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一から零の国

作者: はるあき
掲載日:2020/04/11

 その世界は十個の国に別れていた。

 世界の中心に(れい)の国があった。

 零の国はとてもとても小さな国であった。四方八方を一の国から九の国の大国に囲まれた小さな国だった。

 零の国の中央にはとてもとても大きな樹があった。その樹の幹は零の国土の半分ほどあり、生い茂った枝は国土の残りを覆っていた。


 数十年に一度、一から九の国は零の国に娘を差し出す。零の国の王子の妃にするために。零の国の王妃は、一から九の国の娘がなるものであり、零の国の娘は絶対にその国の王妃になれなかった。反対に零の国の王女は、母である王妃の母国以外の国に嫁ぎ、零の国に留まることは許されなかった。


 今年は三十年ぶりの零の国の妃を決める。各国は一人ずつ娘を零の国に送ることになった。


 一の国は、年頃の王女が全員嫌がったため、力のない価値もない貴族の娘が零の国に送られた。一の国の領土を酷い嵐が襲い、特に王家の領土の被害が大きかった。国は大きく傾いた。


 ニの国は、年頃の王女がおず、一の国と同じように貴族の娘を零の国に送った。が、その娘は王太子の婚約者で、国一番の淑女になるだろうと吟われた者だった。ニの国は好天に恵まれ、作物は今まで以上の出来ばえをみせ、国は潤った。


 三の国は、年頃の王女は嫁いでしまっていたが、一番夫婦仲が良かった王女を離婚させ、零の国に送った。曇天が続き、不作ではなかったが、作物の質が悪かった。どうにか他国に援助を要請せずに暮らすことができた。


 四の国は、年頃の王女がいなかったがまだ幼い王女を零の国に送った。作物は例年通りだったが、鉱山が見つかり国が潤った。


 五の国は、年頃の王女を零の国に送った。その王女はたった一人の女の子であったため、甘やかして育てられ傲慢で我が儘であった。作物は例年通りであったが、鉱山や特産物が見つかることもなかった。


 六の国は、零の国に娘を送らなかった。前回零の国の王子に嫁いだのは六の国の王女であったが、六の国には何も恩恵がなかった。六の国は大災害に見舞われ、国はボロボロになった。王家が代わることになった。


 七の国は、一番元気な王女を零の国に送った。元気な王女は零の国の中央にある樹に登り、枝を折ってしまった。七の国には大きな亀裂が入ったが、作物は例年より豊かに実った。


 八の国は、要らない王女を零の国に送った。虐げられ苛められていた王女は国から捨てられた。作物は例年以上に実ったが収穫前に虫が発生し、ほんの少ししか採れなかった。


 九の国は、国一番の才女と吟われた娘を送った。娘は平民であったが、国の誰よりも努力家で勤勉であった。作物は例年並みの収穫量だったが、魚がよく捕れるようになり独特の食文化が生まれた。


 一の国の貴族の娘は、五の国一番の商人に嫁いだ。商人の才があり、夫と二人、世界中を飛び回った。


 ニの国の貴族の娘は、婚約者である王太子が零の国に許しを乞い迎えにきたのでニの国に帰っていった。


 三と四の国の王女は、国に返された。三の国の王女は夫と復縁し幸せな家庭を築いた。四の国の王女は、親である国王夫妻に愛情を注がれスクスクと育った。


 五の国の王女は、一の国の王太子に嫁いだ。傾いた国で我が儘を言っても通らず、必死に国を建て直そうとする王太子にいつしか協力するようになった。


 七の国の王女は九の国の貴族に嫁いだ。二人で船を操り魚を捕り、食文化に貢献した。


 九の国の才女は六の国の新しい王に嫁いだ。荒れた六の国を二人で建て直していった。


 残ったのは、八の国の王女。虐げられ要らないとされた王女。

 零の国の王子は、残った八の国の王女に聞いた。

「行きたい場所はない?」と。

 八の国の王女は答えた。

「八の国以外ならどこでもいい」

 零の国の王子はまた聞いた。

「八の国をどうしたい?」

「どうでもいい」

「何もしなくていい?」

「捨てた国だからどうでもいい」

「恨んでない? 復讐したくない?」

「思うことも考えることもしたくない。名前も聞きたくない」

 零の国の王子は「分かった」と頷いた。

「花嫁候補たちがいなくなってしまったから、僕の花嫁でもいいかい?」

 零の国の王子の問いかけに八の国の王女は頷いた。

「あの国じゃないから、ここでいい」

 零の国の王子は八の国の王女を妻とした。


 零の国の王女が八の国に嫁いだ。忘れられた王族の妻になりひっそりと暮らしていた。いつの間にか零の国の王子妃となった八の国の王女を虐げていた者たちがいなくなり、零の国の王女夫妻が王と王妃となっていた。八の国は、()の国と名を変えていた。

世界樹の話を書こうとしてこうなりました。

いつかは、一から順番に十話の話を書いてみたいです。


誤字脱字報告、ありがとうございます

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