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第4話 天敵と書いて『あね』と読む

 神界では追放されたカルナがスレイプニルを盗んでいった事が問題になっていた。


「あのバカ娘め!!」


 主神オーディンの怒りも最もである。ただでさえ険しい顔が、より一段険しくなっている。


「オーディン様のお怒りは御尤もです。」


 オーディンに恭しく頭を下げる女性。美しい亜麻色の髪が腰までかかっており、その身を向日葵色の鎧に包んでいる。戦乙女ヴァルキリーである。


「私がカルナからスレイプニルを取り戻してきますので、どうか。」


 オーディンは相変わらず渋い表情をしている。


「オーディン様。」

「わかった。考えておく。」

「ありがとうございます。」


 女性は再び丁寧に頭を下げる。オーディンは静かに言った。


「くれぐれも頼むぞ。ヴァルキリー=フロリアよ。」



 そして今、フロリアはカルナの目の前にいる。


「久しぶりですね、カルナ。」


 カルナは反射的にフレデリックの後ろに隠れた。少し震えている。ちょこっと顔を出して答える。


「お、お久しぶりですね。姉様。」


 声が震えている。今まであった尊大さの欠片もない。盾にされているフレデリックが尋ねる。


「えっと、僕はフレデリックというんですが。貴女は……」

「失礼しました。私は主神オーディン様に仕える戦乙女の一人、フロリアと申します。」


 ぺこりと頭を下げて挨拶をする。人間に対してだ。カルナとは大違いである。


「ヴァルキリーって何人もいるんですか?」

「ええ。後ろのその子を含めて、全部で八人います。」


(そんなにいるのか……。)


 フレデリックは自分の背中に隠れて震えているカルナを見ながらそう思った。しかしよく考えれば、死者の魂を選別するのにヴァルキリーが少ないと間に合わないのかもしれない。この世界はそれ程、死がありふれている。


「えっと、それでヴァルキリー様が何故このようなところに?」

「はい。本来戦乙女が、死ぬ間際の人間以外に姿を現すことは無いのですが、今回はこの子の事で。」


 そう言ってフロリアはスレイプニルを優しく撫でる。スレイプニルはおとなしくしている。


「カルナがスレイプニルを盗んだ、ということですか。」

「ええ。カルナ。私は今とても怒っていますよ。」

「は、はい。」


 カルナの震えが大きくなる。フレデリックは疑問を口にする。


「どうしたんだカルナ?優しそうな人じゃないか。」

「お前は知らんのだ。姉様の本当の恐ろしさを。」

「恐ろしさ?」

「私がどれだけ恐ろしい目にあったか。私にとって最恐の存在なのだ。」

「聞こえていますよ、カルナ。」

「ご、ごめんなさい。」


 とにかくカルナにとって姉は恐ろしい存在らしい。それがとても良くわかる状況だった。


「カルナ。私が怒っているのは、あなたが私達に何の相談もなく神界を出ていったからです。」

「はい。」

「相談してくれれば、オーディン様に私からもお願いすることができたのに……。」

「いや、あそこまでいったら、もう無理かなぁ~って。」

「言い訳ですか?」

「な、何でもありません!ごめんなさい。」


(神々の世界でも、こういうのあるんだな。)


 フレデリックはやり取りを見ながら思った。


「とにかく、済んでしまった事は仕方がありません。とりあえずスレイプニルは返してもらいますよ。」

「はい。」

「あなたの事は、今オーディン様にお願いしているところです。」

「私のこと?」

「ええ、許していただけないかとお願いしています。ですから少しの間、我慢なさい。」


 そこまで言うと、フロリアはフレデリックの方に顔を向けて続ける。


「フレデリックさんと言いましたか。」

「は、はい!」

「少しの間だけ、カルナをお願いしてもよろしいでしょうか?ご迷惑で無ければですが。」

「いえ、迷惑だなんて……。とんでもない!」

「この子を人の世界に野放しにしていたら、どうなるか心配ですので。」

「そ、それは……そうですね。わかりました。」

「ありがとうございます。カルナもそれでいいですね。」

「……はい。わかりました。」

「いい子ね。私はあなたのそういう所が好きですよ。」


 こうして、しばらくの間カルナはフレデリックと行動を共にすることになった。後から思えば、これは運命の分岐点だったと言えるのではないだろうか。カルナにとっても、フレデリックにとっても。

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