意外と軽めな異世界転移
「くあーー!!テスト勉強めんどくせぇー!!」
とりあえず俺は発狂する。
高校ってほんとめんどくさいからやだ。
「ヤバい、眠い……。今何時だよ?」
俺は机の上にあるデジタル時計を確認する。
『9:54』と表示されている。
「うぅ……。う」
俺は一瞬目を閉じた。
「いってて……!? ここどこだよ!?」
額が痛み、目を開ける。
そこは、見知らぬ場所だった。
「あれ……?見ない顔だね。君、誰?」
声に振り向くと、そこに15、6歳、つまり、俺と同い年くらいの普通に可愛い感じの女の子が立っていた。
普通じゃないとすれば、背中に剣を背負っている事くらいか。
「ん?俺?」
俺は自分の事だと薄々気づいていたが、他に人がいるかもしれないと辺りを見回す。
「そ、そうだよ!?君以外に誰がいるの!?」
確かに周りには誰もいねぇ。
「あぁ、悪い。俺は虹野海斗。カイトとでも呼んでくれりゃいいよ」
「そう……。カイト君か。やっぱ聞かない名前だなぁ……。あ、私の名前はリラって言うんだ!宜しく!」
「あ、あぁ。宜しく」
手を差し出してきたので、握り返す。
「で、カイト君、どこから来たの?ここの人じゃないでしょう?」
「あぁ。『ここの人』どころか恐らく『この世界の人』ですらねーよ」
「この世界の人じゃない……!?」
まぁ、信じてもらえないだろうな。
俺だって信じられないし。
「そ、それってまさか異世界転移とかそういうやつ!?す、凄い!噂には聞いてたけど……実際に見るのは初めてだよ!」
俺も実際にするのは初めてだよ。
「まぁ、推測の域を超えねぇけどな」
「へぇ〜。じゃ、『ステータス』とか見せて貰える?この世界に来たら貰えるカードがあるんだけど……」
俺は服のポケットというポケットに手を突っ込んで探す。
手応えあり。
「あったぞ。これか?」
「うん!これこれ……。ッ!?何これ運と魔力高過ぎでしょ!」
魔力?
運が良いのは元から知ってるけど……。
魔力?
「魔力?俺魔法使えんの?」
「いや、今は無理だろうけど……。レベル1なのに中級魔法使える程の魔力はあるよ!?」
「マジか」
「あ……でも、知力が……」
「えらく低いんだよね知ってます」
頭悪いのは知ってます。
「ん?何これ、人族?亜人族じゃなくて?」
そう言われ、俺もカードを覗き込む。
確かに『種族』と書かれたところに『人族』と表示されている。
「ん?じゃリラは亜人族なのか?」
「そうだよ?この世界だと、私やカイト君みたいな生き物はみんな亜人族の筈なんだけど……」
日本から来たからか?
いやそれとも純粋に人だからか?
よくわからないが、とりあえずそういうことにしよう。
「……参ったな。異世界に来たは良いが、拠点がねぇ」
俺が思いついた問題を口にすると。
「あ、そっか。そうだよね。じゃ、私の家に泊まってく?」
リラが何事でも無いかのように、そう言って来た。
「マジか……。俺、女子の家入んの生まれて初めてなんだけど」
「そーなの?私は男子部屋に入れる事には特に抵抗無いけど」
リラの家は集合住宅の一部屋だった。
「待っててね。今なんかゴハン作るから」
「いえお構いなく」
そういうが、リラは台所に向かっていった。
さてと……。
俺は部屋を見回す。
うん。
女子の部屋と言われ、想像できるような部屋が、俺の周りに広がっていた。
なんかピンクっぽい感じで、ちゃんとした内装になっている。
「はい、とっても簡単な物だけど……。食べて!」
「……?リラは食わねぇの?」
「い、いや!わ、私はいいよ!いいから食べて!」
リラは慌てたように言うと、台所に向かっていった。
水の音が聞こえたから、洗い物でもやっているのだろう。
俺がリラの料理を食べ始めると。
ドサッ。
台所から音がした。
何か胸騒ぎがして、俺は台所に向かった。
集合住宅の部屋だ。すぐに台所に着いた。
台所では。
リラが脂汗をかき、倒れていた。
「嘘だろ!?」
俺はこの部屋に来る前にリラが寄っていた大家さんの部屋に駆け出した。