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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
総理と式神篇
193/202

第193話 黒い箱の提案

 迎山の表情が難しい。この鈴村きゃんの無職の彼氏が日本を守るスーパーヒーローのバスターマン。

 軽蔑が尊敬に変わるものの、先ほどの態度からはなかなか変えられない。今まで芸能人を山ほど見てきた迎山でも、目の前のバスターマンにはどうしてよいか分からずにいた。


「あ、あのぅ。バスターマン。鈴村はあの通りの性格で突っ走ってしまうので心配なのです。彼女を大切にしてくださいますか?」

「あ、はい。彼女は病気ですし、女性を守るのは当然というか……」


 迎山の想像していたカッコいいヒーローとは違ってしどろもどろ。思わず吹き出してしまった。


「しかし鈴村の恋の相手があなたとは。気になる人がいるとは聞いていたのですが……。惹かれ合うってのはこういうのですかね? スーパーヒーローだとそう言うのも分かってしまうものなのですかね?」

「いえ、そのう。先日、巨大ロボットとの戦闘中に、彼女の病室まで吹っ飛んでしまいまして……」


「あー……あの戦い見てました。テレビで小さくですけど、雨のようなレーザー光線を避ける姿。……あれ凄かったです。思わずテレビの前で体が動いてましたよ」

「いえその時、彼女に正体がバレてしまい、後日お見舞いを兼ねて正体を言わないようお願いをしに……」


「あー……そうですよね。スーパーヒーローの正体は秘密ですもん。分かります。もちろん私も秘密にしますよ」


 迎山は尊敬する相手に会えたから興奮してきたのか徐々に声が大きくなり言葉数も多くなる。


 取り敢えず、英太と鈴村きゃんの交際はマネージャー迎山の公認を受けた。迎山も事務所に鈴村きゃんの病状は回復傾向にあり、最後を迎えるにあたり、心の支えとなる交際相手がいることを伝え、事務所側も了承した。





 さて山中にある芦屋の隠れ家である。彼はヒホリント星人の指導者ダーより受けたバスターマン暗殺の命令にどうすることも出来ずにいた。

 黒い箱は絶えず『願い事を言ってください』と表示するものの、これは破滅を呼ぶ箱だと、利用しようとはしない。


 しかしまたまた部屋の中に3D映像のダーの姿である。ダーは現れるなり芦屋を睨み付けている。


『芦屋くん。こちらの戦艦は準備出来つつある。君の状況はどうかね? 報告してくれたまえ』

「いいいいいい……。そんな。状況など、どうにもなりません」


 それはダーはため息をつく。


『芦屋くん。こちらは遊びではない。民族の悲願がかかっているのだよ。君一人の我が儘ではどうにもならない』

「し、しかし、私には力もなく、彼を探すことも出来ません……」


『芦屋くん。死ぬ気でやりたまえ。それが友人を思う心だよ。私ならそうする。君もそうするべきだ』

「そ、その件に関しては何卒、何卒ご容赦を……」


 それでもダーは芦屋を許さなかった。芦屋を指差し宣言する。


『もはや我らも我慢の限界だ。君の国の焦土作戦を行う。全て焼き払って我らが住みやすいように変える。焼き払うのは君とて例外ではない』

「そ、そんな」


『あと五日待とう。結果を出したまえ。五日後、私自ら戦艦を指揮して作戦を決行する』


 期日は切られた。あと五日。それでどうにかなるわけがなかった。


 芦屋は震える。

 日本のためになりたいという志は、全く逆方向に向いてしまい、国家からも反乱者、ヒホリント星人からも裏切り者扱い。

 この日本は五日後には火に焼かれてしまう。どうすればいいかわからない。


 黒い箱が点滅している。そこには文字が流れていた。


『バスターマンから人質をとり、おびき寄せてヒホリント星人へと差し出すのです』

「な、なんだと?」


『バスターマンには恋人がおり、その女を連れ去れば彼は躍起になって探すでしょう』

「そ、それはどうやれば……」


『あなたもバスターマンのように変身し、空から彼女がいる部屋へと侵入するというのはどうでしょう』

「わ、私も変身を?」


『ええ。私に身体の部品をくださればバスターマンのように変身ブレスレットを差し上げましょう』


 芦屋は考えた。それはいいかもしれない。何しろラドキォー星人も、ヒホリント星人もバスターマンには敵わなかった。

 それと同じになればバスターマンにも勝つことが出来るかもしれないし、自身もスーパーヒーローと称えられるかもしれない。


「わ、わかった。それはいい。何を差し出せばいい?」

『そうですね。死なない程度と考えれば、尾てい骨、腎臓の片方、胆嚢、すい臓、肺の片方、足の小指、精巣、体毛の全て。これだけで、かなりの精度のバスターマンとなれますよ』


「よし分かった! バスターマンともなれば今までのことも挽回できるだろうし、空を飛んで他国に逃げれるかもしれない。どこかの国がかくまってくれるかも!?」

『wwwwwww』


「頼む! それでやってくれ!」

『叶えられました』


 黒い箱から一筋の光が芦屋の右手に伸びる。そこには落ち着いた黒いカラーリングのブレスレット。

 そしてすぐさま赤い光が芦屋へと伸びる。その光は全身を照射して消えてしまった。


「い、今ので内臓が消えたのか。痛くも痒くもないが違和感はあるな」

『ブレスレットの光っているボタンを押すと変身。もう一度そのボタンを押すと変身解除。時速は戦闘機並み。攻撃力も防御力も通常の一万倍出ます』


「凄い! ではバスターマンとは互角なのか!?」

『いいえ。バスターマンの百分の一ほどです』


「は?」


 芦屋は固まった。まただ。また黒い箱の後出し。バスターマンと互角でない。そんなもの先ほどのセールストークにはなかった。


「なぜだ! バスターマンと同程度でなければ意味がない!」

『しかし先ほどの提供されたものではそこまでしか叶えられません。腕や足などを頂ければ今の三倍ほど強くして差し上げられますが』


「それでも三倍か! 足や手をなくしてどうしろというのだ!」

『www』


 苦笑のような文字を流す黒い箱に腹が立った。しかしまた黒い箱から文字が流れる。

 そもそもバスターマン、長井英太の初期バスターマンは一万倍のパワーしかなかった。しかしラドキォー星人を凌ぐヒーローとして黒い箱から新たに生まれたバスターマンは、それから百倍の力が加算されていた。簡単に宇宙船を破壊できる力である。


『これはバスターマンの恋人をさらうための力なのですから、別にその程度で構わないでしょう。外国に逃げることも可能ですし』

「う、うむ……」


『それよりも、ヒホリント星人の指導者ダーへと、バスターマンを連れてくるので捕獲せよと連絡をしたらいかがです?』

「な。また無理難題を言われないか?」


『いえいえ。あちらの文化を感じてみてください。こちらは友情を全面に出されて面倒なことを押し付けられている。逆にあちらにも同じようにするのですよ。それがあちらの文化なのですから。強気でいくのです』

「な、なるほど」


『さあ例の通信機器で連絡を』

「分かった。やろう」


 芦屋はダーよりもらった通信機を握ると、それは開いて十センチほどのアクリルの板のようになる。そこにすぐダーは現れた。


『何かね? 芦屋くん。私は君ばかりにかまってはいられないのだ。用があるならすぐにいいたまえ』

「今からバスターマンをおびき寄せようと思います」


『は? うむ。それで?』

「そこで、そちらの文明の力を信じてバスターマンを捕獲して貰いたい。どうです?」


『む。我々に力を貸せと?』

「そうです。私は友情と誠意で自分の力を越えるバスターマンをおびき寄せるのです。そこからはそちらの仕事でしょう?」


 と少しヒホリント星人の真似をして友情の押し付けをすると、ダーは黙って眉をしかめたが笑い出した。


『ははははは。確かにその通りだ。ではこちらは捕獲用の電磁網(でんじもう)の檻を用意しよう。ただし失敗はせんでくれ。明日、ここの上空付近まで連れてきて欲しい。そしたら檻を落として捕獲することができる。よろしく頼む』

「ふ、付近とは?」


『君たちの使う距離の単位で言えば36キロメートルの範囲内であれば網は自動でロックオンし、バスターマンをとらえることが出来るだろう』


 そう言ってダーは芦屋の案を受け入れた。なんとかこれで自分は助かるかもしれないと芦屋は思った。

※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。

※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。

※感想を書かれる際には、政権に対する批判などはご遠慮願います。

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