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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
少年とUFO篇
80/202

第80話 宇宙船概要

 洋一郎少年は番組の途中で中座し、控え室に入り込むと黒い箱を取り出しスタジオでの不満を爆発させた。


「なんなんだよ、あいつら! 屁理屈ばっかり言いやがって! お前の言ったことの上乗せで屁理屈を言ってきやがる!」


 しかし黒い箱は何も答えない。

 ただいつも文字を表す場所に左右に光りを走らせるだけ。


「アイツらを信用させるにはひとつしかない。UFOを呼べば良いんだ。でも今は夜で暗いし、いつもみたいに小さいと信用されないかも知れない。屁理屈ばっかりだからな。どうすれば信用させられるんだ。どうすれば……」


 洋一郎少年は考える。しかし生放送中だ時間がない。

 今頃は洋一郎少年が過去に呼び出したUFOの映像を検証しているのかもしれない。番組制作のアシスタントディレクターが控え室の扉を叩く。


「鈴生くん。そろそろ戻ってもらわないと」


 あの大人たちにどうすれば勝てるのか。

 まだ成長過程にある頭で必死に考えた。


「そうだ! いつもみたいに遠くに小さいのと思うからダメなんだ。実際に目の前で大きなUFOを呼べば良いんだ!」


『願い事を言って下さい』


「UFOだ! 今までの遠くで小さいのじゃない。目の前まで来て形がはっきり分かるヤツ。どうだ? できるか?」


『代償を言って下さい』


「出来るんだな! すごいぞ! もう腕にも足にも毛がない。頭髪はいやだから、残りの体毛でどうにかならないか?」


 少し無茶かもしれない。と洋一郎少年は思ったが、なにか言われたら対応しようと考えた。しかし予想とは別に黒い箱からすぐ回答が来た。


『叶えられました。時間を指定できます』


「マジかよ! 時間はボクが出演者を屋上に連れて行って空を指差した時だ。漠然としてるけどそれで大丈夫か?」


『可能です』


「やった!」


 黒い箱から赤い光りが洋一郎少年の体をくまなく照射する。それは一瞬。その後、白い光りが壁を突き抜けて空へと伸びる。

 これで叶えられた。洋一郎少年はすぐに元の場所に戻ろうとしたが黒い箱が激しく点滅する。


『そのUFOの予備知識です』


「お、そ、そうか。どんなのなんだ?」


 予備知識など初めてのことなので洋一郎少年はうろたえたが、テレビに対して必要であろうと、表示される文字を待つ。黒い箱は静かな光りを発しながら文字列を並べ始めた。


『それは3回目の宇宙から存在した星の住人たちでした。今現在の地球が存在するのは6度目の宇宙です。すでに5回宇宙は消滅しています』


「えっ……?」


 洋一郎少年には何がなんだか分からない。だがこの宇宙が始まったのは45億年前だという予備知識はある。それの前に5回宇宙があったということだ。その3回目から存在している宇宙人だということがなんとか分かった。


『無限は存在しません。この宇宙とていずれは無くなるもの。その宇宙船に乗るものは3度宇宙の消滅を科学力で避けて来ました。故郷の星の名はラドキォー。ラドキォー星人です』


「そうか! ラドキォー星人。しかも、新しい知識だ。宇宙が滅びてそれを乗り越えられる宇宙人。こんな知識、あの大人たちは持ってないぞ!」


 洋一郎少年はスタジオに走った。ちょうど司会者が洋一郎少年の帰りが遅いと言っている最中で、逃げ出したのかもとバカにしているようなところであった。洋一郎少年は怒って声を張り上げたがそれは誰の目に見ても恰好が悪いものだった。


「何を言っているんですか! 逃げ出してなどいません。今、信じてもらおうと宇宙人と交信していたところです!」


 苦笑の渦。誰しもが信用していない。

 だが洋一郎少年は続ける。


「今から来てくれます。我々の目の前に。テレビ局の屋上に上がった時、ボクを目がけてその宇宙船はやってきます」


 知識人が馬鹿にしたように言葉を吐く。


「へぇ。面白い。目の前に。もう逃げられないけど大丈夫なのかな?」

「もちろん。その宇宙人はラドキォー星人。3回目の宇宙からやってきた宇宙人です」


「3回目?」

「そうです。今まで宇宙は5回滅びました。現在は6度目の宇宙。しかし、彼らは恐るべき科学力で3度の消滅を乗り越えたのです」


 少しばかり会場がザワつく。3回目の宇宙。

 知識人の一人はアゴの下に組んだ手を顔を乗せてつぶやいた。


「へぇ」


 それを言うと知識人たちは思い切り席から立ち上がった。

 この洋一郎少年の茶番に少しだけ付き合おう。中二病を日本中に放映してやろうと意地の悪い考えだった。

 出演者たちが廊下を進み、屋上へと歩く姿まで放映される。

 司会者がおちゃらけて洋一郎少年を心配しながらバカにすると言った感じで進んでゆくのだ。

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