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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
少年とUFO篇
81/202

第81話 信じてもらえましたか?

 そして屋上に出ると、洋一郎少年は中央まで走って振り返る。今から起こす奇跡にはたくさんのギャラリーが必要だ。

 だからこそ、収容するために、みんなが入れるようにと大きな間隔をとったのだ。大人たちはぞろぞろとその場所へと近寄り、テレビカメラは洋一郎少年の方へと向けられる。


「さぁ。どうするのかな?」


 否定派の大人の言葉に、洋一郎少年は不敵な笑みを浮かべながら、胸の付近に目立つように人差し指を立てた。

 存在感がハッキリとした張り詰められた指の立て方。演出だ。これでもかというくらいバッチリ決める。一世一代の晴れ姿。

 洋一郎少年の好きな女の子、剛内は見ていてくれているだろうか? そうでなくては困る。今からここにいる大人たちを平伏させるのだから。

 洋一郎少年は自信を持って口を開いた。


「今来ます。ボクが空を指差せば──。準備は宜しいですか?」

「無論だ。準備などいつでもいい」


 洋一郎少年はいやらしく笑ってから大人たちにクルリと背中を向けて空を指差す。

 大人たちはハッと笑ったがその瞬間。


 光りをまとった大きな飛行物体がテレビ局の屋上に瞬時に迫る。

 あまりのスピードにおこる疾風にみんな立っていられないほど。


 かなり大きい──。


 超高層ビルは宇宙船の移動によって削られ、煙を上げて倒壊する。その瞬間、あたりは絶叫に包まれる。それは生放送のカメラにしっかりとおさえられた。

 その巨大宇宙船はテレビ局の上空10メートルに待機。

 大きさは10キロメートル四方。10キロメートル四方に広がる平たい四角形の飛行物体。その下にある街は飛行物体の影で暗さが増した。

 そんなもの誰も見たことない、地球上にはない巨大な人工物。

 たちまちあたりは恐怖の叫び声でいっぱいだ。


 洋一郎少年もどうしていいか分からず、冷や汗を流して固まった。知識人たちも腰を抜かしてしまったのだ。


 それをみて洋一郎少年は優越感に浸る。

 自分をバカにした大人たちは今、無様に度肝を抜かれて腰を抜かしている。中には屋上入り口に逃げるものも。そいつらにとりあえず凄んだ。


「ど、どうです。これがラドキォー星人。信じてもらえましたか?」


 大人たちは高速でうなずく。そして這いずって出口に向かうおうとするものが多数だ。

 その場にへたり込んだ女性の知識人がどうにか声を絞り出した。


「そ、それでこの宇宙船を呼んでどうするの? こ、こんなものすごいものを……」

「それは……もちろん帰って頂きます」


 しかしそうは言うものの、洋一郎少年に帰しかたは分からない。

 いつも宇宙船を呼び出すと、遠くで光りながら去って行く。だからこれも勝手に去るものだと思い込んでいたのだ。

 だが宇宙船は不気味に光りながらその場にとどまっている。

 洋一郎少年は不安になって見えないように黒い箱を取り出し、小声で話しかける。


「もういい。帰ってもらってくれ」


 だが黒い箱からトゥンという警告音か響く──。

 その音に心臓の音が跳ね上がる。


 叶えられないときの音──。

 代償の追加を求めるときの。


 代償が足りないのかと洋一郎少年が驚いて文字列を読む。












『叶 え ら れ ま せ ん』






 その瞬間──。


 その瞬間だった。

 宇宙船から四方八方に光線が発射される。


 途切れなく、長い長い照射。

 地上が燃える。遠方の地域が真っ赤に燃え上がった。赤い炎が火山の噴火のように何キロもの高さに伸びるのだ。横にではない。縦に。

 熱い爆風が辺りを包む。洋一郎少年や知識人たち、テレビスタッフは慌てて屋内に戻ることしか出来なかった。

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