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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
総理と式神篇
190/202

第190話 両思い

 迎山は、頭を抱えた。鈴村きゃんの性格だと自分勝手に突っ走ってしまう傾向にあるから、恋の相手を間違ってはいけない。変なものに傾倒してしまうかも知れない。

 療養中というのも気の毒なことなのに、スキャンダルになったら相当叩かれる。アイドルなのだから致命傷となる。メンバーにも迷惑になるという思いだった。

 迎山は破れかぶれで問い詰める。


「誰なんだソイツは」

「えと、あのう」


「言えないような相手なのか!?」

「いや私だけが一方的に思ってるっていうか~……」


「大丈夫。怒らないから言ってみなさい!」

「いやもう、めっちゃ怒ってるし!」


 迎山に問い詰められ、母親も興味があるのかその様子をじっと見ている。鈴村きゃんは真っ赤になって答えた。


「えと。あのー……。バスターマン。きゃ!」


 そう言って毛布を被ってしまった。

 迎山も母親も、しばらく沈黙のあとに、これなら大丈夫だと笑顔になった。


 それはヒーローに憧れる子供。正体不明のヒーローを思ったところで、あちらはこちらの気持ちになど気付かない。連絡の手段などない。接触の危険性も今のところはないと、胸を撫で下ろしたのだ。


 迎山は深くため息をついて、荷物を持って立ち上がった。


「あれ? ヤマさん行くの?」

「行くよ。デートもしなくちゃな」


「なによ! こっちはダメとか言って自分ばっかり!」

「いやいや。お前を狙ってるファンは多い。危険なヤツが安全の皮を被って甘い言葉で近付いて来ても、お前はそれに気付かないから心配するんだ」


「なによ。それくらい分かるよ!」

「はいはいどうだか。まあ好きな人がスーパーヒーローで安心したけどな」


「ふーんだ。バスターマンだったらいいわけ?」

「まあな。日本のために無償で危険と立ち向かって働いてくれるボランティア精神の強い人だからな。俺だって注目してるファンだ。尊敬してるよ」


「え? そうなんだ。ふーん……」

「とりあえずこの部屋は面会謝絶だし、記者もファンだってここに鈴村がいることは知らん。だけどなぜか特定して調べあげるヤツはいるからな。現に、院内には花束持ってうろうろしてるヤツだっているんだ。だからあまり廊下には出るなよ?」


「え。そうなの? どんな人?」

「ああ。見た目からして危ないヤツだったよ。この季節なのに薄手のTシャツ。そんでジーンズ。短髪でガタイがよくて身長190センチくらいあったかな? 大きな花束だけど小さく見えた」


「え? それって……」

「ん? 知ってるヤツか?」


「い、いや」

「そうか。じゃあな」


 そう言って迎山は出ていく。それに鈴村きゃんの母親は、見送りと買い物を兼ねて出ていった。


 鈴村きゃんの頭の中に、先程の迎山の言葉。それは自分が見たバスターマンの正体の人そのままだったのだ。


 二人が出た後、鈴村きゃんは着替えをしてマスクと眼鏡をして変装し、こっそりと病室をでてその人物を探しに行った。

 病状に影響しないようにと、自分の階と別の階のエレベーターホールの確認。それだけのつもりだった。

 すると、自分の階の二つ上の階のエレベーターホールに案内図を見ながらこちらに背中を向け小さくなっているその男がいた。


 鈴村きゃんは、この人だと思いそっと横に並んで顔を見る。ワンテンポ遅れて、その人物も彼女に視線を落として驚いた。だが鈴村きゃんは口元に指を立てて声をたてないようにゼスチャーした。


 それはまさにバスターマン、長井英太であった。





 バスターマンこと長井英太も、鈴村きゃんと出会い、完全に恋に堕ちていた。

 しかし向こうはトップアイドルで、自分はヒーローとしての修行ばっかりだったので、彼女の歌すら知らない。

 だが、自身のバスターマンへと変身するブレスレットのガイドは鈴村きゃんなのだ。


 これは元々、黒い箱が変身ブレスレットを作った際にガイド役を、鈴村きゃんのデータから作り上げたためだ。

 それは成田きゃんを作る際に取り込んでいた個人ファイル。内部の既存データ。であるからガイドの鈴村きゃんは、鈴村きゃん本人の知識、性格なのである。


 そのガイドの鈴村きゃんは言った。バスターマンのことが好きだと。オリジナルに会ったら告白してみろと。長井英太は、そのことをうっすらと覚えていた。

 それが本人に会って、思いが弾けたのだ。


 だからこそ、病院に来た。

 花束を持って、お見舞いという体である。だが受付で断られた。まず「鈴村きゃん」での病室はない。身内や友人でなくてはならない。ファンなどではダメなのだ。


 しかし、ブレスレットの力を使って入院病棟に入り込むことが出来た。彼のブレスレットには姿を消し壁抜けができる力があるのだ。

 以前に突っ込んだ病室を目指したものの、そこは修理中。それはそうだろう。バスターマンが飛び込んだ際に窓枠も壁も破壊してしまったのだから。


 長井英太は、あっという間に手詰まりに陥った。それぞれの病室を覗いて見るものの、開いている病室はカーテンを閉めて見えなくしているし、ネームプレートを見ても、鈴村きゃんの文字はない。

 途方に暮れて案内板を見ていたというわけだ。

※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。

※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。

※感想を書かれる際には、政権に対する批判などはご遠慮願います。

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