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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
男と正義の味方篇
23/202

第23話 悪の登場

 英太が山を下り電車に乗って自分の家がある駅に降り立った。駅を出ると、近くの民家をパトカーが囲んでおり、赤々としたランプが緊急性を知らしていた。

 英太は野次馬根性で近くの人になんの騒ぎかを聞いた。


「どうしました? どうしました?」

「なんか人質とった立てこもりみたいですね」


「しめた!」


 英太にとっては待ち望んだ悪の登場。怪人や怪獣ではないが、人々が困っていることには違いない。

 英太は急いで人がいない路地に入り、人がこないか確認しながらブレスレットのボタンを押した。


「変身! 神が裁けぬ悪を倒す! バスターマン参上! とお!」


 人々の頭上をバスターマンが飛んでゆく。


「え? なにあれ? スーパーマン?」

「ロボットみたい」

「キモーい。コワーい」


 バスタードマンは目当ての民家の壁をぶち破って飛び込んだ。バスターマンのパワーの威力に家は大きく揺らめいて傾く。しかし彼は気にせずに叫んだ。


「オラ! 犯人! いい加減にしろ!」


 立てこもり犯はこの突然の奇妙な格好をした来訪者に驚いた。


「な、なんだ? オマエは! 近づいたらコイツ殺すぞ!」


 そのまま人質に包丁を突き立てると、バスターマンは叫んだ。


「やめろ! これ以上、罪を増やすな!」


 犯人は興奮していた。しかも訳の分からない侵入者。家の壁をぶち破る程の。もう後がなかった犯人はためらいもなく人質を刺す。

 人質は恐怖にもがきながら、血を噴き出して目を閉じ首を投げ出してしまった。


「ああ!」


 目の前で人が害され、憤慨したバスターマンは犯人に襲い掛かり、怒りのまま手加減なく掴んで殴ると犯人は床で潰れグシャグシャの血の塊になってしまった。


 バスターマンのパワースーツは自分の力の一万倍。生身の人間に使う力ではない。それを知り、自分がやったことが恐ろしくなって窓からジタバタともがきながら飛び出し、物陰に隠れて変身を解いた。静かになったので警察が突入していく様をみながら部屋へ逃げ帰って毛布をかけてブルブル震えた。


 またニュースでバスターマンが出ていた。今度は結構ハッキリと映っている。『怪物? 恐怖のロボット?』と銘打たれていた。


 家を破壊し、犯人の区別もつかないほど潰されてしまった報道。

 そうだ。間違ってはいない。犯人が犯した凶悪な犯罪は自分の正義の行動にかき消され、バスターマンが悪者のように報道されている。

 英太は自分が正義の味方なのに誰も認めてくれないことに憤慨した。


 これではいけない。英太は悪の登場を祈った。

 これを挽回するには、巨大な悪の組織、大怪獣、巨大ロボットをテレビ放送されながら倒す必要がある。それを倒せば、自分は世間に認められる。ヒーローになれる!




 黒い箱はほのかに光っていた。


「なぁ、敵が欲しい。悪の……オレくらいの力を持つ」


『代償は?』


「わからない。なにをお前に与えればいいんだ?」


『脾臓・胆嚢では?』


「それは失ってもいいものなのか? まぁ、お前を信用するしかオレにはできないが」


『叶えられました』


 黒い箱から、白い光が伸びてゆく。どこか遠くに。続いて、英太の体に赤い光が照射された。


「こ、これで敵が現れたのか?」


『はい。敵の名前はデビルジャック。カラーリングは黒を基調として青と紫。バスターマンよりもものものしい悪役のパワースーツを着用しています。そしてバスターマンのライバルになるように意識を操作しました』


「すげぇ! 早く会いてぇ!」


 男は、ワクワクしながらデビルジャックが街で大暴れするニュースを待った。


 そして、その時が来た! ニュースが流れた!


「デビルジャックと言うロボットのようなものが、箱丸村で大暴れしています。箱丸村は現在人口0の村ですが、デビルジャックは無人の空き家を破壊したりしています。映像です」


 見ると、ホントに悪役の姿のパワースーツを装着したものが暴れている。しかも、めちゃくちゃしゃべっていた。


「わはははは! オレの名はデビルジャック! やい! バスターマン! オマエがこなけりゃ、この街は壊滅するぞ! 早くでてこい!」


 テレビのキャスターが続ける。


「果たして、彼が呼んでいるバスターマンとはなんでしょうか? それに、デビルジャックはなんでしょう? 質の悪いコスプレなんでしょうか? 今、警察も向かっているようです」


 バスターマンは自分のことだ。しかし敵がいるのは無人の村とは。英太は箱に目を向けた。


『wwww さぁ! バスターマンの出番ですよ! 戦え! バスターマン!』


「バカ! 無人の村じゃ意味がないだろう! もっと街で暴れさせろ!」


『代償は?』


「クソ! もういい! 変身!」


 英太が腕のブレスレットのボタンを押すとバスターマンに変身した。


「神が裁けぬ悪を倒す! バスターマン参上!」


『wwwww』


 英太は窓を開けた。


「とお!」


 すごい速さでバスターマンが飛んでゆく。しかしすぐに人通りが多いところで着地した。


「すいません。あやしいものじゃないんです。箱丸村はどっちでしょう?」


 聞かれた人は驚いた。こんなあやしいもの他にない。しかし、彼は答えた。


「ああ、オレの故郷の近くの村だよ。たしか、ここから600kmくらいあるよ? あっちの方だよ」

「マジすか? あざーーす!」


 バスターマンは礼を言って、大空に舞った。


「ええと、バスターマンの時速は300kmだから。え? 2時間?? 結構かかるじゃねーか!」


 バスターマンは教えてくれた人が指さした方向に向かって飛んで行った。


 3時間後。バスターマンは迷いに迷ってようやく箱丸村に到着した。

 デビルジャックは警察に囲まれていたが、発砲されても弾丸を跳ね返してしまっていた。警察は自衛隊の出動を要請しているところだった。そこへバスターマンが降り立つ。


「ハァ、ハァ、ハァ。やっと見つけたぞ! デビルジャック!」

「ぬぅ! 貴様はバスターマン!」


 そのセリフを待っていた。バスターマンは嬉しくなって『パン』と手を打った。


「ここは警察が多い。別なところで戦おう!」

「フン! さすがオレのライバルだな。のぞむところだ!」


 バスターマンに続いてデビルジャックも空に飛びあがった。警察は見たこともない光景に目をまん丸くしていた。


「警部。あの二人何なんでしょうね?」

「分らん。とにかく本部に連絡しろ! 我々では歯がたたない。それが二体もいるとな!」


 バスターマンは戦う場所を選んで一時間ほど飛んでいた。デビルジャックはイライラして訪ねる。


「おい! バスターマン! いい加減にしろ! 戦う気があるのか!?」

「ああ。ちょっと待てよ。ギャラリーが多いところで。あ! あそこなんでどうだ?」


「どこでもいい! さっさとしろ!」


 バスターマンは大都市に向けて急降下し出した。

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