第三話 冒険者の説明を聞いてみよう
「第二話 街へ行ってみよう」に続き、物語のページをめくって頂いたこと、誠に感謝致します。
今回は冒険者登録を済ませた主人公がギルドの説明を受けます。
個人的に意識したところが沢山あるので、それが汲み取っていただければ幸いです。
では「第三話 冒険者の説明を聞いてみよう」お楽しみくださいませ。
冒険者用紙と登録料銀貨2枚を支払い、2階にある3畳もないような個室へと案内されてきた。
室内は大きなテーブルで分けられ、狭い室内がさらに狭かった。
向かい側のギルド職員が入るであろう方は、それに書類などを収めた収納が左右を挟み、座るだけで一苦労なようだった。
「お待たせしました、改めて冒険者の説明をさせていただきます。よろしくお願いしますね」
向かい側の扉から、先の代筆を頼んだ人が入ってきて、読みは出来るということで説明する要項が記載された紙を数枚渡された。
「こちらこそ代筆に続き説明、よろしくお願いします」
その紙を受け取り、会釈をして説明を聞く体勢を整える。
人と話す上で、目を合わせる・私語を慎む・体を相手の方に向かせるは大事なことだ。
「では冒険者とは何かと言うと……基本的には何でも屋です」
話が長くなりそうなので、省略かつ整理して説明する。
冒険者が何でも屋というのは、冒険者を必要とする仕事先が多岐に渡るからだろう。
また十人十色。考え・好み・性質などが、人によってそれぞれに異なることとあるように。
人間一人一人、冒険者一人一人にも得手不得手がある。
そしてそれらは職業を専門的に行うようになり、
魔物退治専門なら ─モンスターハンター
遺跡、迷宮専門なら トレジャーハンター
護衛任務専門なら ─ガーディアン
対魔術師専門なら ─魔術師殺し
対人戦専門なら ──傭兵、賞金首ハンター
というような感じで別れ、今出したのは主な職業の例に過ぎず、仕事の分類はまるで毛細血管のように緻密に細分化されている。
冒険者はある意味、足の軽い専門家の集まりなのである。
(もちろんいくつも専門分野をこなす手の器用な冒険者もいる)
そして、冒険者には「等級」という、階級のようなものがある。上から見てると、
ミスリル等級
プラチナ等級
ゴールド等級
シルバー等級
ブロンズ等級
とあり、私はブロンズ等級から始まる。
冒険者タグのフレームに各等級の金属を用い、その確認もあるため常に誰でも見える場所に掛けておくか、別の形で掲示できるよう選べることも出来るらしい。
一般的なネックレス式からピアス、ブレスレットなど、女性を意識しているのかファッションの一種として扱うことも可能らしい。
そこまで興味がなかったから、無難なネックレス式を選択する。
タグについて禁則事項もあるようで、
本人以外の使用禁止。
貸し出し禁止。
タグの売買禁止。
偽造・勝手な内容変更禁止(特殊な魔法術が施され、本人確認が行われるため偽造は不可能らしい)。
盗難・紛失の場合、すぐさま使用不可にするので、すぐにギルドへ届けを出すこと。
再発行する場合、面談と再発行料として銀貨5枚がかかる。
以上の決まり事に反する行為を行った場合、レベルの降格。
最悪、ギルドから退会させられ二度と登録してもらえなくなるようだ。
職を失うのはかなわないので、よっぽどの理由がなければやらないだろう。何より君主危うきに近寄らずということで危険を回避していけばいいだけの事。
冒険者になろうとしてる時点で矛盾しているような気もするが……まあいい。
また、もしクエスト中にタグを発見した場合、ギルドに持ち帰ると謝礼金が出るという。
亡骸を目の前にするのは御免ではあるが、そういう役割をタグは持っているのだ。
仕方のないことだろう。
気を取り直し、仕事を受ける方法は5パターンある。
①募集掲示板から、仕事を選択し依頼を受ける。
②窓口で相談の上、仕事を選択する。
③依頼主から指名され直接、依頼を受ける。
④ギルドから本人に直接、仕事を依頼する。
⑤その他(突発的に依頼仕事に巻き込まれる等)。
またレベルⅠの冒険者が、レベルⅤの仕事を請け負うことはできないとしている。
高レベル冒険者が受けたレベルⅤのクエストに、レベルⅠの冒険者を同行させることも禁止されている。レベルⅤのクエストは高い報酬金が支払われるため一獲千金を試みる馬鹿がいるが、そういうようなクエストは命にかかわる極限状況が殆ど。
パーティーなどの場合であれば足手まといを増やし、貴重なレベルⅤの人材を最悪死亡させてしまうケースもあるため禁止されている。
だが逆にレベルⅤの人が、レベルⅠの仕事を受けても問題なし。
罰則は存在しない。
ただ、そのような行為は眉を顰められるため本当に必要な場合以外はしないというような暗黙の了解があるようだ。
話を聞くに、ブロンズ等級だと極端で滅多に無いが、ゴールド等級程度であれば、空き時間があったから等の理由で仕事を受ける人もいるらしい。
「レベルを上げる方法は、依頼をこなしその実力に応じてギルド側が順次あげていきます。その判断基準は常に公平。種族差別は一切ありません。ローヴェン組合冒険者ギルドの名誉にかけて」
ローヴェン組合というのは、ある種の縄張り争いみたいなものだ。
他にもギルドは存在する。
例えば、商人・手工業・漁師・肉屋・鉄工・石工等だ。
それらは職人や売り手の利益などを共有し有事の時には助け合う協力関係を気付くことが出来るようだ。
これを上手く利用すれば、友人などのコネを使ってクエストを斡旋してもらえたりなど有利に動くことが出来る。
「ここまでの説明で不明な点などはありますか?」
「いえ、不明な点はありません。ありがとうございます」
終わったのかと礼をしようと立ち上がったものの、最後の説明があると座り直す。
ブロンズなら等級は草むしり、引っ越しの手伝い、行方不明のペット捜索、家庭教師のバイトなどのクエストが中心で、基本金額、大銅貨5枚~銀貨1枚程。
完了すれば、1日の宿&食事には困ることはない。
シルバー等級なら周辺の魔物退治などで基本金額は銀貨1~3枚程だそうだ。
「えぇ……ブロンズ等級は実戦的なクエストがないんですか?」
一匹辺りの稼ぎは少なくとも、数を揃えれば何とかなるだろうと思っていたのは甘かったか。
嫌でも雑用系クエストを受けて昇格させるようだ。
「はい、まずは雑用などの……稼ぎは少ないですが、クエストを受けそれをこなす。その基本を学んでもらうためのブロンズです」
私のような考えのものがいるのでしょう、言い返しようのない歴然たる態度て言われてしまった。
そう言われてしまうと言い返す勇気はなくなってしまい、その時ははいと一言返すだけで説明は終わってしまった。
長い説明を終えて個室から出ると、時間はゆうに1時間以上は話し合っていたようだ。
早いうちにクエストを済ませてきた冒険者達が帰ってきて、クエストの完了報告、納品、早めの乾杯など、活気溢れる様子だった。
あまり目立つ事がないよう、急いでスマホの購入欄からカーキ単色の服を買い、セットに登録した上で装備変更のボタンを押す。
全身がポリゴン片で一瞬包まれると、上下カーキ色の服と、必要最低限の装備がベルトキットに吊るされていた。
手元に持っていたポンチョを胴体に巻き、それを隠すようにした。階段を降り始めると、その音に気づいた冒険者達の視線が集中した。
「あれが例の新入りか……骨があるといいが」
「おい見ろよ女だぜ、ちょっくら声かけようか?」
そんなヒソヒソ声が、騒がしいギルド内のはずなのに聞こえてくる。
時には、あまりこの場では綴りたくない言葉まで聞こえるようだ。
あんたらなんか足にも及ばないんだ、直ぐに出し抜いてやる。
ストレスに弱い私はそれを心にいい聞かせ、ファイブセブンを取り出して撃たんとする震える右手を左手で抑える。
大体、なんで男はそう胸や下の方を見たがるのでしょうか。
そりゃあ、冒険者というのは女子は少なく、そういうのに植えてるのだと思いますが、お酒でちょっとお口が緩いのかと思いますが……それを前面に出すのはどうかと思う。
心の中で蠢くそれを、何とか抑えつつ出口へと向かう。
すると、その途中で大剣を肩に下げた大男が立ちはだかった。
「よォ。お前、さっき冒険者登録をやってたよなァ」
その大男は完全に酒に酔っていた。顔が仄かに赤く、そして口から出る息が酒臭い。
「はい、黒恵と申します、若輩者ですがどうぞよろし──ッ!?」
冷静を装い挨拶を交わそうとすると、突然顔の大きさほどある手が肩を叩く。
何事かと体を強ばらせ、何かあったら股間を蹴れるような体勢になる。
「よろしかなぁ……この業界、女の子って少なくてなぁ、入ってくれて嬉しいわぁ~」
何を言うかと思えば、急に涙ぐんで左手を差し出してきた。やはり酔っ払っているのだろう。
だが悪意ではないことは分かるし、それを無下にするのは私にとっても損というもの。
その手をそっと握手し、そのあとは酒場の流れ。
新入りの歓迎会と宴会ムードになり、先輩冒険者の方々に色々と奢ってもらったり、冒険の心得や武器の選び方などを聞くことが出来、有意義な時間を過ごした。
「第三話 冒険者の説明を聞いてみよう」お手に取りお読みいただいた事、まず御礼申し上げます。
すみません、勢いで書いたはいいんですが、私も半分ぐらいしかギルドの事が分かっていません。
冒険者ギルドという大元の組織があり、その参加にローヴェン組合があるような感じですね。
クエスト受注と成功による売り上げの一部を税として納めることで、その割合に乗じて上位クエストを配分する~みたいな枠組みかなとおもいます。
それでは、次話
「第四話 決闘をしよう(上)」へ続きます……。