魔導書と緊急クエスト
俺は、また異世界に行った。
「カイト君……。まさか……」
「お前は転移できねーみたいだな」
俺の一言に、リラが撃沈する。
「……転移しても時間は変わらないのか……」
どうやら転移をしても時間は変わらないらしい。
そのため、時間のズレは起こるが、そこに関してはさほど問題は無いだろう。
「初クエスト、行く?」
「……行ってみるか」
挑戦したクエストとは。
「お前、俺をバカにしてんの?」
ラミィの討伐。10体達成で1万円。
ちなみに通貨は日本と変わらないらしい。
ラミィは、トカゲをでっかくした様なモンスターで、はっきり言うと弱い。
初心者向けにも程がある。
「い、いやー……。私も初心者のころこれでレベル上げたからさ……」
気まずそうにリラが言う。
なぜなら、俺が魔法でその辺にいたラミィを十数匹消し飛ばしたからだ。
「あ、跡形も無いね……」
「ほんと、影も形も無ぇってこの事だな」
勢い余って地形も少し吹き飛ばしている。
「……魔導書欲しいわ」
「そうすればもっといいの挑めるからね」
魔導書とは。
この世界では、ウィザードの魔力を上げるアイテムらしい。
ゲームで言う、パワーアップアイテム的なやつだ。
一応、魔導書を使って魔法を覚える事も可能だが、そこまでアテにならない。
理由として上げられるのは、感覚でしてか書いてない、消費魔力の割に弱いのばっか、非効率的な魔法しか無いの三点である。
「魔導書ゲットー!」
「大金叩いて良いの買ってあげたんだからね?感謝しなよ?」
「はいはいそうですねーwリラ様のお陰でございますーw」
棒読み+ふざけた口調で言う。
「ちょっと何その言い方!……買ってあげなければ良かった」
「へ?俺お前が泣きついて来るから冒険者になったのに、まだそれについて感謝されてなく無い?お前がそんな生意気な事言える立場ですか?」
わざと大きめの声で言うと。
「ちょ、そ、そんな大声で言わなくていいでしょ!?……はぁ、『買ってあげなければ良かった』なんて言ってすいません。それと、冒険者になってくれてありがとうございます」
あ、意外とすぐに折れた。
「試し撃ちしてぇな……」
「勝手にやって来なよ。私一回帰るから」
なんで若干キレてんだお前。
「分かったじゃあ1人でやって来る」
「報酬……やらないからな?」
「うぅ……ひ、酷いよ……報酬……ひっく……頂戴よ……!」
「うっせ!嗚咽漏らしながら言うな!ていうかお前が来なかったのが悪ぃんだろ!?」
「だ、だって緊急来てると思わなかったんだもん……」
緊急クエスト。
それは、高難易度かつ、高い報酬の、数グループで参加するクエストである。
その少し難易度低めのクエストが来ていたから、俺はそれに挑戦した訳である。
1人でも参加できる様だが、火力はパーティ組より劣る。
但し、俺なら話は別だ。
今回参加していたのは俺を含めレベルの低いやつばかりだ。
そのため、持ち前の火力でゴリ押しして大半の報酬ゲットという過程である。
「……わかりました。それはカイト君の好きに使って下さい。私は内職でもやってコツコツ貯めるとします……」
お前不器用だろ。
内職できねぇくせに何言ってんのお前。
ふてくされてるとしてももう少しまともにふてくされろよ。
しょうが無いから、俺はリラの目の前の机に報酬の一部を置いた。
「!?く、くれるの!?」
「一部だけどな。実際来なかったお前が悪ぃんだからな?」
「あ、ありがとうございますっ!!」
なんか感謝された。
やったぜ。
緊急クエストって意外と簡単だった。
低難易度なやつに挑んだだけか。
とにかくやったぜヽ(≧▽≦)ノ
参考にしたのはモン○ンの『狗竜』ですね。名前まで似てる。