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第四話 決闘をしよう(上)

「第三話 冒険者の話を聞いてみよう」に続き、物語のページをめくって頂いたこと、誠に感謝致します。

執筆中の私も予期せぬガンファイトの予感ッ……!!

書いてて凄く楽しかったですε-(´∀`*)

ですが、ちょっと鬱シーンが出てきますので、苦手な方は第四話、第五話の読書を控えて頂くよう先に注意しておきます。


では「第四話 決闘をしよう」をお楽しみくださいませ。

 翌日、私は頭がガンガンと金槌で殴るような痛さを伴いながら起きた。

 ここはどこだ、酒場で酔っ払った先輩冒険者と酒飲み対決した辺りから記憶が無い……。

 さしずめ後に酔いが回って潰れたんだろうけど、宿を取った記憶はないしなぁ……。

 隣のベットでは見覚えのある白銀の髪をした獣人が静かに寝ていた。

 床には着物が散乱し、掛け布団を捲ると私は裸であった。


「頭痛い……」


 頭を押さえおぼろげな視界の中、近くの棚に伝言と紙袋、それに水の入った袋が置いてあった。

「二日酔い必至でしょうから、頭が痛いようだったらこの薬を飲みなさい。ルーアより」


 酔いつぶれた私を自分の宿まで持ってきてくれたのか、先輩冒険者の鑑ですわぁ……。

 そう感心しつつ薬を飲み、またベットに潜る。


 数分もすると頭痛は和らぎ、気持ちの良い寝起きを迎えることが出来た。


「くぁぁぁああ……黒恵、起きてたのね」


 散乱していた自分の服や装備、かくなる上は下着を拾い、それを整え着た。

 ルーアさんが寝ているうちに、身の回りの整理を済ませ、起きるまでシルバー等級に上がるためにどうするのかというのと、今後のお金のやり繰りについてなど、色々考え事をしていた。


「おはようございます、ルーアさん。薬のおかげで何とかなりました、ありがとうございます」


 事の顛末を容易く予想できるため、筋は通そうと深く頭を下げる。


「いんやー、ローヴェン組合に入ってくれてありがとうね、すごい飲みっぷりだったよ、若いのによく飲むじゃん」


 リアルだとビールの1滴だけでも泥酔するほど弱いが、ゲーム内のキャラはその逆でとても強い。

 それでも酔いつぶれるぐらい飲んだのだから、かなりの酒を飲んだのだろう。

 酒樽の2つぐらいは覚悟しておくか……。


「いえ、まあ……宿をどこも取ってなかったので、ここまでお世話になるのは恐縮です」


 お金を負担をさせてしまい、言わばルーアさんに借金をさせてしまっているような状態、非常に申し訳ない。


「ははは……そんなに謙遜しなくてもいいよ、それで?クエスト受注はブロンズからだよね」


 身支度が完了したようで、目の前まで顔を出し、ニヤリと笑った。

 それに圧倒され小さく頷くだけだったが、ルーアさんはさらに喜色を浮かべてガッツポーズをとる。


「よしっ!ねぇ、しばらくの間ここの宿の宿泊費を負担する代わりに、決闘を申し込んでもいいかな」


 いきなり何を言うんですか!?殺す気ですかこの女……!?

 あからさまに引いたのを気づいたか、直ぐにその言葉の意味を訂正した。


「いや、私が黒恵ちゃんの実力を知りたいって言うのもあるんだけど、これをすることによってシルバー等級への昇格の近道になるんだよ!」


 それはどういうことだろうか、一気に興味が湧いてきた。

 お小遣い程度しか稼ぎが少ないブロンズ等級をショートカットしてシルバー等級に昇格できるとは、そういうやり方もあるのかと感心する。


「それは……何故ですか?」


 だがルーアさんとの決闘によって、何が近道になるのかがよく分からない。

 場合によっては、私の武器はルーアさんを殺しかねない。

 相手も然りだが、レベルが違いすぎる。


「まぁ、詳しいことは省くんだけど、自分で言うのもなんだけどそれなりに組合の中で実力あるのよ。万が一致命的な怪我をしても組合には腕のいい神聖術士がいるし、上手くいけば新生星として優遇も受けることが出来るしね」


 ルーアさんは笑顔でそういった、後輩思いで信頼出来る人のようだ。


「それはいい話かと思いますが……ルーアさんに利があるように思えません」


 後輩思いとはいえ、身を滅ぼしてまで尽くす必要は無いだろう。

 先輩の身を案じ、気になる点をひとつ言った。


「んー?それは、早くシルバー等級になってパーティー組んでくれれば問題ないよぉ~?」


 だが、ルーアさんは先の投資だと言わんばかりの余裕を見せる。

 私を利用することで先の利益の向上を見ているのだろうか、良くも悪くも嬉しいことだ。


「分かりました……お受けしましょう。ですが、私の武器は指一本で人を殺せる、あなたの知らない武器となるでしょう。故にこの後の将来を考えて、手加減をさせて下さい」


 ストレージから、決闘に使用する武器などを次々と出す。

 M9の名でも有名なベレッタ 92F ハンドガン 二梃。

 アメリカ海兵隊が採用したモジュール分割式の小火器であるM27 歩兵用自動小銃(IAR)と、そのアンダーバレルに取り付けられたSIX-12 モジュラーショットガン。

 計 3挺。


「これらは、決闘の時に使って挑むものです、ですからそのつもりでお願いします」


 それを言い切るとベットの上に置いた銃を、ルーアさんがまじまじと見てしまう前に全てしまった。


 無人機等は出すことなく、あくまで攻撃武器だけを出したまでのこと。

 決闘場所は近くの野原、勝敗は両者が降参するまで。ということで決まり、その対策と攻撃手順を考えておかねばなるまい。


「私が見せたのですから、ルーアさんも先輩として見せるべきですよね?」


 その瞬間、ルーアさんは苦虫を噛み潰したような顔をして、一本取られたと悔しみ、装備箱の中から二振りの形が揃わない双剣を取り出した。かれこれ二年も愛用している武器なのだとか。


「では、いい戦いを期待しています。決してすぐにやられることがないように祈るばかりです」


 そう言い残して、私はその部屋を後にした。


 部屋の中から「言うぜ後輩!」と言う声が聞こえたが、聞かなかったことにしよう。


──────


 決闘を申し込まれて一週間後。

 ブロンズ等級のクエストを何個か受けてそれなりの稼ぎを蓄えていると、調子よさそうだねと一言、ルーアさんが決闘日程が明日に決まったと報告しに来た。


 野原での決闘で、魔物などに邪魔されると面倒な為ギルドに周辺の魔物を駆逐するクエストを出し、その辺の心配は問題ないと言ったが、報酬料までも負担させる訳には行かないから、2割ほど負担した。


 そして翌日。私は日の出と共に起き、軽く筋トレやストレッチを済ます。

 武器のセットに入れる弾薬を全て非致死性弾に入れ替え、それを確認すると武器を具現化させて弾倉を取り、装弾されている弾種を見るという徹底ぶりを見せ、寝具を全て片付けると静かに部屋を出た。


 それはいいが、時間も早く酒場も空いていなかったため、早めに野原を訪れ、無人機で地形をスキャンするだけに終わった。


 行って戻ってきて、開き始めた酒場の隅でそのマップを決闘時に表示できるように設定。

 開始地点からルーアがどのように動くか、数十数百パターンに渡ってシュミレーションを重ねる。

 作戦としては、開始中距離からM27 歩兵用自動小銃(IAR)の火力制圧。後にSIX-12で近接射撃し、最後にM9二梃による近接格闘。

 それが駄目なら隙を見て弾薬などを回復したフルセットの状態に戻して体勢の立て直しか、最悪降参だ。


「おぉ、黒恵ちゃんじゃないか!早いねぇ。決闘、見に行くからなぁ~」

「ルーアの野郎に簡単に負けるんじゃねぇぞ!?」


 一週間も経てば、組合の人とよく話も出来るようになれた。

 元を辿れば新入りの歓迎会であった、酒飲み対決みたいなもののせいだろう。

 遠出で出ている冒険者数名を除けば、ここで冒険者登録をした人とは全員一言以上は話している自信がある。


 だが、今は笑顔決闘のシュミレーションに集中したいので手をヒラヒラと返すだけで何もしなかった。


 シュミレーション空間でM27 歩兵用自動小銃(IAR)の5発バースト射撃による全方向への射撃。SIX-12も使う格闘戦。ルーアを模した架空体とのベレッタ 92Fを二梃持ったガンファイト。

 どれも数回は試し、10分ほど仮眠したりすること3時間。


 ついに決闘の日時である、正午12:00。

 防壁から見通せる位置にある草原に、二人の女冒険者が立ち並んだ。


「これよりぃ!ルーア対黒恵のー!決とぉぉう↑を開始するぅ!両者、位置につけぇぇい!!」


 メガホンのようなものから審判を務めるローヴェン組合の組合長自ら声を出す。

 両者その場から100メートル程離れ、武器を構える。


「勝敗は自己申告制!負けだと思ったら迷わず降参し、相手の勝利を祝福せよ!」


 私は、M27 歩兵用自動小銃(IAR)×SIX-12カスタム(非致死性弾を装弾)。

 ルーアさんは、二振りの模擬双剣。


「決闘、始めぇぇぇえ!」


 両者揃うこの決闘場に、紅く光る照明弾が飛び、戦いの火蓋は切って落とされた。

 先行したのは私だった。先に飛ばしていたドローンの情報をリアルタイムで視認しながら、姿勢を低く草の合間を縫うルーアさんを牽制するように非致死性弾を発射する。

 引き金を5発撃つ毎に絞り続け、空薬莢が雪崩のように吐き出される。


 だが、それはジグザグと不規則に動くアルクさんの挙動に撹乱され失敗した。

 100発ある弾倉を使い切り、それを切り捨てる頃には既に50メートルを切っていた。

 ポリゴン片に消える弾倉を見ることなく、アンダーバレルに装備したSIX-12の引き金を引く。

 100均でよく見る拳銃の玩具のようにリボルバー式の弾倉が回転し、数個のゴム弾が空間に発射される。

 ルーアは、それを見て一旦停止する様子を見せるが、スライドするようにして一射目を躱し、続けて第二射、第三射と躱し、その場でようやく膠着状態を迎えた。

 私に残るはショットガンの弾二発と、ホルスターにあるロングマガジン装備のベレッタ 92F。


「はぁ…はぁ…さすがにきついね、貴女のそれは、どんなものか知らずに挑むにはインパクトが強すぎたよ」


 汗を垂らし息を切らす、ルーアさんが口を開く。

 会話で油断させる為だろうか、ここで気を抜いてはシルバー等級短縮の道を切らし、ルーアさんを利用して金を稼ぐことも水の泡になってしまう。


「そりゃどうも……」


 私もまた、冷や汗を書いていた。

 こと銃撃戦において三年もの戦闘経験を経て培った正確無比な射撃が尽く躱されたことによる一抹の不安がそこにあったからだ。


「私には、妹がいてね……」


 息が整っていく中、ルーアは地を駆けながら話を始めた。

 最後の二発をこれまで以上に慎重に狙いをつけて発射。

 右脚と左肩に命中したが、疾走する勢いは止まらず、M27を半ば捨てるような形でストレージにしまい、後ろに跳躍。

 やっとのこと胴体を捉えた双剣は靴底を掠れるだけに留まった。


「その妹は今、奴隷としてこの街の奴隷館で売られてるのよ……」


 再度膠着状態が訪れ、ルーアはその話の続きを語る。

 何があったのかは今は聞かないが、そういうのが常な世界なのだろう。

 同情はするが、この世界もまた弱肉強食である。

 それは仕方の無いことだと割り切り、私は目の前に集中する。


「この決闘に勝ったら、私の所持金は全て貴方に渡す。その金で妹を買って、私達と一緒に冒険をしましょう?」


 場違いなほど優しくそう語りかけたルーアを、私は真っ直ぐ見つめる。彼女は構えていた双剣を今にも手放そうとするかのように、両手の力を抜いてゆく。

 二振りの双剣を持つ手は次第に重さに耐えられなくなり、草の上に落ちる……ことは無かった。


「──あなたが言いたいのはそれだけですか?」


 私のその言葉によって、お涙頂戴の空気は突然亀裂を入れられた。

 ルーアを真っ直ぐ見る私の目には、何故か先ほどにはなかった怒りが篭っていた。

「第四話 決闘をしよう(上)」お手に取りお読みいただいた事、まず御礼申し上げます。

黒恵が使用する主な武器のオンパレードでした……ルーアもなかなか、3年で培った百発百中の弾丸を全て避けるという能力を示し、この後の事にも活用していきたいなと思います。

鬱シーンのピークはこちらからになるので、気を付けて下さいね……?

それでは、次話


「第四話 決闘をしよう(下)」へ続きます……。

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