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絶世の女装男子と町を歩く

 クロエという曲が好きです。

 絶世の女装男子と町を歩くとか、こんなのデートじゃない。

 ただの拷問だ。見せしめだ。

 できる限り、人通りの少ないところでも歩こう。

 そう思っていたが、無理だった。

 スカートをはいた勇者は、見た目だけは絶世の美少女なのである。

 こいつの見た目につられて男がゴキブリホイホイのように集まってきた。

 堅物と有名の知り合いの魚屋さんも、たまたますれ違っただけで勇者の名前を聞いてきた。

「リア。この人の名前を今すぐ教えてください」

「ああ、この子はキャサリン。しゃべることができないのよ」

 けれども、町を歩く男たちは勇者に向かってプロポーズしだした。

「一目惚れしました。俺とつきあってください」

「いや、私と結婚してください」

 その後、一言もしゃべらない勇者の前で決闘が繰り広げられた。

 決闘では、傍にあった大根や、ゴボウを使って行われた。

 ものすごく、ダサい決闘だった。

 決闘の最中、ついに恐れていた悲劇が起こった。

 強風が吹いて勇者のスカートの一部がめくれあがった。

 あ、ピンクのフリフリのパンツだ。

 ばっちり見えてしまった。

「俺たちは責任をとって結婚しなければ……」

「どうか、俺と結婚してください」

 悲しそうに微笑みながら首を振るキャサリン。

 振られた男たちが涙を流し始めた。

 こいつ……。

「……下着までちゃんと女物だったのね」

 まさか、そうなっているとは思わなかった。

 やがて、勇者に振られた男たちは、葬式状態となりうなだれながらゾンビのように歩き出した。


 勇者とは、劇を見た後に帰った。

 帰り道になり、人通りが少なくなると私は勇者にしゃべることを許可した。

「今日はどうだった?彼氏ができた気分にでもなった?」

「彼氏というよりも人間ペットができた気分」

 その時、銀色の髪の毛をした男性から声をかけられた。

 彼は、自分の頭を隠すように大きなフードをかぶっていた。

「あ、ルーカスじゃないか」

「やあ、ノア。久しぶりだね」

「勇者、この人とはどんな関係なの?」

「友達だよ」

 勇者は、平然と答えた。

 ルーカスに友達がいた……。

 そんなことがあるわけない。あんな常識やコミュニケーション能力に欠如した生き物に友達ができるなんてことはあるはずない。

「勇者。この人はあなたが一方的に友達だと思っているだけなのね」

「違う、本当にノアは友達だよ」

「ふーん」

「そういえばリアには友達がいるの?」

「いたけど、地球温暖化の影響で蒸発してしまったわ」

 私は、苦しい言い訳をひねり出した。

 どうか、バカ勇者よ。これでごまかされてくれ。

「じゃあ、地球を冷やしたら出てくるの?」

「そうよ。それが化学というものでしょう」

 これで上手くごまかせただろうか。

「そっか……。ってリアには友達がいなかったのか。

 そんな友達のいない生涯孤独なリアの前で俺は、なんていう自慢話をしてしまったのか」

 何だろう……。この胸がえぐられるような感じは。

 勇者という輝かしい肩書を持つハイスペックな生き物に見事に敗北してしまったような感じは。

 ルーカスが、ハッとした。そして、慌ててさっきまで言ったことを否定しだした。

「リア。ノアは、俺の友達なんかじゃないよ。という存在がありながら俺が友達をつくったりしないよ。ノアが勝手に俺を友達だと思い込んでいるだけだよ」

「ルーカス……お前、最低だな。私は、昔の勇者パーティーの仲間だ」

 ちなみに勇者パーティーにより、勇者のボイコットを実行するという噂がある。

 仲は悪いのだろうか。

 それから、ノアからルーカスがどんなに最悪な統率者であったかを聞いた。

 こんな奴の下で使えていた勇者の仲間がとてもかわいそうだと私は泣いてしまった。


 読んでくださりありがとうございます。

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