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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
男と正義の味方篇
24/202

第24話 ピンチ

 そこは大きな地方都市だった。わざと人が多いところで選んだのだ。英太はギャラリーたちに自分のカッコいいところを見せたかった。

 デビルジャックは黒い箱に作られたライバル。バスターマンのそういう性格は織り込み済みだ。


 デビルジャックは雰囲気を出すためにバスターマンに組み付いて大きな通りに落ちると、たくさんの車両がブッ潰れた。


「いいぞ! デビルジャック!」

「次が最後だ! バスターマン!」


 突然のことで街は大パニックだった。黒い煙が立ち上り、頭上には車やアスファルトのかけらが飛んでくる。人々は避難しようとして一斉に駆け出していた。

 そこを、バスターマンは「待て!」と一喝。

 人々は戦慄な顔をして二人の怪人の方を見るとバスターマンはポーズを決めた。


「神が裁けぬ悪を倒す! バスターマン参上!」


 いつもの名乗りを上げると続いてデビルジャックも背筋を伸ばし、左腕をゆっくりと上げて胸の前で拳を握った。


「破壊こそ正義。悪こそが美しい。この俺が征服者だ。デビルジャック参上」


 派手なバスターマンに比べ、こちらはクールに決めた。バスターマンは思わず感心してしまった。


「へー。イカしたフレーズだなぁ」

「今日こそ死ね! バスターマン!」


 滑り込みながら拳を振るうデビルジャック。道路がベロベロとめくれ上がって土が剥き出しになる。

 それに対してバスターマンは両手のひらを広げて防御したが、力負けしてビルに突っ込んだ。

 ビルは衝撃で柱を失い音を立てて崩れた。それに巻き込まれて5つのビルが倒壊。

 街中が灰色の煙で覆われた。舞い上がる粉塵に人々は口を押さえて避難場所を目指して走り出す。

 人々の悲痛な泣き声が辺りに響いていた。


 しかし、崩れるビルの中でバスターマンは笑っていた。


「くくく……。かっかっかっか! すげぇ! すげぇぞ! まるでハリウッドのヒーロー映画だ!」


 バスターマンは壊れたビルを破壊し、突き破って外に出た。


「なかなかやるな! デビルジャック!」


 デビルジャックは声をかけられ驚いた体で振り向いた。


「くそ! バスターマン! 生きていたのか!」


 とのオーバーリアクション。バスターマンが望んだ悪そのものだ。バスターマンは嬉しくなった。


「これでもくらえ!」

「のぞむところよ!」


 激しい肉弾戦が巻き起こる。片方が吹っ飛んで建物を崩壊させ、お返しとばかり、片方が豪腕をふるうと地面が大きく凹んで道路がめちゃくちゃになっり、地下に巡らされた水道管やガス管が破裂した。

 なかなか決着がつかないままデビルジャックが叫ぶ。


「くっそう! これでは埒があかん!」


 そう言って大地に踏ん張って全身に力を入れる。バスターマンはその様子に「なんだ?」と声をあげた。


 すると、次の瞬間! デビルジャックの体がみるみる大きくなって行く!

 ずんずんと巨大化し、30mほどの大きさになった。そして足を後ろに振り上げサッカーのシュートのようにバスターマンに蹴りかかった!


「うえ!」


 さすがにバスターマンは転がってそれを避けた。


「きょ、巨大化するなんて!」


 バスターマンは倒壊した建物に身を隠した。


「うそだろ!? そりゃ、敵は巨大化するもんだと思うけどよぉ。バスターマンには巨大化は盛り込まれてない。どうする? 逃げちまうか?」


 バスターマンが独り言を言っていると、シュゴーーー! という音が聞こえた。その音の主を捜してバスターマンがこっそりと覗くと、自衛隊の戦闘機が三機。巨大化したデビルジャックを狙っていた。


「おお、いいぞぉ! 自衛隊! 頑張ってくれぇーー!」


 街を破壊する敵機と見なしたので攻撃すると警告してミサイルを発射した。

 命中──!

 デビルジャックの体は揺らめいた。自衛隊は間髪を入れず次の攻撃に移ろうとした。


 しかし、デビルジャックが腕をひと薙ぎすると戦闘機は簡単に大爆発して、残骸がバスターマンの近くに落ちてきた。


「うわ! あちぃ!」


 戦闘機の残骸から発せられる熱に驚きバスターマンはそこから飛び出して、逃げ場所の拠点を変えようとしたところをデビルジャックに発見された。


「見つけた。ちょこちょことネズミのように!」


 また大きく地面をえぐりながら蹴り上げる。バスターマンはそこに起きた煙を利用して、また近くのビルの残骸に逃げ込んだ。


「はぁ! はぁ! はぁ! クソ! どうすりゃいいんだよ!」


 すると、バスターマンのパワースーツの目の内側部分に文字が浮かんだ。バスターマンはそれを読んだ。


「なに? ブレスレットの緑のボタンを押せ? こ、これか?」


 バスターマンがボタンを押すと、ブレスレットから光が照射され、そこに女の子の上半身が浮かんでいた。鈴村きゃんの映像だ。彼女は元気にしゃべりだした。


『はーい。今日も元気にワンワンワン。あなたのハートに首輪をつけちゃう! コントロールセンターの鈴村きゃんです!』


「あれ? この女知ってる。なんとかってアイドルだよな? ポスターとかで見たことあるぞ?」

『そう。私は“黒い箱”からの信号で作られた虚像。女の子のデータが少ないので私がでてきたよ? よろしくお願いしまーす!』


「黒い箱? 黒い箱からだって?」

『うん。そーだよ! 敵は巨大化しちゃったみたいだね! バスタードマンも巨大化して対応するんだ! がんばって出発進行だよ!』


「ちょ、ちょっと待てよ! 巨大化って。なんで敵が巨大化するんだよ!」

『だって、ヒーローにピンチはつきものでしょ!』


 バスターマンは大きくうなずいた。


「そうか! そうだよな! よし。巨大化するぞ!」


 バスターマンが叫ぶと、虚像のきゃんがにっこりと微笑む。


『代償は?』

「やっぱり」


『そりゃそうだよ。でも、バスターマンならみんなを助けるために自分を犠牲にするんだよね? さぁ、代償を言って!』


「何だ? 何が欲しいんだ?」

『そうだねぇ。バスターマンは戦わなくちゃならないから、ふんばり効かすために歯や足の指はやめておいたほうがいいね。だから肝臓の半分、胃袋の半分、小腸の半分ならどう?』


 それを聞いたバスターマン。さすがに黙ってしまった。

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