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アイ在るセカイ  作者: No.
まず始めに。
1/11

朝、目覚めたのなら。

文フリ短編小説賞用の作品です。

貴方様の痛みが、少しでも和らぎますように。


5/28から、偶数日の午前7時更新予定!

「お姉ちゃん」


小さな、小学生くらいの少女はツインテールの髪を揺らしながら、可愛らしい笑顔で声をかけた。

しかし、その相手、声を掛けられたはずの長髪長身の女の子は、それを気にする仕草も見せずに、包丁を動かし続けている。

聞こえなかったとでも思ったらしく、ツインテールの少女は再び、大きな声で彼女の名前を呼んだ。


「リンゴお姉ちゃん!」

「はぁ……。何、モモ? いま、忙しいんだけど……」


やれやれと面倒くさそうに、"リンゴ"と呼ばれた女子高生は、怒ったような目付きで、ようやく眼前の同居人"モモ"を視界に入れる。

リンゴが反応してくれたことで、モモは嬉しそうに、リビングの方を指差して、問いに答えた。


「テーブルの上は片付けました。他に何か用はありますか?」


モモは、小学生にしては畏まった物言いで、明るく尋ねる。

指された方向を見ると、古いちゃぶ台の上で散らかっていたお菓子の袋やチラシなどは、確かに姿を消してくれていた。

誉めなければと、リンゴはそっと、力加減を間違えないようにゆっくり、モモの頭に手を乗せる。


「ありがとう。あとは盛り付けるだけだから、何もない。テレビでも観て待ってて」

「分かりました!」


嬉々としてリビングの方に踵を返したモモを、リンゴは思い出したように引き留めた。


「あ、ユズは何やってるの?」

「ユズお姉ちゃんですか? さっき起こして、それからずっとトイレに入っていますよ」

「やっぱり……」


額に手を添えて、呆れた様子で首を振る。昨日、遅くまでゲーム機の音が聴こえていたことを思いだし、リンゴはそっと包丁を置いた。

リンゴはモモを置いて、家に一つしかないトイレの前に立ち止まると、扉に耳をつける。中からは、だらしない寝息が聞こえてきた。リンゴは伸びた爪先で、取っ手についた鍵を軽く開けると、扉を全開にして、壁に寄りかかって眠る人物を呼んだ。


「ユズっ! 起きてっ!」

「……ん……ふぁ、リンゴちゃんどうしたの? 私の部屋で」

「早く目を覚まさないと、今後ずっと、ユズの部屋はここだからね!」


ユズは前髪に隠れた目を擦り、自分の居る場所を再確認すると、下ろしていたショーツを定位置に戻す。

そして、ふらふらと立ち上がり、リンゴの吊り上がった目を見て笑う。


「ありがと、リンゴちゃん。起こしてくれて」

「だから、夜更かしするなってーー……」

「ところで、いま何時?」

「今……あっ!」


右手に巻いた腕時計は、時間が迫っていることを示していた。リンゴは急いで、まだ寝惚け眼のユズを連れて、リビングに向かった。


「お箸出して起きました」

「ありがとう。いまサラダと味噌汁出すから」

「ふぁ~眠いぃ~……」

「いま寝ても、もう起こさないからね?」


三人は丸いテーブルを囲み、食事を始める。

果物の名前と、異なる性格。

しかし、彼女達は姉妹ではない。

それぞれに家族と離れた三人は、偶然、ルームメイトとして、ひとつ屋根の下に集まった。


喜、怒、楽。

彼女達には哀がある。

彼女達には、それぞれ家庭の事情があったりします。それはともかくとして、女の子の作るお味噌汁って最高ですよね。作っている姿を後ろから眺めてあげたいです。



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