パルコのおすすめ作品:音羽リオン『危険地帯マンホール』
前回のエッセイが好評だったので、もう一つ紹介します!
今回はメディアミックスされた人気作品!
これを読んで興味が湧いた方はぜひ手に取ってみてください!
どうも、パルコです。今回もおすすめ小説を紹介させていただきます。
前回、音羽リオン先生の『穴蔵のカストラート』と『傷薬では治せない』を紹介させていただきましたが、今回は音羽先生の十八番であるコメディを紹介させていただきます!
今回紹介しますのは、『危険地帯マンホール』です!
音羽リオンといえば、この作品ではないでしょうか。アニメ化もされたので、中高生のファンの方にとってはアニメのイメージが強いと思います。キャッチコピーは、「地底に棲みつく、キケンな奴ら!」。絵は綺麗だし声優さんは豪華だし、ということでかなり注目された作品です。
では、ストーリーを紹介するのですが、物語は簡単に終わってしまうので、キャラクターの紹介が多くなると思います。
ではまず、物語の概要から。こちらは上、中、下巻があります!
舞台は、『ブラドスタ国』。この国にはカースト制があります。そのカーストは血液型で決まり、A型がカーストのトップ。O型とAB型が中間層。そしてカースト最下位がB型です。B型のなかでも、BO型とBB型でカーストの上下が違います。
そんなカースト最下位の血が流れる若い男女五人が、大手SNS運営会社の地下三階にある広い居住スペースで生活しています。
そして、その五人のハチャメチャな日常が、取材のため海外からブラドスタ国に来たジャーナリストである主人公・ミクの視点で進行していく。そんな物語でございます!
しかし、ただのギャグやコントに収まらず、キャラクターのパーソナルな部分に踏み入ったり、カースト底辺ゆえの生きづらさも丁寧に描写されているドラマチックなシーンが多いのも特徴です。
そして、この物語を彩るのが、魅力的な六人のキャラクターです。それぞれ個性のあるキャラクターなので、読んだあとには推しキャラが出来ますよ!
まずは主人公のミク。童顔だけど最年長の二十六歳。この作品のツッコミ役であり、視点主です。スーツにストレートヘアに眼鏡という、ルックスとしてはベーシックな女性です。
ミクの仕事はジャーナリスト。彼女が『ブラドスタ国のカースト制』について詳しく取材するためにブラドスタ国に来て、迷子になったところをイリヤに拾われたところから物語はスタートします。
なお、ミクは六人のなかで唯一のA型で、B型たちに囲まれてストレスもありつつ、奔放に暮らしながらも生きづらさを抱える五人を気にかける優しい女性です。
「アンタ達の歪んだユートピアの為に、この子を差し出せって言うの? ふざけないで!」
と、五人を守るためなら行政にも楯突く強さも見せます。
次は、イリヤ。年齢は十五歳の最年少で、唯一のBB型です。『危険地帯マンホール』の良心的存在でミクのオアシス。オレンジの髪と小麦色の肌がチャームポイントの、内気で優しい男の子です。
同居メンバーのことを「くん」付けまたは「ちゃん」付けで呼び、口調も穏やかです。カーストのせいで働き口が見つからず、今はホームスクールで勉強をしながら家事を一手に引き受けています。
基本的には天使のように優しいんですが、年上メンバーに対する鬱憤も溜まっているのか、たまにチクリとバカにしたような言動も。例えばアザミとウィーズリーのために夜食として塩むすびを作るシーンでは、
「お米握って塩まとわせて出しとけばおとなしくなるよ。あの人ら単純だから」
と遅くまで働く年長メンバーに対するディスをチクリ。ミクをして「強いな最年少」と言わしめる男です。
つづいて、アザミ。年齢は二十二歳。色白な肌に、黒紫のリップと、ぎらぎらしたアイシャドウ、レザーアイテムを多く身に着ける尖った女性です。また、言葉が荒々しく、ムカつく相手は容赦なく傷つけるバッドガールです。
『ITエキスパート』という難関の国家資格を持ち、五人が生活する会社の社員として働く稼ぎ頭ですが、仕事内容はSNSに投稿されたセンシティブなメディア(人によってはトラウマを残す過激なもの)の検閲という辛いものです。彼女の仕事に不相応な給与やメンタルケアの体制が整っていないことを知り、愕然とするミク。そんなミクにアザミが言い捨てた台詞が印象的でした。
「そういうことなんだよ。ブラドスタでB型に生まれるってことは」
まさにカースト底辺の宿命であり苦痛だと思います。
また、学校のクラスメートだったウィーズリーとは犬猿の仲で喧嘩が絶えませんが、彼と共に年下メンバーの心身を壊すまいと奮闘する一面もあります。
つづいて一番人気のメンバー、ウィーズリーです。年齢は二十二歳。長身マッチョで、黄金色の瞳が印象的なイケメンです。ただ、性格は血の気が多い武闘派です(笑) アザミと同じ、センシティブなメディアの検閲をする仕事をしています。
A型ブラドスタ人の母とAB型の外国人である父の間に生まれ、不自由ない生活を送っていましたが、両親が周囲から心無い言葉を浴びることを嫌い、実家とは絶縁しました。
アザミとは学校のクラスメートでしたが、喧嘩が絶えません。過激な口喧嘩もしますしドロップキックもします。
「出てけよ、お前嫌われてんだよ! キャミ1枚で軍基地立ってろよ!」
とアザミに言い放つシーンがありますが女性に言っていい言葉じゃないですね(^_^;
ただ、年下メンバーがアザミを怖がるなかで、唯一アザミと張り合えるのがウィーズリーであり、アザミの考えを察していち早く動けるのもミクを除けば彼だけといえます。
そして、テリーは年少組随一の意地悪ちゃんです。年齢は十八歳。ふわふわのお菓子みたいなブロンドとマゼンタの瞳がチャームポイントです。そして、ウィーズリーによるドロップキックの主な犠牲者です(笑) ウィーズリーの名誉のために言いますが、彼は男女関係なく人を困らせて空気を乱す奴が嫌いなので、意地悪な彼女への制裁のためにやっています。
勉強と音楽が得意で、仕事はフルート奏者。O型の祖母の家で育ち、いつまでもお姫様でプライドが高い。そのため、人を見下しがちです。意地悪のターゲットは主にイリヤです。
「ああ! イリヤはA型のガイジンなんか居させたくないって言ったのよ!」
BB型のイリヤを「BBのくせに」とイビるのですが、実は上巻の第六章、テリーがメインのエピソードでイリヤに想いを寄せていたことが明らかに。
その後はツンデレが加速しただけでイリヤとの関係に進展もなく、ウィーズリーの攻撃も容赦なく喰らう、ちょっと不憫な役回りになっています。
最後はアリモト。年齢は十七歳。細身の体に、真っ直ぐ長い黒髪のポニーテール、そしてキュッと吊り上がった切れ長の目というシャープなルックスの美青年。ミクの母国にルーツを持っています。職業は運送屋で、六人の中で唯一、車の運転が出来ます。
アリモトは知性的な外見とは裏腹に、電化製品や可燃ゴミを食そうとするなど、アザミやウィーズリー以上にぶっ飛んだ思考の持ち主です。そのため、全てを受け止めるイリヤとの会話はカオス過ぎて、年長メンバーが置いてけぼりを喰らうこともしばしば。例えば中巻の第二章では、
「アリモトくん、今日の夕飯は何食べたい?」
「室外機」
「あー、手早く出来るからいいね!」
「イリヤは何食べたいの?」
「ホコリ玉のコロッケ」
「あー、美味いよねー」
といった感じ。
六人の中では、大ボケキャラとして読者を笑わせるコミカルなキャラクターです!
アリモトといえば、私は中巻の第三章が大好きで、アリモトの昼食である焼き芋をウィーズリーが食べてしまって、そこからアリモトがウィーズリーに「焼き芋泥棒」「芋ドロさん」というあだ名をつけてイジり倒すという話があります。アニメでは放送されなかったエピソードなので、ぜひ読んでみてください!
そして構成としては、上巻でキャラクター一人ひとりのエピソードと、それぞれ気ままな五人の絆を結ぶ過程。中巻からはドタバタコメディもしながら、アザミとウィーズリーの会社と戦うエピソード。そして下巻では地上の一軒家に引っ越し。そして国のお偉いさんを相手に、五人とミクが国民を巻き込んで奮闘するエピソードをコントのようなテイストで繰り広げられる、そんな展開となっております!
さらに面白いのが『危険地帯マンホール』の二次カップリングに音羽先生が寛容な姿勢を見せているところですね。音羽先生のSNSを見た方ならわかるでしょう(笑)
『おいいいいい!!! 誰だー!!!「ウィーアザ」とか言い出したヤツぁー!(笑) もし盛り上がったらオメェの責任だからなーーー!!!!!!(大歓喜)』
コメント欄には「実は私です」「先生! もう手遅れですよ(笑)」と言ったコメントが溢れかえってました(笑)
音羽作品史上最高の人気作品で、アニメ化もされた「危険地帯マンホール」。一章一章が一話完結のエピソードなので、短編好きの私もハマった作品でした! 皆さんも「上巻の何章が好き」「ミクと年少組がウィーズリーの彼女持ち疑惑を検証するために尾行する話が好き」など、好きなエピソードをぜひ教えてください!
まあ今回もネタバレ満載の紹介だったんですが、キャラクターの個性が光る、コミカルでほんの少しドラマチックな作品。ネタバレ済みでもよろしければ読んでみてください!
前作読んでいただいた方はおわかりかと思いますが、全部嘘です。嘘に乗っかるもよし、驚くもよし、です! ありがとうございました!
またまた茶番にお付き合いいただきありがとうございました!
ホンットに頭おかしいわ(笑)