俺、異世界で女子と同棲しまーすw
「うぅ……う〜ん?」
リラが目を覚ました。
「良かった。気づいたか」
「うぅ……?一体……どうなったの?」
「あぁ、お前台所でぶっ倒れてたから大家さんのとこ駆け込んで救急車呼んでもらった」
「自分で呼べば良かったんじゃ?」
「この世界の番号知らない」
だってさっき転移したばっかだもんね。
「あ、そっか……。あ、そうだ!料理どうだった!?」
「今聞く事か!?」
勘違いされないように言っておきます。
リラは今、病院のベッドの中です。
「ったく……。お前が倒れるせいで味なんか忘れたよ」
「なんで!」
「そこまで焦ったって意味だよ!」
すかさずツッコむ。
「わ、私なんかのために……!?」
何故か知らんがリラが頬を赤く染めている。
「なんで照れてる」
「照れてない」
「嘘つけ」
「照れてないって」
リラが分かりやすく顔を背ける。
俺はベッドの中に手を突っ込んで……。
「うみゃ!?な、何!?」
「いや別に。ほんとの事言うまでくすぐってやろうかなと」
そう言いながら、リラの身体を擦り始める。
「あ、あはは!や、やめて!やめてください!さ、さっき!あはは!照れてたから!やめてください!」
「やっぱりね!」
「は、はぁ、はぁ……。酷いよぉ……」
リラは栄養失調だったらしく、すぐに退院できた。
「なんで栄養失調になるんだよ」
「あぁ、私、最近パーティ解散してさ、ヤケ食いヤケ飲みしてたら食糧無くなって」
「バカか」
「バカです」
「でしょーね」
「すいません」
それにしても。
「なんで解散したんだよ」
「あぁ、身の程を知らずに『キメラ・ヒュドラ』に挑んだらリーダーが食べられちゃって、リーダーの代わりになる人がいなくて、じゃ解散ってなって」
「お前のパーティはそんなんばっかなのか」
「うん」
「ま、いいや。とりあえず俺も寝るから」
「あ、カイト君冒険者になる気無い!?」
「無い」
「え!?なんで!?」
「んな危ない事したく無い」
「ええー。でも魔法だから前線に出ないと思うよ。どっちかと言ったら私の方が前線に出るし」
「あー、そう?」
「お願い!カイト君が冒険者になってくれなきゃ!私飢え死にしちゃう!」
「はいはい。分かりました。じゃ明日な」
「うん!」
俺は目を閉じた。
目を覚ますと、俺は勉強机の前に座っていた。
目の前の時計は、『9:55』と表示されている。
なんだ?夢だったのか?
いや、あんな長い夢を1分で見られるか!?
さらにあれは夢ではないことを裏付ける物がポケットの中に入っていた。
『虹野海斗』と書かれたステータスカードだった。
俺は、目を閉じ、少し念じてみた。
「ッ!?」
そこは、リラの部屋だった。
俺は全てを理解した。
俺は、現実世界と異世界を行き来できる。
そして、片方の世界で時間を過ごしても、もう片方の世界ではほとんど時間が経っていない、という事だ。
でも、寝ようとして目を閉じた場合は例外で、寝た時間はカットされるらしい。
「あ、起きた!?」
リラが叫ぶ。
うるさい。
と、俺はリラに気づいたことを話した。
「え!?嘘!カイト君って世界行き来できるの?」
「どうやらそうみたいだな……。そういやこの世界だと拠点ないからここ拠点にしていいか?」
「え、ちょ、それまさか『同棲』って奴!?」
「嫌だったら良いけど……」
「ぜひ、お願いします!」
なんでや。
「いや、だって男の子と一緒の部屋に住むなんて初めてなんだもん」
俺もだよ。
「じゃ、冒険者の登録、行こ!」
会員制なんだねぇ……。
無事登録も済み、俺はウィザードになった。
とりあえず魔法を習得し、現実世界に戻る事にした。
「じゃ、ちょい行って来る」
「でも、私にはカイト君が世界行き来したって感覚ないんでしょ?」
「あぁ、そーだな」
「今思ったんだけどさ、手とか繋いで行ったら私も行き来出来ないのかな?」
「んん?確かに。実験してみるか」
俺はリラの手を握り、リラも俺の手を握り返す。
俺は目を閉じた。
俺は俺の部屋にいた。
リラは……、いない。
手のひらにリラの温もりだけが残っている。
「なるほど。俺以外は行き来出来ねーみたいだな」
次の1日、俺は学校でウィザードになったことを、『あいつら』に伝えようと思い、学校に行く事にした。