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結局昨日は片山さんに会えなかった。

あのまま残って待つことに、一昨日送ってもらった理由に反していると思い出してさっさと帰ったのだ。



お弁当を詰め込んでいると携帯電話がメールの着信を知らせた。





『今日は結婚記念日だろう。ホテルのレストランを予約してある。会社まで迎えに行く。』





本当は昨日だけれど、彼が結婚記念日、というものを覚えていたことに驚いた。


楽しみにしていると、返信した。

少しだけ足取りが軽い気がした。





出社するとすぐに恵子ちゃんにからかわれた。

どうやら相当浮かれていたらしい。




「昨日は楽しかったんですね〜!やっぱりレストランのディナーですか?!」




「ふふ、そうなの。実は昨日は仕事でね、今日行くことになったの」




なんだか自然に笑顔が溢れた。

書類を片手にパソコンを起動すると、恵子ちゃんがすごく嬉しそうに笑っていた。




「んふふ!皐月さん結婚してからなんだか暗くなったから旦那さんと上手くいってないのかと思ってましたけど、なんだか安心しました!!」




本当に嬉しそうに笑う恵子ちゃんを見て、わたしはなんていい後輩を持ったのだろうと、少し呆けてしまった。

なんだか照れてしまって、顔が熱かった。



恵子ちゃんは今度は先輩の惚気を聞かせてくださいね!!とはしゃいでいた。







今日はあいにくの雨なので、ちょっと怖いが社員食堂を利用することにした。

入り口でキョロキョロ見回したが、片山さんの姿は見えなかったので安心して目立たない端の席に恵子ちゃんと着こうとした。



すると、後ろから俺も隣いい?と男性から声をかけられた。

覚えのあるその声にびっくりして振り返ると、あまりここでは会いたくなかった片山さんだった。



恵子ちゃんは突然の登場にか少し驚いていたけど、どうぞ!と持ち前の明るさでわたしの隣の席を譲った。




「よくわかりましたね…ここ、結構広いのに…」




純粋にわたしのような人間が見つかるとは思っていなくて、驚いていたら恵子ちゃんが堪らずといった感じで笑い出した。




「あははは!!いや皐月さん挙動不審すぎて逆に目立ってましたよ!!面白すぎてお腹痛いですもん!!」




そんな…!

言って欲しかったよ恵子ちゃん!

そんな気持ちを込めて見つめていると横にいた片山さんにも吐き出されてしまった。



恵子ちゃんと片山さんはどこか気が合うようで、結局3人で食事をすることにした。

やはり彼といるとすごい、視線が刺さる。





「あ、この前のお昼返します。お好きなもの頼んでください」




思い出したように、彼に問いかけた。

彼は少し考え込んだ顔をして、ハッとしたような顔になった。




「ああ、この前の。なら同じものを頼むよ」




この前は、貸していただくという申し訳なさで一番安い素うどんを食べたのだが、彼には送っていただいたりもしてしまって大きな借りがある。




「いえ、送っていただいたりしてしまったので、ぜひ食べたいものを言ってください。今日はバッチリ財布があります!」




財布を掲げて大丈夫!という顔をすると、片山さんは堪らずという風に吹き出してしまって、困惑してしまった。

隣で恵子ちゃんも笑ってる。

この2人はどうやらわたしがやる事がツボのようだ。




「ふふ、なら、ふ、えび天も付けてもらおうかな。ふふ」




彼は笑い声を必死に抑えながらえび天を頼んできた。

続けて恵子ちゃんも同じような感じでかき揚げも付けてもらった方が良いですよ、なんて言っている。

ちょっと笑いすぎなのではと思い、恵子ちゃんを睨み付けた。




「ふふ、ごめんなさい!だって皐月さんあんまり可愛いから!初めて見ましたよ皐月さんのどや顔!!すっごい可愛いです!!」




恵子ちゃんがあんまり可愛く笑うから許してしまった。




わたしはえび天とかき揚げの乗ったうどんと、暖かい蕎麦を持って席に戻った。



席に戻ると2人とも何かの話題で盛り上がっていたようだけど、わたしが戻るとピタリとやめてしまった。

先程のことといい、何かわたしの失敗談だろうとやるせないため息が漏れた。




「かき揚げも付けてくれたの?ありがとう。今日のお昼は豪勢だな」



ニコニコと、いただきます、という彼の言葉に続いてわたしもいただきますと呟いた。













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