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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
男とキャバクラ篇
7/202

第7話 恋の清算

 しばらくして、オーダーメイドの義眼が出来、眼科にて装着してもらった。よく見ないと義眼とは分からない。

 さらにカツラを被り、頭髪もそう簡単にはバレない。これなら大丈夫だろうと判断した。


 ルカにはいつか正直に言う。それでいい──。


 そう思いながら僅かに笑ってルカに電話をかけた。


「おかけになった 電話は 電波が 届かないところにあるか 電源が 入っておりません」


 電話が通じなかった。しかし、こんなことよくあること。仕事上スマホの電池が切れるくらい客に連絡を送るためだ。


 今度はルカの部屋まで行ってみた。ドアノブを回すとカギがかかっている。

 出かけてるのか? そう思いながら外に出て部屋を見上げてみると違和感に気付いた。


 カーテンがない。家具が見えない。無人だ。無人の部屋だ。




 悠太の中に焦る気持ちが生まれた。嫌な汗が流れる。


 電話に出なかったから連絡着かずにそのまま引っ越してしまったのか? 実家に帰ってしまったのか? と考えた。そう考えるしかなかった。


 悠太は逸る気持ちを押さえながら時間を見計らって、ルカが働いている店に行ってみると、いつもの男性スタッフが迎えてくれた。


「……あ。ゆうさん」

「ルカは? 辞めたのか?」


「はい……。辞めたっつーか、どっか行っちゃいましたよ。ホストに入れあげてましたから……。男と逃げたのかも」


「はぁ??」


 悠太は男性スタッフを掴みあげて声を上げた。


「んなわけねーだろ! ルカはオレと付き合ってんだよ!」

「知らないっすよ! マジです! マジ! ゆうさんが店に来る前からホストと付き合ってましたもん!」


 悠太の怒鳴り声を聞いて、何ごとかとぞろぞろと他の店員も女の子も集まって来た。


「ホントですよ……。ゆうさんには内緒にしてたみたいですけど」

「指名も多くて、店の給料も良かったし」


 悠太は愕然とした。

 少しだけ思っていた。ルカは自分を騙しているのではないかということ。しかしそれはねじ伏せていた。そんなことないと。そんなはずはないと。そうなられては困ると。

 ここまで金を賭けたのに、そんな現実受け入れられない──。


 だが店のものたちは口々にいなくなったルカの話をしたのだ。本当の話を。


「お父さんが病気だって──」

「ああ、そういって、他のお客さんからもお金引っ張ってたみたいで……。クレームが来てました。でもウソですよ。家からは勘当されたって言ってたし。そんな親孝行な子じゃないですって。突然のことでこっちも困ってるんですから」


 悠太の背中に嫌ったらしい汗が噴き出してくるのを感じた。


「オレは! オレは! あの女のために、腎臓も! 肺も! 目玉も失ったんだぞ!」


 叫ぶ。義眼とカツラを外して見せながら。どうしようもない怒りとともに。


 だが女の子から悲鳴があがり、悠太は男性スタッフ数人がかりでつまみだされてしまった。


 悠太はそのまま自暴自棄になってフラフラと街を徘徊した。気がおかしくなったようにダランと両手を下げ、一つだけになった目の焦点は定まらず、口をポカンとあけてよだれが垂れてくるのも構わずに。




 そして急に走り出した!


 自分のアパートの周りをグルグルと草を掻き分けて探した。


「箱。箱。箱! 箱使ってあの女引っ張り出してやる!」


 悠太は路肩のじめじめした草をかき分けると、ほのかに光る箱を見つけた。


「……あった……。あった!」


 悠太がそれを掴もうとすると、箱は球形になりコロコロと転がり出す。悠太の手は空振りして草の先端を摘まんだだけだった。


「おぃ! ちょっと待てよ!」


 立ち上がり転がる黒い箱を追いかけて走る。


「もう少しだ。もう少しで手が届く……!」


 悠太は滑り込んで箱を掴んだ。道の真ん中で寝転んだ姿勢のまま。箱は悠太へ向かって光文字を表示した。


『願い事をどうぞ』


「ルカだ! ルカをここに出せ!」


『代償は?』


「左足の指と、左手の指くらいだったら出せる!」


 すると、凄い早さで光文字が流れ出した。


『wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』


「???? な、なんだ? どういう意味だ?」






『もう 叶 え ら れ ません』





 その時、車のパァーンというクラクションとブレーキ音。次にドンとニブイ音が聞こえた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 その夜。悠太のアパートの近くの道を女が歩いていた。若いOLだ。会社帰りでハンドバッグ片手に家路についていたのだ。


「うえ。なんだ? すっごいパトカー」


 緊急車輌の赤い回転灯が、建物の壁を真っ赤に光らせまるで火事の夜のように不気味だった。その光を眺めている女の足元にコツンと感触があった。


「あれ? なんだ? これ?」


 女は落ちている黒い箱を拾った。


「やだ。草はえてる」


 見ると、箱に光った文字が流れている。


『wwwwwwwwwwwwwww』


 女は笑ってその流れる文字を見ていた。


「変なの。オモチャかな?」


 そう言うと、新しい文字が流れ出した。


『この箱はあなたの願いを叶える箱。使い方は……』

【予告】

女は黒い箱を持ち帰った。

女は憧れの彼に告白するためにダイエットしていた。


次回「女とダイエット篇」


ご期待ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゆうくんから引き出せるだけ引き出して、ルカもそろそろ引き際を感じていたのかもしれませんね。 しばらく会えないと言われた時は、笑いが止まらなかったに違いありません。 う~ん、ギルティ! ざ…
[良い点] ゆうくん! 予想通りで安心しました! 歌舞伎町にこの黒い箱が出現したら、 カオスになるんだろうなぁと 思わず妄想してしまいました。
[良い点] 絶対騙されてるよ!ヤバいよと思いながら読み進めて、大量のwにゾッとしました。 日本のホラーっていうのでしょうか。 人間の根底にある仄暗さが、絶妙に怖い。 でも、続きが気になって読んでしまう…
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