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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
総理と式神篇
196/202

第196話 戦いの場

 オートモードとなった鈴村バスターマンは、アシヤギーンを抱いて人気のない山のほうへと飛ぶ。

 芦屋もさるもの、なんとかこの戒めをほどこうともがくものの、オートモードのバスターマンはそれを許さない。情などないのだ。

 しかし芦屋も気付いた。

 これはヒホリント星人との約束の場所であると。


 約束の場所は、芦屋の隠れ家から36キロメートル圏内。芦屋のゴーグルに、圏内を示すエリアガイドが現れる。それはほんの数キロメートル先である。

 これはしめたとアシヤギーンは思った。このままバスターマンが捕らえられれば目的は完遂だ。こんなに強くとも、ヒホリント星人の捕縛網には敵うまいと考えたのだ。


 だがオートモードのバスターマンはアシヤギーンを放り出し、蹴り付ける。

 アシヤギーンは、空中から一気に地表に叩きつけられてしまった。


 やはり恐ろしいほどの力。ヒホリント星人やラドキォー星人を追い払った力だとアシヤギーンは思いながら、埋まった土の中から這い出た。


 しかしそこにはすでにバスターマンが立って見下ろしている。アシヤギーンは腰が抜けそうだった。

 バスターマンはアシヤギーンの襟首の部分を掴み上げる。アシヤギーンにはなす術がない。

 だがよく見てみると、バスターマンの胸はふくよかに膨らんでいる。曲線も女性そのものだ。

 やはりこれは、バスターマンの彼女なのだろうと思った。そして女性ならば泣き落としに弱いのではないかと。


「わああああ、すいません、すいません」


 詫びの言葉だがバスターマンの折檻は止まらない。この怪人を殲滅しようと動いている。バスターマンは拳を振り上げてグルグルと回した。


 しかし──。


「止めて!」


 バスターマンの手が止まる。鈴村きゃんの言葉にオートがストップし、掴み上げたアシヤギーンを地面へと優しく置いて解放した。

 鈴村の目の前のゴーグルの左下にガイドのきゃんが現れた。


『どうしたの? オリジナル。今は殲滅のチャンスよ?』

「だって、だって謝っているもの」


『相手は怪人。なにかを企んでいるわ』

「でも無抵抗なものを攻撃するなんて……」


 アシヤギーンは鈴村のバスターマンの前にひれ伏した。


「どうかどうかお許しを。ほら、この通りです」


 アシヤギーンの必死の謝罪。しかし内心は違う。

 はじめは弱かった。そして今何かと会話のようなものをしている。ということは、体の制御を何かに任せているのではないかと思ったのだ。

 その何者かとの交信を止めさせれば、甘く弱いだけのバスターマンの彼女なだけだ。そうすれば簡単だ。音速で彼女を抱えて約束の地まで飛んでしまえば、バスターマンは捕獲される。そうすればヒホリント星人との約束がかなう。


「すいません。つい出来心で。どうかどうかご容赦を……!」


 乞い縋るアシヤギーンに鈴村は情にほだされてしまった。


「分かったよ」

「そうですか。ありがたい!」


 そこにガイドのきゃんが話しかける。


『ちょっと。オリジナル。じゃあオートを切るっていうの?』

「うん。だって反省してるし」


『オートから、手動に切り替えると、次にオートにするまで時間がかかるよ?』

「うん。大丈夫でしょ。じゃ私は英太さんのところに帰るね。心配だし」


『はいはい。じゃ主導権はそちらに渡すね』

「はーい。ありがとー!」


 アシヤギーンには分からない二人の会話が終わった。鈴村バスターマンは、アシヤギーンのほうを向く。


「じゃ、これ以上悪人にはならないでね」


 そういって鈴村バスターマンは大空へと飛ぶ。しかしもたついている。空中で犬かきのような格好だ。

 アシヤギーンはしめたと思った。これは先ほどの弱々しいバスターマンだと。


 アシヤギーンは力を込めて大地を蹴り、鈴村バスターマンの腰にタックルする。


「ちょ……!」


 鈴村の言葉がむなしく空へと置いてきぼり。鈴村の体はヒホリント星人の捕縛網へと連れられてゆく。


「わああああ! なに? なに? なに?」


 アシヤギーンは勝利を確信して笑う。


「ふっふっふ。もうすぐヒホリント星人が網を張っている場所にたどり着く。そこにいけばお前は力を出しようがない。そしたら俺はヒホリント星人と約束を果たしたことになるのだ!」

『あっそう』


 ピタリ。約束の地まであと数メートルの位置。しかしアシヤギーンが押せども引けどもバスターマンを約束の地まで押し込めない。


「な? どうなってる?」

『残念。現在のバスターマンはオートモードの真っ最中。あんたの出方を見たかったから一時的に手動に切り替えただけ』


 そういって、バスターマンはアシヤギーンのブレスレットへと手を伸ばす。すると、バスターマンの手の中にブレスレットだけが残り、変身を解かれた芦屋は地上へと落下する。

 だがそれほど高い位置ではなかったので、死にはしなかった。


『なるほど。ブレスレットにハッキングしてデータを取り込んでみて分かった。これがヒホリント星人の捕縛網ね』


 鈴村の目にも、延々と目の前に赤いエリアが広がっている。


『まあいいわ。そこに飛び込まなきゃ捕まることはないもんね。さあオリジナル。帰るわよ』

「え? でもあの人は?」


『さあ? 目が覚めたら勝手に帰るでしょ』


 鈴村きゃんはオートモードのバスターマンに引っ張られて病院へと向かっていった。

※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。

※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。

※感想を書かれる際には、政権に対する批判などはご遠慮願います。

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