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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
少年とUFO篇
75/202

第75話 UFOを呼べる少年

 






「ヴェンドラヴェンドラヴェンドラ……」




 空に向かって話し続ける少年──。


 歳は中学二年生。背もそれほど高くなく、太っても痩せてもいない。学校の成績も平凡そのもの。顔立ちも際立って良くもなく悪くもない。いわゆるどこにでもいる少年。目立たないモブというやつだ。


 そんな少年に何の期待であろう。周りにはテレビ局のクルーが囲んでいる。

 少年の行動を邪魔することなく黙ってみていた。そして少年と同じく空に向けてカメラを向けてる。


 時間にして1時間ほど。

 テレビクルーの一人は何の反応もないので大きなアクビをした。

 だがその時、少年が小さく呟く。


「来ました──」


 それとともに、テレビクルーたちは一斉にそこを見た。


 集中して一点──。


 空に浮かぶ光。最初は小さい点のようなもの。

 そこからいくつか光が飛び出し、カエルの卵のように増えて行った。


「あれは何ですか? UFOですか?」

「そうです。ワクティカ星からやってきたと言っています」


 興奮するテレビクルーとは対照的に冷静な少年。まるで当然と言わんばかりに。

 ワクティカ星から来たUFOと彼は言った。

 それはやがて、空の色と同化し、いつしか完全に見えなくなると少年に向かって歓声が上がる。少年はそれに対し、真顔で手を上げて応えた。


 どうやらこの少年が、空に浮かぶ光を呼び込んだらしかった。


「すごい……」


 記者の一人がポツリと呟いたことに、少年は人知れずほくそ笑む。それは誰にも出来ないことをやってのけたという優越感の笑みであった。




 それがテレビのバラエティで放送される。怪奇スペシャルの中の1コーナー。UFO特集の中でだ。


 彼の冷静な声と解説が放送される。途端に、彼は時の人となった。


 番組の1コーナーのタイトルは、『UFOを呼べる少年。それはトリックなのか? 本当なのか?』


 コピーの最初にトリックが来る。明らかに信用されていないのではないだろうか?

 偶然や、別な光。つまり、地上からのレーザーや太陽光線を反射したものが雲に映ったのでは。

 出演する専門家たちは議論を続けた。


 だがテレビの1コーナーを占めたのだ。彼が学校に行くと、同じ学校の生徒たちは好奇な思いで集まり、そこには人だかりが出来る。

 中学生とは、ちょうど色んなものに興味を持ち始める時期だ。そして少年には人と違う力があるとなると、周りの感触も興奮も違ってくる。

 少年を囲む人だかりは、少年に対して数々の質問を投げかける。その質問に彼は一つずつ信憑性のある言葉で解説した。


 周囲の好奇な目。羨望の目。同い年なのに敬語の言葉。興味を持ったものの群れ。

 その中心にいられることは少年にとって栄光であり、栄華であり、栄達であった。




 そんな毎日──。

 UFOが彼を目立たない存在から目立つ存在に変えた。宇宙人とのコンタクトなど他のものには出来ない。

 しかし、なぜ彼はUFOを呼べるのであろう?

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