第25話 デビルジャックの猛攻
新たな臓器の提出を迫られさすがのバスターマンも息を飲む。
「そ、それを取られても大丈夫なのか?」
『うん。死にはしない』
「し、しかし……」
バスターマンは躊躇した。それは当然だ。よくよく考えたら、目の前の敵も己の内臓を使って作ったもの。それを自分の臓器を使って巨大化して倒す。
自分自身の身を削って敵を出しそれを倒すのだ。言ってしまえば自分の内臓を自分で引きちぎってるだけ。簡単に考えていたが、自分の馬鹿さ加減に呆れた。
それに、次の敵はどうなる。どうやって作ればいいだろう。また平和に戻ってしまうではないか。そしたら活躍の場がなくなってしまう。
『バスターマン?』
「い、いや、ちょっと。……はは」
『今、街は壊滅状態なんだよ? 自衛隊も歯が立たない! 誰があの敵を倒すの? 誰が街の平和を守るの!?』
「で、でも……」
虚像のきゃんははっきりしないバスターマンの態度に呆れ顔になった。
『見損なったわ』
バスターマンの目が光った。その言葉に弱かったのだ。
「じゃ、それでやってくれ!」
『wwwwww さすがバスターマン! 巨大化したら右目の下側のモニターに小さく私が出てアドバイスするよ!』
虚像のきゃんの指先から白い光線がブレスレットに照射される。新たに赤い大きなボタンが出てきた。
続いて、赤い光線がバスターマンを照らす。それは2秒ほどだったが内臓が対価として取られたと言うことだろう。
「こ、これで内臓の半分がなくなったのか。痛くもかゆくもないからいいけどよ……」
『さぁ! バスターマン! 赤いボタンを押して巨大化するんだ!』
「オーケー!」
バスターマンは、新しく出来た赤いボタンを押した! みるみると巨大化して行く。それを見たデビルジャックは驚いた。
「ぬ! ぬ! ぬ! 貴様はバスターマン!」
周りには自衛隊や警察、取材のヘリコプターが飛んでいた。バスターマンはここぞとばかり巨大な体でポーズをとった。
「神が裁けぬ悪を倒す! バスターマン参上!」
撮影されている。テレビクルーが乗るヘリコプターをかなり意識した決めポーズ。今までの人生で一番決まった。
デビルジャックも負けてはいない。体勢を立て直してクールさを醸し出していた。
「破壊こそ正義。貴様の血で咲かす美しき悪の華。デビルジャック参上」
ポーズは同じでも少しだけセリフを変えていた。バスターマンは感心した。
「フーン。セリフを変えるというのもアリだなぁ」
少し物思いにふけったところを報道のヘリコプターから声がかけられた。
「感心してないで闘って下さーい!」
「あ、そうか!」
バスターマンは組み付いて、ブンブンと大きな音を立てて振り回して放り投げた。さすが鍛えているだけのことはある。
巨大化したデビルジャックは何度も地面をバウンドして転がり回った。その際にも建築物は破壊され、回した気流によってヘリコプターなども墜落した。
しかしデビルジャックも負けてはいない。走りながらドロップキックをあびせると今度はバスターマンが転げ回った。
さすがに同じ力がある敵。なかなか勝負がつかない。
その度に、黒い箱の作ったイメージである“鈴村きゃん”は応援をした。バスターマンはふと彼女の顔が気になった。
「あんた、なかなかいい女だな」
『そう? 私はイメージなだけどね』
「へぇー。意味はわからんけどなぁ」
『バスターマンはアイドルとか知らなそうだね』
「まぁ、ずっと修行ばっかだったからな。恋とか自分には関係ないと思ってた。──っとあぶねぇッ!」
デビルジャックが会話の途中で攻撃を仕掛けてきたのだ。彼の手が銃の形に変化する。そこに大地にちらばる瓦礫を詰め込むと散弾してバスターマンに撃ち放ってきた。
バスターマンに数発着弾し、余りの激痛に膝から地面に倒れてしまった。
「……くそ! 動けねぇ……!」
『頑張れ! バスターマン! 立ち上がるんだ! 地球のために!』
わずかながらに首を上げるとデビルジャックが近づいて来て、バスターマンに向けて銃口を向けた。
「これで最後だ。オレの勝ちだな」
「……またデビルジャックが変形しちまった。これ以上、オレに出せる内臓はない。クソ! 負けなのか」
そこに、自衛隊の戦闘機からミサイルが発射さえ数発デビルジャックに命中した。デビルジャックは戦闘機に対してハエを追うように手を振るった。
虚像であるきゃんは、今がチャンスとバスターマンを励ました。
『バスターマン! 立って!』
「もう無理だ。これ以上オレに持ち合わせている兵器も力もない」
『もう! しょうがないわね。
じゃ、本業歌手なので歌います。コホン。
♪夕闇に潜む影 宇宙から忍び寄るモンスター
街の平和が脅かされるのさ
斗えバスターマン!
みんなのために戦う。
孤独なヒーロー! 我が身を犠牲にしながら
今日も明日も明後日も
戦う! 闘う! たたかーうー!
泣くな! 男は泣かないのさ。
ヒーローは常に一人なのさー。
バスターマーン!』
その歌が終わると大地に寝転がっているバスターマンの指がピクリと動いた。