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ク ロ い ハ コ  作者: 家紋 武範
総理と瓦礫篇
108/202

第108話 秘儀

 安倍(あべの)総理は寝室に入り、寝巻きに着替えてベッドに座ると、チェストの上にある黒い箱を取って話し掛ける。


「まったく。一体何人の血を吸ってきたのかね?」


『wwwwwwww』


「悪いヤツに渡ったら大変だと思うが、悪いヤツほど自滅が早いんだろうなぁ──」


『願い事を言って下さい』


「そう慌てるな」


 安倍(あべの)総理は箱をチェストの上に戻し、ベッドに入り込んで眠った。明日の戦いを想像しながら──。






 瓦礫撤去は相当な時間と、税金を消費する。しかも一年や二年ではない。数年かかる。

 それと同時に、破損した道路、用水路、ライフラインの復旧もしなくてはならない。あのラドキォー星人は日本を半身不随にするほど叩きのめしたのだ。


 永田町周辺の瓦礫を、ヒホリント星人に祈って撤去してくれた……という芦屋議員の国民からの期待は大きく膨らんでいた。逆に内閣の支持率は低下。ラドキォー星人襲来前は50パーセント弱だった内閣支持率は今では20パーセント前半となっていた。


「支持率なぞ関係ないよ。それに新聞社によってパーセンテージが違う。参計新聞なら30パーセント弱だ」


 安倍(あべの)総理はうなだれる大臣たちに激励した。

 芦屋に何ができるものか。という思い。

 実際に瓦礫を消したのは自分が黒い箱に願ったからだ。ということは芦屋のハッタリ。それを信じてしまうものも信じてしまうものだと、安倍(あべの)総理は腹の中で思っていた。


 しかし、野党最大である皆主党(かいしゅとう)は二つに分裂し、片方は芦屋の旗の下に合流。芦屋の政党は34議席となり、また小さな党であるが、2つの政党が共闘を決めた。これで43議席。

 芦屋の思い通りになる議席が40を越えたのだ。

 しかしそれでも安倍(あべの)総理は余裕気だった。

 バスターマンはテレビをみながらハラハラしていた。


「総理は大丈夫なのだろうか……?」


 変身ブレスレットのガイドボタンが点滅するので、それを押すと、きゃんが眉毛を吊り上げて姿を現した。


『心配することなんてないよ。政治なんて誰がやっても一緒。バスターマンは悪を倒すことだけ考えてればいいの!』

「いや、でもしかし──」


 きゃんもテレビに映る安倍(あべの)総理を見つめた。


『大丈夫よ。この人は相当なタヌキだから』

「タヌキ?」


『人を化かすのが得意な人ってことだよ。バスターマンも騙されないようにね』

「う、うん。なぁ。きゃんちゃんも政治には詳しいのか?」


『あんまり──知らない』

「知らないんかい。じゃあ自分の感性で総理を信じていいんだよな?」


『──どうだろ?』


 きゃんも分からないなら自分を信じるしかない。人との戦いには使わないと言ってくれた安倍(あべの)総理。自分の目には国のために働く強い人に見えた。あんな風になりたいと英太は憧れを感じていたのだった。






 国会議事堂の廊下で安倍(あべの)総理とたくさんの議員を引き連れた芦屋議員がすれ違う。中には安倍(あべの)総理を裏切ったものもいたが、彼は芦屋の権勢をかさにきて、安倍(あべの)総理の前で胸を張った。

 芦屋はすれ違いざま勝ったように安倍(あべの)総理に言い捨てる。


「必ず政府の陰謀を暴いてみせます」

「例えば?」


 安倍(あべの)総理が瞬時に言い返すので、芦屋は立ち止まり、安倍(あべの)総理の背中に叫ぶ。


「利権を貪ってるとか、自衛隊を軍隊化して他国に攻め入るとか、兵器のための人体実験しているとかですよ! 宇宙人の科学力を利用してるんでしょう?」


 その言葉を受けて安倍(あべの)総理も足を止めて振り返る。

 挑発に乗ったら負けだ。芦屋はやすやすと挑発に乗る。野党だからそれもいいかも知れない。

 だが政権を持つものはそんなことをしていられない。安倍(あべの)総理は苦笑してまた正面をむき直した。


「そうですか」


 そういって歩き出す。肩透かしを食らわせる安倍(あべの)総理に腹が立ってさらに安倍(あべの)総理へと叫ぶ。


「私が政権を取った暁には、その内容も引き継がれるのでしょう!? あなたたちの一党独裁の秘密を暴いてみせます!」


 秘密。陰謀。

 そんなものがあるなら日本中の瓦礫を、簡単に撤去できる。馬鹿なことをいうものが人気があるなどどうかしてると安倍(あべの)総理はそのまま歩みを進めた。


「そろそろやるか──」


 安倍(あべの)総理は決断を込めた独り言をつぶやいた。







 安倍(あべの)総理は公邸に入り、服を着替えて寝室へと向かう。それは神主が着るような服。なにかの儀式をするような真剣な面持ち。片手には大きな封筒を持っていた。

 寝室のドアを開けると廊下の灯りが寝室へと伸びる。それはチェストの上にある黒い箱を照らしていた。


『願い事を言って下さい』


「そうだな」


 安倍(あべの)総理は一人で寝室に祭壇のようなものを作った。檜の祭壇。その上に榊の枝を白い一輪挿しに挿し、ロウソクを灯す。三方に置かれた塩、米、酒。その中央には桐の箱の上に置かれた黒い箱。まるで神事のよう。

 安倍(あべの)総理の背中には大きなホワイトボード。バックライトがつく仕様になっている。そんな変なものを揃えて、総理は黒い箱へと跪いて祈りを捧げた。


『願い事を言って下さい』


「さすれば、ラドキォー星人によって積み重ねられた日本中の瓦礫を取り除いて下さい。かしこみ、かしこみ、物申す」


『代償を言って下さい』


 安倍(あべの)総理は大きな封筒を開け、中から黒いフィルムのようなものを取り出した。

※ここに登場する内閣総理大臣 安倍清陸は、第90・96・97・98代内閣総理大臣 安倍晋三氏とは一切関係ありません。

※これは娯楽作品です。政権批判や内外政策への提言など一切ありません。

※感想を書かれる際には、現政権に対する批判などはご遠慮願います。

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