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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
少年とUFO篇
82/202

第82話 ヒーロー

 洋一郎少年の胸が早鐘のように打たれる。どうすればいい? 自分で呼び出した宇宙人。それが攻撃を始めている。


 空気が熱い。そとから熱気が伝わってくる。ここは攻撃されてはいないが恐ろしい熱量だ。

 焼けるような空間を避けて、みな階下に降りた。


 地響き、轟音、爆風、灼熱。先ほどまで平和だったのが一変。ありえないことが起きている。

 だが原因はここにいる全員が知っている。


 少年──。


 彼の呼び出しに応じた宇宙船からの攻撃。無差別に地上を焼き払っている。出演者はそこにとどまらずに走り出す。安全な場所へと。



 外に出れば今までの景色はどこにもない。遠くの山が赤々と燃えている。辺りには熱風が吹き荒れ、瓦礫がそこかしこに落ち、交通は封鎖されたも同然だ。


 宇宙船からは時々休憩はあるものの、レーザー光線による攻撃が継続されている。

 その照射された場所からは爆音が轟く。


 やがて四角い宇宙船の外側が、階段状にズレて新たな四角形が回転しながら分離する。それもさらに分離。

 それは戦闘機のようなものなのかもしれないが、格段に大きい。

 それが他の都市へと飛んでいくのだろうか?

 高速で空へと消える。外国の主要な都市の方へと。


 その四角形があった場所に、長い棒のようなものあらわになった。その棒状の場所は光っている。

 それは七色に輝き、光りを数度往復させると、黄色からオレンジ、オレンジから赤に変わると、レーザー光線が噴出される。

 これぞラドキォー星人の砲身だと思われる。それが無数に数え切れないほど。中でもそれの20倍ほどの砲身が数ヵ所ある。

 そこから放出されるレーザー光線の破壊力は他のレーザーの比ではないだろうと考えられた。


 無差別な攻撃。殺戮。わずか10分でとんでもないことになっている。


 だが、聞き覚えのあるジェット音が聞こえる。自衛隊の戦闘機だ。隊を成して飛んでくる。洋一郎少年は思わず叫ぶ。


「頼むよ! 自衛隊!」


 ジェット音が辺りに響く。だが自衛隊の戦闘機は何も出来ずに制御を失い墜落した。そして辺りは真っ暗となり、光っているものは宇宙船だけとなった。



「な、なんだ? どうなったんだ?」


『宇宙船から電気やエネルギーを無効化する波動が送られています。現在の地球の科学力ではそれを解消するのは不可能です』


「は、はぁ?」


『www www』


 黒い箱のいつもの無責任さ。人間などどうなってもいいのだ。実際に宇宙船の科学力を知っていたし、攻撃することも知っていたのだろう。

 だが洋一郎少年の欲望を叶え、こんな未来がこれば面白いと箱は思ったのかもしれない。


「な、何とかしろよ! 聞いてないぞ! 無責任だ!」


『無責任? 呼べと言われたことを叶えただけですwww www. ukkkkky. kokokoko. wwwwwwww』


 黒い箱は笑う。音もなく不愉快に。


 しかし、黒い箱は照射されようとしている20倍砲身のレーザーの方向を敏感に察知した。

 白から黄色、黄色からオレンジに変色する。間もなく発射されるのであろう。

 だが黒い箱は気付いたように突然まばゆいばかりに発光した。


 そこは成田きゃんがいる地方──。


 黒い箱も驚いたが、自分ではどうすることもできない。


「お前はなんでエネルギーを無効化されないんだよ!」


 洋一郎少年は箱に当たり散らす。

 自分が宇宙船を呼んでしまった責任を箱に吹っかけようとしている。

 叫んでいる身勝手な洋一郎少年。こいつを利用しない手だてはないと黒い箱は考えたのかもしれない。決心したように急いで文字列を表示した。


『このままではあなたの愛する女性も炎に焼かれます。そしていずれはあなたも』


「は、はぁ? なんとかしろよ!」


『叶えられません。今のあなたが持っている肉体をどれだけ賭けても宇宙船は帰りません』


「じゃ、じゃぁどうすれば……」


『この宇宙船を倒す者を出現させることは可能です。しかしそれを叶えるためには、あなたは肉体を失い消えてしまうでしょう』


「え……?」


 消えてしまう。洋一郎少年は戸惑う。どうにか生き残りたい。どうにか。自分だけでもいい。逃げて隠れたい。

 しかし、このままではすぐにでも侵略者によって完全に人類は滅びてしまう。


『これは今だけの割引セールです。時間が経ちすぎれば話も頓挫。ご決断ください』


「ちょ、ちょっと待ってくれ。考えさせてくれ」


『いいえ。もう時間はありません。すでに日本中、いや世界中があなたの敵です。なぜなら宇宙船を呼んだのはあなたですから。しかし身を挺してそれを救うのです。それならばあなたがヒーローになれる』


 黒い箱の誘惑。

 差し迫った状況でこんな少年に正常な判断など出来るわけがない。だからヒーローという言葉に洋一郎少年はグッと来てしまった。人知れず地球を救うヒーローになるのは「カッコいい」と思ったのだ。


「──このままではどうせボクも死んでしまう。それで叶えてくれ」


『願い事を言ってください』


「宇宙船を打ち破れる人類の為のヒーローを出してくれ!」


『叶えられました』


 黒い箱の行動は早かった。娘を守る為に洋一郎少年の命を犠牲にする。

 宇宙船の他に光るもの。それは地上の黒い箱。

 箱から白いレーザーが空中に伸びる。そして赤いレーザーが洋一郎少年に照射される。


「これでボクはヒーローなんだ──……!」


 両腕を上げ後ろに倒れながら洋一郎少年は消える。この世界から──。

 その代わりにロボットのようなものが光りに包まれながら現れた。このエネルギーが失われる場所で、光りを保ちながら力強く動けるもの。


 それが空中でポーズを決める。











「神が裁けぬ悪を倒す! バスターマン参上!」






 完全に決まった。だが見ているものはいない。黒い箱を除いては。


『現れたね。本物のヒーロー』


 黒い箱はなぜか嬉しそうに光りを点灯した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかのバスタードマン! 今度はマッチポンプではなく、ハッキリとした敵がいるってところに、感慨を覚えますね(笑) たしかに本物のヒーロー!
[良い点] あのスーパーヒーローが登場か? もしくは時間が戻るのか?と思っていました。 きゃんちゃんが居なかったらヤバかったですね。 冷や汗モノですよ。 きゃんちゃんに対しての愛情だけはあるのね。 …
[良い点] ここでバスタードマンきたーっ!! ……ん? けど、もともといる人を呼ぶだけだったら、少年消すことなかったんじゃ……? 箱の不条理っぷり突き抜けてて面白いですwwww
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