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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
総理と式神篇
191/202

第191話 真っ赤っか

 バスターマンこと長井英太に会えた鈴村きゃんは、英太に微笑みかけ、自分の病室に案内する。英太の心臓は止まりそうだった。

 二人きりでエレベーターに乗り、人の少ない通路を並んで歩くが、会話なく気まずい。


 鈴村きゃんは病室に英太を入れると、英太は言葉なく真っ赤な顔のまま病室をただ見回すばかり。そこで積極的な鈴村が声をかける。


「お見舞いに来てくれたのね、バスターマン! 私、感激です!」

「わわわ、きゃんちゃんゴメン。正体は……」


「あ、ゴメンなさい。でも名前、知らなくて──」

「あ! いや。うん。こちらこそ。ゴメン……なさい」


 病室の中央で、照れ会う二人。


「それで、あの……」

「え? あ! ハイ!」


「お名前は?」

「あ、えと。長井英太です」


「へー。英太さん。カッコいいお名前ですね」


 と言われ、完全に舞い上がる英太。カッコいいと言われた余韻にだらしなく顔を緩めたまま。

 そして気付いたように、お見舞いに用意した花束を差し出した。


「あの! これ! 花っす……」

「わー。キレイ。いい匂い。ありがとう英太さん」


 鈴村きゃんは、花束の香りを楽しんだ後に、ベッドに向かって腰を下ろす。


「ゴメンなさい。療養中で。どうかこちらに座ってください」

「あ、はい。失礼します!」


 そう言って大きな体をパイプイスに沈める。鈴村きゃんは、自分を前にして何も話せず目を大きく見開いている英太に更に惹かれる。

 この気持ちは間違いがないという思いだった。対する英太も、鈴村きゃんを完全に好きになってしまっている。


「あの!」

「あの!」


「あ、すいません」

「ゴメンなさい。どうぞ」


「えーと」

「えっとお」


 完全に話すタイミングを同じくしてしまう二人。恥ずかしくて照れあった。


「よかったら英太さんのお話を聞きたいわ」

「え? いいのかな? きゃんちゃんは俺みたいのが来て迷惑じゃない?」


「私、ふくって名前なんです。母親にはふっちゃんって言われてます」

「へー。ふっちゃんかあ」


「だから、そっちの名前で呼んで貰えると嬉しいです。入院先も内緒なので」

「あ、そうか。ゴメン! きゃ……ふっちゃん」


「ふふ。私たちって」

「え?」


「似てますね」

「え? ど、どこが?」


「二人とも人になかなか本名いえないとことか?」

「あ。そうか」


「だから英太さんは、私に会いに来るときは伊藤ふくに会いに来たって言ってください」

「へー……。伊藤ふくか……。へー」


 二人は照れたまま。また互いを見て視線を反らすという感じである。そこでまた鈴村きゃんが話し出す。


「平和のために戦うなんてすごいですね」

「あ! ハイ……」


「英太さんは私のファンだったんですか?」

「あ。ウン! そう……」


「へー。いつから?」

「それはそのう……」


「どうやって変身するんですか?」

「それはこのブレスレットを……」


 と言いかけて話を止める。そして英太は言う。


「ゴメン。ふっちゃん。俺、本当はふっちゃんのことよく知らないんだ。ずっとヒーローになるための修行ばっかりで」

「へー……。じゃなんで、会ったときに私の名前を?」


「それはね──」


 英太はブレスレットのガイドボタンを押す。すると鈴村きゃんのほうを向いてガイドのきゃんが現れた。


『はーい! いつも元気にワンワンワン。あなたのハートに首輪をつけちゃう! コントロールセンターの鈴村きゃんでーす!』


 とにこやかに鈴村きゃん本人に手を振った。鈴村きゃんは目を丸くする。


「え? ナニコレ?」

『はあーい。私のオリジナル。と言っても私はあなたが18歳の時のデータで作られたから、現在のあなたではないけどね。でもあなたの記憶や潜在的な気持ちは分かるよ。あなたバスターマンに運命を感じたわよね?』


「ちょ、ちょっと!」

『んーん。否定してもダメ。私はあなた本人なのよ。分かるもの。だからバスターマンに私のオリジナルに会ったら告白してみなさいと言ったのよ』


 そこで英太は慌ててガイドのきゃんを止めた。


「ちょっときゃんちゃん!」

『なによバスターマン。好きなんでしょう? 自分で言えないみたいだから、私が協力してやったのに』


「そんな直球はやめてくれよ!」

『なによじれったい。ハイハイ。分かりました。じゃあ自分でやってみれば?』


 英太はガイドボタンを押して、ガイドのきゃんの姿を消す。そして鈴村きゃんに愛想笑いだった。


「ゴメン……。ふっちゃん。俺がこのブレスレットを手に入れてから、ガイドの彼女とはずっと一緒で……。孤独な俺の話し相手になってくれてたんだ」


 しかし、鈴村きゃんは吹き出した。笑いが止まらず、ベッドの上で腹を抱えている。これでは病にさわるのではと英太が思っていると、だんだんと笑いが治まってきて、涙を拭きながら英太のほうを向いた。


「なーんだ。そっかそっかー」

「ふっちゃん?」


「いやほんと。私、そっくりだし、さっきのやり取りとか。超面白い。私も端から見るとあんな感じだもんね。ウフ!」

「へー……。そうなんだ……。でも驚かないね」


「うん。最近は驚くことばっかりだもん。このくらいで驚いてられないよ」

「そうなの?」


「そう。私のそっくりさんが私を治療に来てくれるし、バスターマンというスーパーヒーローがいるし、その人は私を訪ねてきて、好きだって言ってくれるし」

「いや、まだ言ってないよ!」


「あ。言わないんですか?」

「いや、そのう。好きです」


「私も好きです」

「あ。ありがとう……ございます」


「これからもっと二人を知っていけたらなと思います」

「そ、それはもう」


「じゃあまた会いに来てください」

「は、はい」


 スーパーヒーロー、バスターマンもオリジナルの鈴村きゃんには形無しだった。

 それから二人はほとんど毎日お見舞いデートをする仲になっていった。

※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。

※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。

※感想を書かれる際には、政権に対する批判などはご遠慮願います。

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