第188話 運命の出会い
やはり宇宙を移動してくるだけのことはある。ヒホリント星人の科学技術力は地球よりも遥かに勝っている。
シヤ将軍率いる戦艦が合体したロボットは空母の役も担っているようで、肩から次々と戦闘機を発進してくる。
共に撹乱部隊として参加している自衛隊の戦闘機は、次々と撃墜され海へと墜ちていってしまう。
だがバスターマンには戦闘機を助ける余裕がない。バスターマンが相手にする巨大ロボットの攻撃もまた恐ろしく強かったのだ。
巨大ロボットの胴体部分からは途切れることなくバスターマンへと対し、レーザー光線が乱反射されてくる。その砲台は数えきれない。おそらく千門以上ある。それに当たらないよう必死である。
しかし、巨大ロボットの両腕は、バスターマンと自衛隊の戦闘機を一気に凪払わんと伸ばされて横回転してくるのだ。
レーザー光線をかわしながらもバスターマンは巨大ロボットへと近付く。しかしどこを狙ってよいか分からないでいると、自衛隊の高木二等空佐からの通信だった。
『バスターマン! ロボットの首、両肩、足の付け根、腹部の三点に赤い円盤の連結部分があることにお気付きでしょうか!?』
バスターマンが見ると、確かにそこには赤い大きな円盤部分があった。高木二等空佐は、この猛攻の間も必死に弱点を探していたのだと尊敬した。
『そこを攻撃することに希望があるかもしれません! 我ら残った七機も翻弄します! 命を懸けて我が国を守りましょう!』
と伝えると七機は編隊を組んでバスターマンの前に出る。ヒホリント星人の戦闘機は何かあると思ったのか、上空から編隊を組んで急降下するものの、戦闘機はロボットに向かっているのでヒホリント星人の戦闘機からの攻撃はロボットに当たってしまうことになる。
現に自衛隊の戦闘機を狙ったレーザー光線が巨大ロボットへと当たり、そこから煙が上がった。
慌てて敵方の戦闘機は旋回して舞い上がった。
「すげぇ! さすが戦闘慣れしてる! 俺も行くぜ!」
バスターマンは手薄であろう、左足の付け根にある赤い円盤の連結部分へと飛ぶ。
その時、巨大ロボットの太もも部分が蜂の巣のように穴だらけになる。そこにはミサイルが用意されており、バスターマンを狙って数弾発射される。
バスターマンはそれを叩き落としたが、一発市街地へと向かってしまうことに気付き、前へと回った。
途端、ミサイルは爆発しバスターマンは吹っ飛ばされてしまった。
それは恐ろしいほどの破壊力であったろう。都市に落ちれば壊滅してしまう。
さすがのバスターマンも空中で気絶したようになってしまい、街へと吹き飛ばされてゆく。
気づいた時には、目の前にビルが建っており、ぶち当たってスピードダウン。さらにミラービルを貫通して、次のビルのガラスを突き破ってその部屋の中に倒れ込む。
その時だった。衝撃によりバスターマンの腕からブレスレットが外れ、その部屋に転がり、バスターマンは長井英太の姿となってしまった。
「う、うぐ……」
彼は生身の体となって倒れている。幸いにも怪我はなかったが、自分が変身から解かれていることに気付き辺りを見回すと、部屋の隅にブレスレットを見つけたが、そこにいる人に驚いた。
「きゃ、きゃんちゃん!?」
そこは鈴村きゃんの入院する病室だった。きゃんは目を丸くして長井英太を見つめているがそれどころじゃない。
長井英太は愛想笑いをしながら慌ててブレスレットを掴んで変身ボタンを押す。あまりのことに変身ポーズも忘れていた。
そして破られた窓へと向かい、もう一度戦いの場に戻ろうとするその背中にきゃんからの声だった。
「あなたはバスターマン! 今、テレビで見ていたよ! 頑張って!!」
「は、はい!! 頑張ります!!」
バスターマンはなぜか敬語だった。そして空中へと舞い上がる。
実は先程の戦闘は、望遠レンズにて小さくだがテレビで放送されていたのだ。
それを見ていた。自分のガイドの元になった鈴村きゃんが見ていた。そして生声で応援してくれた。
バスターマンの中に溢れる興奮。テンションは一気に上がった。
その時、巨大ロボットと自衛隊の戦闘機の争いはテレビで放映されていた。バスターマンが戦場から消え、日本国民から悲痛な声が漏れる中、またしても戦闘機が二機撃墜されてしまった。
「あーと! あれはなんだ!?」
それは戦闘を実況するアナウンサーの声。テレビカメラが市街から高速で近付くものをとらえた。
それはヒホリント星人の巨大ロボットの腹部にある中央の赤い連結部分を貫通した。
やはりバスターマンだ。しかし彼はそれだけで攻撃を緩めようとはしない。
巨大ロボットの手がバスターマンを掴もうと高速で移動してきたが、それを蹴りあげると、巨大ロボット自体が大きく揺らめく。
ヒホリント星人側の戦闘機が、これは母船を守らねばならないと思ったのか、バスターマンの前に編隊を組んだが、バスターマンは回転してそれらを蹴散らし、大部分を海へ落としてしまった。
バスターマンは休む間もなく、攻撃を緩めない。右肩の連結部に飛び込み、その突き抜けた返す刀で首の連結部を貫通する。
その頃には巨大ロボットは大きくバランスを崩して、バラバラと機体を支える部品が海に落下していく。
巨大ロボットの無事な左側の部分は勝手に連結を離したようで、一つの戦艦になって逃げ腰の様子だ。大半のヒホリント星人の戦闘機はそこに帰艦して行く。
バスターマンの耳に高木二等空佐の通信が入った。
『練度がなっちゃいませんね。圧倒的な戦力を持ちながら、あれでは我らの勝利は目前ですよ。バスターマン、分離した戦艦を攻撃してはなりません。逃げる準備をしているところを攻撃すれば生きるために反撃してきますからね。どうにもならない、巨大ロボットのほうを攻撃してください!』
「了解しました!」
バスターマンと自衛隊の戦闘機は、もはや薄くなったレーザー光線を掻い潜って巨大ロボットへと攻撃する。
巨大ロボットは爆発炎上し、海へと墜ちて行く。巨大ロボットからは命からがら脱出用の小型艦が飛び出し、一目散に空へと逃げ帰っていった。
逃げ腰だった戦艦はそれよりも先に空へと帰ったようだった。
※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。
※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。
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