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馴初め1

 自動ドアをくぐると、祭囃子のようなBGMが出迎えた。

 夕暮れ時のスーパーマーケットは、いつも変わらずごった返している。


 「おっ、キャベツが安くなったな」

 入ってすぐの野菜売り場で足を止め、存在感を最大限にアピールしている値札の下のキャベツを手に取る妖刀。


 巫女装束からTシャツとジーパンに着替えてパーカーを羽織るだけに着替えている。

 その身長から、遠くから見ると男に見えない事もない。


 食料品の買い出しは彼女の役割だ――調理と家計も主に彼女の担当なので自分で判断したいということから買って出たのだが。


 「……巻があまりな」

 他に聞こえないよう小さく漏らして、もう一つ隣のものを腕にさげたかごに放り込むと、主婦の塊に押しこまれるように店の奥へ。

 野菜売り場から一直線の鮮魚売り場は素通りする。この所――というかいつもだが――魚は安くない。今年は秋刀魚も不漁らしいので下瀬家の食卓にはまだ上がっていない。


 「今年は秋刀魚食べてないなぁ」

 隣から聞こえてきた声に足も止めず角を曲がって肉へ。

 「誰かの飲み代をもう少し削れば食べられるかもな」

 声の様子から恐らくチラチラとこちらを見ているだろうその隣に、セールの鶏肉を選びながら答える。


 「半分を冷凍にして……。よし、今日はから揚げにでもするか」

 かごにもも肉が追加される。

 「おっ、いいねぇ。おつまみにも合うし」

 聞こえていたのかいないのか。


 「ああそうだ、ならレモンも要るな」

 乾物その他の棚の間を通って入口辺りまで戻り、適当なレモンをかごへ。

 そこでかさりと音。かごから聞こえてきたそれに妖刀が目を向けると、げんこつ煎餅の袋が彼女の視線を迎えた。


 「……おい」

 「大丈夫。こっちもあるよ」

 そうじゃない――言いかけた言葉はそのまま飲み込まれる。

 かごにもう一度かさり。今度はカレー煎餅。


 「まあ、いいが……」

 「アッハハハ、妖刀ちゃんホントにカレー煎好きだよね!」

 「まあな。この微妙に粗末なカレー味は癖になる」

 そんなやり取りをしながらレジへ。首尾よくすいている場所に滑り込んで会計を済ませ、近くの作業台で袋に詰め込む。


 「そう言えばさ」

 店を出て家路に向かいながら、不意に悠が口を開いた。話しながらその眼は袋の頂上に入れられたカレー煎に向いている。

 「妖刀ちゃんが最初に食べたのもカレー煎だったよね」

 一年前、二人が初めて出会った日の事は、お互いにたまに思い出しては笑い話にしていた。

(つづく)

続きは明日

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