第79話 論戦
やがて、テレビ出演の日がやって来た。洋一郎少年は母親に買って貰った、それなりにお洒落なよそ行きを着てスタジオに臨んだ。
スタッフがやって来て、時間や流れ的な説明。今まで放映した洋一郎少年が呼び寄せたUFOのチェックなどを行った。
そして本番が始まる。
好事魔多し──。
洋一郎少年の力をペテンという知識人が洋一郎少年の目の前に多く座る。
洋一郎少年はそれに挑む。アイドルグループ、スクランブルの大郷 祥はゲスト席にいて中立の立場だ。ただの視聴率稼ぎの置き人形なのだろう。
洋一郎少年の陣営にいるUFO肯定者は頼りないものばかり。妄想や勝手な解釈で盲信しているものたち。
そんな確信のない話を自信ありげに話す連中が味方で、洋一郎少年の旗色は最初から悪い。だが洋一郎少年は黒い箱に相談し、解答を得ていたので自信を持って臨んだ。
それがテレビの討論番組で生放送される。
「地球上の生命だって、かなり低い確率で生まれた。我々が空を見上げて見る星々にその形跡はない」
「地球以外になぜ生命体がいないと言い切れるのでしょう。現に我々はここにおります」
「それだって太陽があって、環境が整わない限りは無理だ。そして、例えそれらが揃ったとしても知的生命体になるとは限らない」
「それは先ほどお答えしたのと同じことです。他の惑星でも同じように地球を見ているかもしれませんよ」
「具体的に宇宙人が宇宙を推進してくるエネルギーは?」
「我々が知らない軽い鉱物を発見しており、それは宇宙にでると冷気で無限に推進するようです。説明は私もできません」
「それで宇宙船を作っていると言うことか?」
「そうですね外殻は。中には無重力ではなく重力が有り、普通に生活できるよう作られているようです」
苦笑が漏れる。
洋一郎少年派でない理論派の人物たちから。
しょせんは質問されたことに無理矢理答えているだけ。
そう思われている。
洋一郎少年には黒い箱から教わった知識があった。
対応できる知識は頭に叩き込んである。
しかしそれには限りがある。洋一郎少年に自信はあっても覚えられる力は所詮普通レベルの中学二年生なのだ。
「あなたが念を飛ばして別の惑星から何年かけてここにくるのです。その準備はどうなんでしょう。あなたに呼ばれた。はいじゃぁすぐ宇宙船をとばしましょうというくらい簡単なことなのですか? テレビの生放送でも呼びましたが、二時間でこちらにすぐ来れる?」
「それは数日前から念を飛ばしていましたから」
「しかしその前の放送では念じればすぐに来るとおっしゃってましたよねぇ」
「それは……」
「前には呪文のようなものを唱えていましたが、今ではそれはない。それは念じるから? じゃぁ呪文はなんのためだったのです?」
「それは、その時はまだ力が弱く……」
「そもそもどんな進化を経て我々よりも進化したのでしょう? 宇宙が始まって彼らが進化した経過に大変興味があります」
洋一郎少年は半べそになってきてしまった。
ウソにかけるウソ。言い訳に重ねる言い訳。しかし黒い箱の力を借りはしたものの、実際に宇宙人がいることは間違いないのに信用されない。
洋一郎少年は今まで呼び出した宇宙人の全容を知らないのだ。
だが自分は宇宙人を呼べる。呼びつけられる。
この科学的な有識者たちに思い知らせてやれる。