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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
男とキャバクラ篇
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第5話 箱再び

 悠太は部屋に帰ると、ベッドにうつ伏せに寝転がって嬉しそうに足をバタバタさせた。思い出すのは豪遊。華やかな席でルカや女の子たち、他の客の驚く姿。


「一日で39万かぁ……。尋常じゃねぇよなぁ~」


 そう言って残った金を数えた。残り280万ほど。


「うーん。でもこれならけっこう遊べるだろ。仕事のない日に行って大豪遊するか、一日3万としたって、100日は遊べる。うぇーーい!」


 楽しい想像をしていると着信があった。ライン電話にはルカと名前が出ている。悠太は慌てて受話器マークをタップした。


「もしもし?」

「うぇ、うぇーーん」


「ルカ?」

「えーん。えーん」


「泣いてるの?」

「泣くよぉ! バカぁ!」


「どうして? どうして?」

「なんで? こんなにお金! ルカになんでこんなことしてくれるの? もう! ゆうさん今日はサプライズ多すぎだよぉ!」


「なんでって……」

「ど、どうしてぇ!?」


 彼女は泣きすぎているようで、言葉をつまらせていた。


「キミが……好きだから……」


 ピタリと止まる彼女の泣き声と言葉。しばらく待つと鼻をすする音が聞こえた。


「えへ……。ルカも……。えへ。えへへ」


 悠太の鼓動は一気に高鳴る。相思相愛に間違いない。悠太は勇気を持って決断し、言葉を伝えた。


「ルカ。付き合ってくれ」

「……うん。ありがと……。うれし……」


「あは……」


 深夜帯。二人は話をした。ルカはお金をもらって余裕ができたので、出勤量は減らせるが、父親の病気の関係で家族を支えなくてはいけなく、店で働かなくてはいけない。でもいずれ夜とは別な普通の仕事を探すと約束した。


 それからはルカの質問。仕事はなんなのか? どうしてそんなにお金があるのか? という内容だった。

 悠太は答えを用意していた。たまたま自分が購入していた株券が大当たりしてあっただけで、本来は普通の会社員。お金もそれほどないので、大豪遊なんてしたことない。ただ、ルカがかわいそうで虎の子のそれを出しただけだ。と。


 彼女は嬉しそうにお礼を言って、その日は朝方まで話をした。


 それから、彼女は出勤量を減らしたようで、二人が外で会う時間は増えて行った。彼女の部屋にも上がって関係も結んだ。最初、ルカは体毛がまるでない悠太に目を丸くして驚いていたが悠太は生まれつきだと言ってごまかした。


 そんな生活が数か月。彼女が出勤の日は、店に赴いて独占。しかし真の独占ではない。彼女は店に出れば他の男の相手をするのだ。もうそんなことは嫌だ。そろそろ同棲しようと悠太は持ちかけたがルカは断った。悠太は店も辞めないルカに正直イライラしていたので、つい大声を上げた。


「なんでだよ! 店も辞めないしどうして同棲もダメなんだよ!」

「え、やだ。怖いよ、ゆうくん。ゴメン。ホントにゴメンねぇ……」


 ルカは悠太を「ゆうくん」と言うようになっていた。しかし、彼女の()が分からない。店と同じ話し方なのだ。一歩下がっているのか? まだ客扱いなのか? 元々それが自然なのか?


「仕事……探してるのかよ……」

「…………」


「言えよ!」


 ルカは怒鳴り声に思わず体を震わせた。


「……探して……ないの……」

「どぉうして!?」


 ルカは涙を流し、語りだした。


「ゴメン……。ホントはお父さんの体の調子が悪いの。手術代……かかるの……」

「え……?」


「ゆうくんに言えなかったの。心配かけたくなくって……。私だけ幸せになれない。お父さんが危ないのに、ゆうくんとラブラブなんてできないよぉ! ホントはしたい! ホントはしたいんだよ! でも、ルカが少しでも幸せになると、神様がお父さんを連れて行ってしまいそうで……。ゴメン! ホントにゴメン! こんな彼女いやだよね!? ゆうくんに嫌な思いさせられない!」


 ルカは大変に取り乱し、言葉を言い終えると悠太に背中を向けて走り出したが、悠太は追いかけてルカの肩を掴んだ。


「ゴメン。オレ……知らなくて」

「やだ! やめて! 放して! ゆうくんと別れるんだよ! ルカ、ゆうくんと別れる!」


「バカ!」


 悠太はルカの体を回して、自分の方に向けた。


「いくら必要なんだ」

「……ダメ。言わない」


「言えよ!」

「イヤだ! 言ったら、ゆうくん、なんとかするもん! なんとかしちゃう人だもん! 頼れないよ!」


「……頼れよ。ルカのお父さんなら、オレのお義父さんになる人だし……」

「え……?」


「結婚しようよ。ルカ。愛してんだ」


 ルカは顔を覆ってしゃがみこんで泣き出した。


「うぇーーん。うぇーーん」

「バカ。泣くなよ」


「泣くよ! ゆうくん、カッコよすぎだもん!」

「はは」


 ルカは抱きついて悠太にキスをした。悠太はそんな積極的なキスに驚いたが、ルカを抱きすくめ自分もルカに合わせてキスをした。


「それでいくらなんだ?」

「うん、でもどうにもならないお金。……あと2500万……」


「ハァ??」

「うん……。保険きかなくて、病院一括払いだから貯まるまで手術できなくて」


「そ、そっか」

「うん。でもゆうくんが一緒に働いて協力してくれるなら助かる!」


 彼女はうれしそうな顔をしたが、働く。そんなに余裕があるものなのだろうか? 病気だと言うことは進行する。悠長に構えてはいられない。ルカはそれでもよさそうなことを言うが。


「お、おう。……今日は、帰る──な?」


 悠太は考えながら部屋に戻る。そしてもう使うまいとしまっていた黒い箱を取り出した。

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