


「パパ! ママ! 新しい先生見た? めっちゃカッコ良くない?」


「ルキヤ先生、マジKポップのボーイズグループに入れるよね!」


 浩太はユナの事を思い出していた。


 彼氏にフラれて泣いていた顔、酔っぱらってバーでキスしてきた事、いろんな思い出が浩太の頭の中を走馬灯のように駆け巡った。


 浩太はハッとして、その思い出を振り払うかのように頭を振った。


 モッコはそんな浩太をジッと見ていた。


―そう簡単には忘れられないわよね…私だって…


 モッコも輝也の事が忘れられないでいた。


 ついメッセージを送ってしまいたくなる衝動に駆られる。


―でも…


 モッコはじゃれあいながら歩くリクとルイと浩太を見た。


―私の生活はここにある…。


 気持ちに蓋をするように、モッコはそっと自分の胸の上に手を置いた。










 沙也加と輝也のマンション



 輝也はコーヒーを飲みながらウットリとパソコン画面を眺めていた。


 丘の上の小さな暮らし by mocco


―モッコさんの冬支度…素敵だな…。見ていてほんと癒される…。


 そこへ沙也加が乱入して来た。


「ちょっとあんた! 聞いた? 朋美の今度の彼氏、あのムーンフロントグループのCEOなんだってよぉ~! もうマジ信じらんない! 何であの子ばっかりそんな凄い人と出会うのよっ!」


「な…何の話だよ? 朋美さん、もう彼氏できたの? 良かったじゃないか。辛い目に遭ったんだから。」

輝也は面倒くさそうに言った。


「冗談じゃないわよ! また差を付けられちゃったじゃない! あぁぁぁ~、もうやってらんないわ…。あ、そう言えば、こないだ朋美が持ってたプラダのバッグが素敵だったのよ! 丁度クリスマスだし、プレゼントにちょうどいいわっ! プラダ案件ね! 覚えといてよっ!」

沙也加は言うだけ言って去って行った。


―何だよ…。ついこの間、私は朋美に対するコンプレックスを克服したわ! とか息巻いていたのに…。やれやれ…ってか…何? プラダ案件ってぇぇぇ~!!!










 和也の実家



「絵梨さん! ダメよ! ちゃんと食べなきゃ!」


「はい! お義母さま!」


 和也の母親は張り切って栄養のある料理をたくさん作った。


 絵梨の出産まで、和也の実家で生活することにしたのだ。


「絵梨さん、お昼からデパートに行かない? 子供服のフェアをやっているんですって!」

和也の母は目をキラキラさせて言った。


「はい! 喜んで!」

絵梨は嬉しそうに応えた。


「母さん! あまり絵梨に無理させないでくれよ! 母さんから言われたら、立場的に嫌だって言えないだろ?」

和也はネクタイを結びながら母に釘を刺した。


「あ…ごめんなさいね…。私ったら嬉しくってつい…。」

母はしょんぼりした。


「お義母さま! 私、嬉しいんです。お義母さまが私の為にいろいろしてくださるのが…その…本当の母親に甘えているみたいに思えて…私…ずっと家族が欲しかったから…。」

絵梨は義母に微笑みかけた。目に薄っすら涙が浮かんでいた。


「実の母みたいに甘えてちょうだい! あ~ダメね、私…。年のせいか涙腺が緩くて…。」

義母はハンカチで目を押えた。


「ちょっと失礼~。」

和也が二人の中を割って入った。


「パパ、お仕事頑張ってきますからね~。君はママの言う事をちゃ~んと聞いて、いい子にして待ってるんだよ~!」

 

 和也はかがんで絵梨のお腹に向かってそう言うと、チュッとキスをした。


 そして立ち上がると絵梨の頬にキスした。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい!」


 玄関先で絵梨と義母は和也を見送った。


 そして二人、笑顔で見つめあって家の中へ入っていった。











 朋美は夜の繁華街を一人歩いていた。


 クリスマスのイルミネーションで街は輝いていた。


 ふと、ショーウィンドーのディスプレイが気になって足を止めた。


 そこには可愛い赤ちゃん用の服が飾られてあった。


 朋美は目を細めてそれを眺めた。


 その時、いきなり後ろから肩に手を回されて、そのまま抱きしめられた。


 朋美は驚いたが、すぐにピンときた。


「横田さん! いい加減、離れてくれませんか?」


「…無理。」

横田は朋美の頭に頬ずりしながら言った。


「いったいどこから湧いてきたの!?」

朋美は呆れて言った。


「湧いて出てきたなんて…酷いな~」

横田は抱き着いたまま朋美に体重を乗せてきた。


「…う…うぅっ…。ちょっとぉ~!」

朋美は横田に向かって叫んだ。


 横田はクスっと笑って体重をかけるのを止めた。


 そしてまたギュっと朋美を抱きしめた。


 朋美はもう横田が離れてくれるのを諦めた。


「絵梨の赤ちゃんにどうかなって思って見てたの。」

朋美は呟いた。


「いんじゃない! 絵梨さんにクリスマスプレゼントに買ってく?」


「あ~! いいねぇ~!」


「ずるいな~。絵梨さんだけ…。」

横田は拗ねた。


「あら、横田さんも何か欲しいの? そうねぇ…研修中だし、いろいろと大変でしょうから…私が何かプレゼントしましょうか?」

朋美はふざけて言った。


「うんうん! ちょうだい!」

横田は犬が尻尾を振るみたいに愛嬌を振りまいた。


「そうだな~何がいいかなぁ~。」

朋美は人差し指を顎にやって考えた。


「じゃさ、スキー行かない? で、温泉入ろ! 一緒に! 混浴!」

横田はニッカーと笑って言った。


「は? 何考えてんの? 付き合っても無いのに…。」

朋美は呆れた。


「じゃ、付き合ってよ! てか結婚してよ!」

横田はブスくれて言った。


「え~? 横田さんとですかぁ~?」

朋美がそう言うと、横田は口を尖らせて上目遣いで朋美を睨んだ。


「前向きに検討させていただきます。」

朋美はお辞儀して言った。


「あ~~~! それ! 仕事で遠回しに断られる時に言われるヤツ~!」

横田は文句をたれまくった。


「別に今は仕事じゃ無いでしょ?」

朋美は言った。


 横田はクスっと笑って朋美の腕に自分の腕を組んで歩き始めた。


「どこにしよっか? ニセコ? それともいっその事、海外行っちゃう? カナダ? スイス? ねぇ、行こうよぉ~!」

横田はずっと嬉しそうに朋美に話しかけた。


 その時、朋美は突然立ち止まった。そして空を見上げた。


「あ…雪…。」

雪がチラチラ舞い始めた。


 朋美は手のひらを出した。


 その上にゆっくりと雪が舞い落ちて、そして溶けて消えていった。


「…初雪か…。」

横田は呟いた。


 そして横田も空を見上げた。


 雪はどんどん勢いを増して舞い落ちてきた。


 朋美は舞い落ちる雪を嬉しそうに眺めた。


 横田はそんな朋美の姿を見て目を細めた。


「…クシュン」

朋美はくしゃみをした。


 横田は朋美の側へ行き、自分のジャケットを開いて包み込むように朋美を抱きしめた。


「…温かいね…」

朋美は呟いた。


「うん。」

横田は言った。


「行こっかな…スキー。」


 朋美がそう言うと、横田は目を丸くして朋美を見つめた。


 そして嬉しそうに目を細めて、腕の中の朋美のおでこにキスをした。




 煌めくイルミネーションの下、クリスマスソングが鳴り響いている。


 手を繋いで歩く二人の後ろに雪は降り積もり、街は銀色へと変わっていった。







 終り






最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました! 

また来年もよろしくお願い致します!

皆さま良いお年をお迎えくださいませ!(n*´ω`*n)


まんまるムーン

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