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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
総理と式神篇
197/202

第197話 満身創痍

 空中を切り揉むように、オートモードのバスターマンは空を急ぐ。途中でインビジブルモードにして姿を消し、病院には障害物を通り抜けるモードを使って、最終的には自ら変身を解いた。

 見覚えのある病院の自動販売機コーナーに鈴村きゃんはパジャマ姿で立っていた。


「ウソ……」


 と独り言を呟く。オートモードの安心感と速すぎる動きにしばらく硬直。

 今までの体験を思い出して、そこから逃れられたことに安堵のため息をつく。


「そういえば英太さん!?」


 鈴村きゃんが、自動販売機コーナーから飛び出そうとすると、目の前に呼吸器を付けられストレッチャーで運ばれてゆく英太の姿。

 それを心配そうについてゆく鈴村の母親。鈴村きゃんは驚いて母親を捕まえた。


「お母さん!」

「ああふっちゃん! 無事だったのね! あなたの病室、また壊れてて英太さんが壁の下敷きになってて、今は意識不明なのよ!」


「え……?」


 鈴村きゃんは固まった。そしてストレッチャーがエレベーターへと消えるのを見ていた。

 鈴村きゃんは、またもや病室が移動となった。見つめるのは英太に付けて貰ったブレスレット。

 これのお陰で自分は死なずにすんだ。しかし英太は──。


 会いたい。看護士を捕まえて聞くものの、病室は教えられないと答えられる。無事かどうかは、とりあえず無事との回答でホッとした。

 鈴村きゃんの病状も動き回ったせいで芳しくなく、発熱してしまい、そのまま寝込むこととなった。目を覚ますと、心配そうな母親の顔がそこにあった。


「英太さんは……?」

「あんた! 自分の病状が悪いのに人の心配してるんじゃないわよ。お母さんね、ふっちゃんが寝てる間に成田さんに連絡しておいたわよ。すぐに来てくれるって! もう、しばらく出歩くのは禁止ね!」


 母親に叱られた。しかし、鈴村きゃんの中には、成田きゃんなら英太の傷も治せるのではないかとの思いが芽生え、彼女の到着を待つことにした。


 幸いなことに、すぐに成田きゃんは来てくれた。鈴村きゃんの母親は、気が散らないように席を立った。

 成田きゃんから握られる手により、鈴村きゃんの病状も回復してゆく……。


「は──……」

「どうやらよくなったみたいね。なに? 歩き回るようなことでもあったの?」


「あの。きゃんちゃん?」

「どうしたの?」


 鈴村は意を決して、今日あったことを話した。成田きゃんは驚いていたものの、鈴村から見せられるバスターマンブレスレットにて確信する。

 英太は黒い箱の持ち主だったことを。


「つまり、英太さんの傷を治して欲しいってことね。分けないわよ」

「ホント? でも病室が分からないんだ」


 すると、ブレスレットのガイドボタンが点滅する。鈴村きゃんは、それを躊躇なく押すと、そこにはガイドの鈴村きゃん。

 三人のきゃんが勢揃い。成田きゃんも驚いた。


「ウソ。すごい」

『あんまり驚かないね。一番冷静そうだわ。ま、あんたは秘密にしたいみたいだから黙っておくけど。バスターマンの病室は外科の8階。836号室よ。さ、早速行きましょ。私も元の場所に戻りたいしね』


 と、英太の元に行くことを促す。しかし鈴村きゃんには色々と心配があった。

 母親が戻ってくるのではないか? 病室に入れるのか? 英太は本当に無事なのか?


『大丈夫。この病院内は全てスキャンしてるわ。母は待合室の週刊誌に夢中になってる。あと24分は読み終らない。バスターマンの部屋の出入りは激しいけど、今からあんたたちのスピードでたどり着く頃から4分の間、誰も入ってこない。その間に実行するのよ』


 鈴村きゃんも、成田きゃんもそれに大きく頷いた。

 鈴村はブレスレットを握りながら進み、成田きゃんはその後ろを追う。


 やがて8階の836号室。丁度看護士が出てきてナースステーションに戻っていくようだ。

 覗いて見ると、計器の音のみ。寝ている人物以外、誰も気配がない。ここから四分なのだと、二人は足音を立てずに入り込む。


 英太は痛ましい様相だった。身体中に包帯が巻かれ、管が何本も付けられている。顔も包帯で固められており、呼吸をさせるための管が出ていた。

 二人とも胸が潰される思いだったが時間がない。

 成田きゃんは左手を取って握る。鈴村きゃんは右手を取ってその手首にブレスレットを嵌めた。


 ガイドが点滅する。鈴村が押すと、ガイドから一言だけ。


『ありがとう』


 それだけだった。しかし思い溢れる内容だ。鈴村は微笑んだ。


「こっちも終わったよ」


 途端に、むせ込む英太。目を覚ましたのだ。二人はここに留まりたかったがそうもいかない。

 すぐに病室を出ると、看護士が戻ってきたが、看護士もまた病室を飛び出していった。


「先生! 先生!」


 それを聞いた二人は 微笑みあった。しかし成田きゃんは言う。


「でもね。完全には治せない。それはきゃんちゃんと同じ。細かいところと意識不明は治せたけど、肋骨と左腕の骨折は残ったままだからね」

「うん。でも大丈夫。ありがとうね、成田さん」


「はー、お腹減りすぎ。帰りにヤマさん呼んでなにか奢らせようっと」

「うふ。やっぱりそっくり」


「まーねー」


 二人は途中で別れ、それぞれの場所へと帰った。

※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。

※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。

※感想を書かれる際には、政権に対する批判などはご遠慮願います。

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