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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
総理と式神篇
194/202

第194話 迷いない変身

 芦屋はすぐに行動しなくてはならない。ブレスレットの変身ボタンを押すと、芦屋の身体に黒いモヤのようなものが立ち込めたかと思うと、芦屋はブラウンとブラックを基調としたパワースーツを身に纏っていた。

 それは不格好で、スーパーヒーローというよりは怪人の様相だった。


「な、なんだこれは!?」

『装いを指定されなかったので、そのブレスレットによって変身するもののビジュアルは、そのかたのイメージに沿うようにしました』


「おいおいこれでは怪人だろ」

『wwwwww』


「まあいい。性能は身体能力の一万倍。空を飛ぶ速度は音速だったな。目標はどうやって分かる? もう私に出せるものはないぞ?」

『モニターに写るものにランドマークが出ます。そこを目指して飛んでください』


「なるほどな。ところで私はバスターマンではない。芦屋でもおかしい。なんと名乗ればいい?」

『アシヤギーンwww』


 それは芦屋議員をもじったネーミング。しかし芦屋はそれを気に入ったようで二度頭を縦に振った。


「おお。なかなかいいな。アシヤギーン。それにしよう。では行ってくる」


 そう言って小屋を出て大地を蹴る。アシヤギーンは大空へと舞い上がる。

 しかし音速の飛行速度である。大空で蹴躓(けつまず)いた形になりグルグルと回転。

 そうかと思うと、今度は山へと真っ逆さま。どうやら方向を変えようと力を入れたために、そちらに行ってしまったようである。力の入れどころが分からない。

 アシヤギーンは墜落し、木々の中にガサガサと音を立てて突っ込み地面に激突。


 しかし──。

 痛くも痒くもない。木々の中は筆で撫でられたよう。地面への衝突はまるで発泡スチロールに当たったような感触だった。


「は、はは! これは凄いぞ! まるで無敵だ!」


 アシヤギーンはその辺にある木々に拳を叩き込むと根こそぎ木が吹っ飛んで行く。信じられないほどのパワーだ。面白がって何本もの木を吹っ飛ばした。


「ふふふ。こりゃすごい。だが時間がない。女を連れてきてバスターマンをおびき寄せなくてはな。ぬ? しかしバスターマンをどうやっておびき寄せる? まあその女が連絡先を知っているだろう。やはり女を連れてこよう」


 アシヤギーンは、空にゆっくりと飛んでしばらく飛行訓練をする。車や飛行機などの乗り物とは違い、自分自身の体の操縦だ。しばらくすると慣れてきた。


「うむ。これで行けるぞ。さて女の居どころは、と」


 アシヤギーンの目の前はゴーグルのようになっている。三百六十度ぐるりと見渡すと、東京のほうに矢印が見える。


「なるほど。これは分かりやすい。さて音速のスピード。試させて貰おう」


 アシヤギーンは風を切りながら矢印の元へと飛んだ。





 鈴村きゃんは自分が狙われていることを知らない。その時は母親が付き添っていた。

 母親もすでに長井英太と会っており、交際相手と認めていた。何しろ、回復したとはいえ、鈴村きゃんは不治の病だ。死ぬまで娘の思い通りにしてやろうと思い、定職に就いていないであろう英太でもそれを許したのだ。

 鈴村の母親は、趣味の読書を部屋の中でしていたが、鈴村が楽しそうに声を上げるのに気付いた。どうやらスマホを見ているようだった。母親はだいたい分かったが、呆れながら娘の鈴村に聞いた。


「どうしたの? ふっちゃん?」

「今から英太さんが来てくれるって!」


「あっそ。ハイハイ。じゃあお母さんは美容室にでも行こうかな~?」

「うん。行ってらっしゃ~い」


 母親は、元気になったらこんなもんかと思いつつ、すぐに病状が悪化するわけでもないと医者に言われているので、娘の病室から出ていった。

 しばらくすると、英太が入り口から現れる。


「や。ふっちゃん。調子はどうだい?」

「うん。大丈夫。英太さん来るし、寝てられないよ」


「休息も大事だよ」

「うん。さっきまで寝てたもん」


 二人は楽しげに談笑を始めた。大変仲が良い。英太も鈴村きゃんも今まで異性と付き合ったことがないが、まるで今まで一緒にいれなかった分、一緒にいたいのだ。

 英太は彼女の寝ている横に並んで、頬にそっとキスをする。そして照れあっていた。




 その時。病室の壁が破壊され、壁や窓ガラスが飛散する。英太はとっさに鈴村きゃんに覆い被さってそれを守る。


「ふ、ふっちゃん大丈夫?」

「う、うん。な、なにがおきたの?」


 二人は大きく口の空いた病室の壁を見てみると煙の中に人がいる。

 それは茶色と黒の怪人だった。英太は思わず声を漏らす。


「か、怪人? まさか、ヒホリント星人か?」


 鈴村きゃんは震えることしか出来ない。茶色い怪人は、病室の中を見渡して、英太の下になっている鈴村きゃんの姿を見つけた。


「ほほう。その女か。管が付いてるってことは入院中だな。これにバスターマンは惚れてるわけだ」


 英太はそれに叫ぶ。


「だ、誰だお前は!」


 アシヤギーンは叫ぶ英太を嘲笑した。


「なんだ小僧。引っ込んでいよ。私の名はアシヤギーン。バスターマンに恨みがあるものだ。その彼女はバスターマンをおびき寄せる餌だ。貰っていくぞ」


 そういってアシヤギーンは鈴村に繋がっている管を引きちぎった。




 英太は、すぐにでもバスターマンに変身しようと思った。この怪人を討ち果たすにはそれしかない。

 しかしこんな狭い病室で暴れたら鈴村はどうなる。外に出たとしても病院を崩されたら……。


 か弱い鈴村は死んでしまう。英太の選択肢は一つしかなかった。


「え、英太さん?」

「ふっちゃん。なにも心配はいらないよ。これを付けている限り、キミは無敵なんだ」


 鈴村の右手首には英太から外されたバスターマンブレスレットが付けられている。

 英太は躊躇なく変身ボタンを押した。


「変身」


 たちまち鈴村きゃんの体は光に包まれた。

※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。

※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。

※感想を書かれる際には、政権に対する批判などはご遠慮願います。

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