嫌われよう作戦の末路
何かを得れば何かを失う。
段々と勇者の束縛が激しくなってくるにつれて私はある結論を下した。
頑張ってこいつに嫌われよう。
私の幸せな未来のために嫌われろ。がんばれ、私。
夕食後に紅茶を作った後、勇気を振り絞って話しかけた。
「私、腐女子なの。男の子と男の子がいちゃいちゃしているところを見るのが大好きなの。
やっぱり男の子は、男の子とくっつくべき生き物だと思うの」
「そんなこといったら子孫がなくなるけど」
「まあ、何を言っているの?愛なんて子孫の前では些細な問題だわ」
「……なら、男である俺とつきあうべきでは?」
「間違えた。子孫何て愛の前では些細な問題よ」
「うーん……。そんなに男になりたいなら、おっぱいをもぎとってあげようか?」
「何それ……怖い」
「まあ、リアにはもともともぎとるだけのおっぱいなんてないけれど」
「お黙りなさい」
腐女子作戦は失敗した。
次は、この作戦で行こう。
「私は友達もいない、暗くて地味で、いるだけで空気のようになってしまう女の子なの。
あなたみたいな人間とは釣り合わないはずだわ。そうよ、そうに決まっているわ。リア充というのは、リア充とつるむ生き物なのよ」
「よくわからないけど、リアは友達がいないことを気にしているの?」
「ええ、そうよ」
「じゃあ、俺も自分の友達を全員皆殺しにしようかな。そうしたら一緒だね」
「友情薄すぎだろう。友達大事にしろよ」
「俺の友達は、みんないい人達です。ちゃんと俺の幸せのために死んでくれます」
「殺すな」
勇者が仲間たちから人望がない理由がよくわかった。
「私のどこが好きなの?」
「優しいところかな」
こうなったら性格悪いアピールをしよう。
「私は、心も狭いのよ。リア充が嫌いなの。殺したくなってくるの。
あんな奴ら今すぐ戦争の真ん中に飛び込まれて死んでしまえって思うの」
「じゃあ、君のために戦争でも起こそうか?国を破滅させるくらいの規模でいいだろうか?」
「頼むからやめて」
「ふふふ。俺は性格の悪いリアも好きだよ」
「どっちなの!」
最後は、この作戦で行こう。
「ねえ、勇者。もしも、私に好きな人がいるとわかったらどうする?」
私に好きな人がいるとわかったら、恋を応援してくれるとかいう優しい心は持っていたりしないかな?
「そうですね。まずは、そいつの手足を切り刻みます。それから目を抉り取って二度とあなたの美しい姿を見えないようにします。ああ、口の中に火を突っ込むというのもいいでしょう。あなたの声が聞こえる耳もちゃんとそぎ落とさなければいけません。
最終的には、金属バットで殴りながら殺すというのもいいかもしれません」
いや、全然よくないわよ。お前、本当に勇者かよ。
「じゃあ、私たちの結婚が親に反対されたらどうするの?」
まあ、私の本当の両親は死んでいて、義理の両親に反対という意味だけれども。
「その時は、やっぱり一家皆殺しがいいかな」
「頼むからやめて。本当にどうするつもりなの?」
「心中と駆け落ちどっちがいい?」
「どっちも嫌だ」
「大丈夫、リアに寂しい思いはさせない。心中の時は、俺だけ死ぬことのないようにちゃんと君を殺してから俺は死ぬよ」
「頼むからやめて。私はまだ死にたくないわ」
「じゃあ、一緒に生きよう」
そう言って勇者は優しく笑いかけた。
その笑顔は私には眩しかった。
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