表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/58

目覚め

「う~ん」

 蒼乃が目を覚ます。

「あれ?」

 蒼乃はいつの間にかちひろのベッド脇で、顔をベッドに突っ伏し、寝てしまっていた。蒼乃は顔を上げる。そして、ちひろを見た。

「あっ」

 蒼乃は驚く。

「ちひろ」

 ちひろが目を開けていた。

「ちひろ、大丈夫」

「・・・」

 ちひろは首と目だけを動かして、自身の体に巻かれた包帯を見つめた。

「何これ」

「お医者さん呼んで治療をしてもらったの」

「・・・」

 ちひろは再び自分の体に巻かれた包帯を見つめる。

「どうしたの?」

 蒼乃がちひろに訊く。

「寝てれば治ったのに」

「絶対、治ってないと思うよ・・汗」

「治るよ」

「・・・」

 その自信はどこから来るのか分からなかったが、ちひろは断固として言う。

「う~ん、まあ、そうかもね」

 またいつものちひろの変なこだわりだと思い、蒼乃は適当に受け流した。この辺は蒼乃もだいぶ、ちひろの扱いに慣れてきていた。

「ちひろ、お腹空かない?」

 そして、うまいこと話題を変える。

「うん、空いた」

 ちひろは昨日の昼から何も食べていなかった。

「じゃあ、おかゆ作るね」

「ハンバーガーがいい」

「ダメだよ。治療したばっかりなんだから。しかも朝からハンバーガーって」

「チーズバーガー」

「だからダメだって」

「やだ、チーズバーガー買って来て、コーラも」

「ダメ」

「駅前のダノンのチーズバーガー」

「ダメ」

「うううっ」

 ちひろは幼い少女のようにふくれっ面をする。

 そこで、突然、蒼乃がちひろを抱きしめた。ちひろが何ごとといった顔で蒼乃を見る。

「よかった」

「・・・」

「ちひろ死んじゃうかと思った」

 蒼乃は涙目になっていた。

「蒼乃・・」

「うわぁ~ん」

「なんで泣く?蒼乃」

 蒼乃は泣き出した。

「だって、だって」

 蒼乃は顔をくしゃくしゃにして泣く。

「だって、ちひろが死んじゃうかと思ったんだもん」

 今になって、不安、恐怖、悲しみ、寂しさ、心細さ、色んな感情が蒼乃の中に一気に溢れてきた。

「うわ~ん」

 蒼乃は恥も外聞もなく、子どもみたいに泣く。

「ちひろ死んじゃやだよぉ」

 蒼乃は泣き叫ぶ。

「あたしは死なないよ。蒼乃」

 ちひろがやさしく言った。

「うん」

 蒼乃が涙をいっぱい溜めた目でうなずく。そして、二人はお互いを求め合うように抱きしめ合った。

「ずっとそばにいてちひろ」

「うん」

 二人はしっかりと抱き合った。そこには確かなお互いの温かな愛情があった。二人はお互いを全身で感じ、その存在を心の底から愛おしんだ。温かくかけがえのない存在。二人はお互いをしっかりと抱きしめた。

「ちひろ大丈夫?」

 そこに目覚めた愛美がドアを開け、ふいに部屋に入って来た。

「あっ」

 だが、すぐに、抱き合う二人の光景に気づき、愛美は慌てる。

「あっ、お邪魔だったわね。はははっ」

 愛美はそう誤魔化すように言い、慌てて踵を返し、部屋を出て扉を閉めた。

「・・・」

 二人は、固まったようにその光景を黙って見ていた。

「ふふふっ、あはははっ」

 そして、二人はどちらからともなく笑い始めた。

「あはははっ」

 二人は思いっきり笑った。

「あははははっ」

 腹の底から笑った。幸せだった。なんだかよく分からないけど二人は幸せだった。

「愛美、いいよ。愛美」

 そして、蒼乃は出ていった愛美を呼びに行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ