第187話 空中戦
バスターマンこと長井英太は、安倍総理より預けられた寄付金により仕事を辞め、バスターマン活動に専念すべく、郊外の人気の無い一軒家に移り住んでトレーニングをしていた。
間取りは一人で住むには少し多めだが、変身して飛び立っても余り人に見られることはない立地だ。
そこをリフォームしてトレーニングに必要な機材などを並べ、日々の丹念に専念した。
そして先日の自分の活躍に破顔して、一人ニヤニヤと笑っていた。
すると長井英太の腕に輝く変身ブレスレットが点滅する。英太はその光っているボタンを押した。
するとそこに、鈴村きゃんの胸から上の映像が現れた話し出す。彼女はブレスレット内にあるコンピュータに作り出されたガイドなのだ。ガイドだが、孤独な英太の話し相手にもなっていた。
『まーたニヤニヤしちゃって』
「うふ。そういうなよ、きゃんちゃん」
『宇宙船は去っただけで、まだ真の脅威は去ってないんだよ?』
「うん。そうなんだよな~」
『私の予想だと、この前の宇宙船はヒホリント星人の戦艦の一つで、まだまだ母船は宇宙にいるんだと思う』
「そ、そうなの?」
『そうだよ。しかも逃げたから、また攻めてくるのも近いと思う。戦艦も修理すれば使えるかも知れないし』
「ウソだろ? ヤバ!」
その時だ。英太のスマホが着信を知らせる。見てみると安倍総理大臣の文字。
英太は急いでそれを取る。顔は真剣そのものだ。
「はい。バスターマンです」
『あ。バスターマンかね。総理の安倍です』
「総理。なにかありましたか?」
『その通りだ。防衛省から東京上空に宇宙船が三機。前回と同じ大きさで形状も同じだ。ヒホリント星人に間違いない。航空自衛隊が警告をしたが退去の姿勢がない。君は早速、宇宙船を迎撃して欲しい』
「了解しました!」
英太は、スマホを切ってそこに置く。そして変身ポーズを取ってブレスレットのボタンを押した。
「変身!!」
たちまち英太は光りに包まれ、輝くスーパーヒーロー、バスターマンへと姿を変える。
バスターマンは、全身を使っていつもの変身ポーズを取った。
「神が裁けぬ悪を倒す! バスターマン参上!」
決まった。バスターマンの思い描く全てが決まった。当然ガイドのきゃんは突っ込む。
『危急の時に意味のないことしないでよ。さっさと行きなさい!』
「な、なんだよ。意味はあるよ……」
バスターマンは、小さく抵抗してから大空へと飛び上がる。そしてヒホリント星人の戦艦へと急いだ。
そこらじゅうの町から、低音のサイレンが鳴り響いて避難を呼び掛けている。小学生たちが紅白帽子をかぶって、近くの地下街に集団で避難する姿が見えた。
おそらく日本中が同じく、地下か建物の中に避難しているのであろう。
バスターマンはこれを守らなくてはと強く思い、バスターアイに表示される矢印の位置へと急いだ。
そこにはすでに自衛隊の戦闘機が十数機あったが、ヒホリント星人の戦艦は、バスターマンを認めると空中に3D映像を出現させた。
それはヒホリント星人の指導者ダーではない。軍服に身を包んだいかつい軍人のような様相だった。
『貴様がバスターマンとかいうやつか。私はシヤ将軍である。先の戦いで友人のクーカ将軍は罷免された。私はその仇を討つために志願したのだ。まずは貴様を殺し、地球は我々が貰う』
そう言ってシヤ将軍は一方的に通信を遮断する。そして戦艦は変形して、手足のついたがたいの良い巨大なロボットへと変形した。
バスターマンは驚いたが、巨大ロボットの動きは的確にバスターマンをとらえる。
大きな拳でバスターマンを殴り付ける。しかしバスターマンはそれを飛んでかわす。だが、そこをレーザー光線が狙い撃ちしてくる。バスターマンはそれを交い潜って避けたが、近付いて近接戦闘に持ち込むことが出来ない。
バスターマンの攻撃範囲は狭い。パワーは巨大ロボットを凌駕していても近付かないとなんにもならないのだ。
そこにバスターイヤーは自衛隊からの通信をとらえた。
『バスターマン、バスターマン。応答せよ』
バスターマンは、変身ブレスレットに向かって話す。こうすることによって特定の通信を送れることは前もってガイドのきゃんに聞いていたのだ。
「こちらバスターマン。どうぞ」
『ああバスターマン。私はこの隊を指揮する高木二等空佐です。どうぞ高木とお呼びください』
「はい。高木さん」
『目標はバスターマンを目的としているようですので、なるべく市街地での戦いを避け、海上で迎え撃ちましょう。我々は目標を撹乱いたします』
「了解。では海へ向かいます!」
バスターマンは自衛隊の助言を受け入れ、海へと飛ぶ。
ヒホリント星人のシヤ将軍の操る巨大ロボットは、バスターマンを見失わないように追いかけながら、激しく拡散光線攻撃を仕掛けてくる。四方八方に伸びるもので、高熱である。分厚く、照射時間が長い。避けることもままならなかったが、バスターマンや練度の高い自衛隊はそれをかわしながら近くまで行って、また離れるといった牽制をした。
どうやらシヤ将軍の艦隊はロボット化するとスピードが落ちるようで、一度連結を切り離し戦艦の形に戻った。
その状態からバスターマンへと向かい、レーザー光線を放ってくる。ロボット化の時とは違い、細いが物凄い熱線で当たれば相当のダメージがあるだろう。
それを乱発射である。自衛隊の戦闘機もさるもの、それをかわしつつ海へと挑発するように誘導する。
やがて海上にたどり着いてバスターマンと自衛隊の戦闘機はそこで迎え撃つことにした。
ヒホリント星人のシヤ将軍率いる戦艦はまたもやロボット化である。肩の部分からあちら側の戦闘機と思われるものが百機ほど出撃し、自衛隊の戦闘機より遥か上空に舞い上がり、制空権を取ってしまった。
こうなると自衛隊の戦闘機はレーザー光線の雨を避けるだけしか出来ない。何しろ、上空に向かって攻撃出来ないのだから。
一機、また一機と自衛隊の戦闘機が海へと墜ちる中、バスターマンはシヤ将軍の巨大ロボットと戦闘することになったのだ。
※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。
※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。
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