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吹奏楽のなかの。  作者: 南央
2人のまわり
9/57

吹部男子の秘密

 「今年の1年レベル高くね?」

 純一郎が言う。

 「俺純一郎の趣味よくわかんないんだけど」

 仁科先輩が突っ込む。

 「とか言って、仁科だって可愛いって言ってる子いんじゃん」

 インターネットとかだったら『w』が付きそうな会話。

 仁科先輩が少し照れた感じで横を見る。森菜摘が一生懸命にユーフォの練習をしていた。というか、俺も同じ1年なのに、こんなことしてていいのだろうか。

 俺は改めて仁科先輩を見る。少しつっていて、まつげの長い眼が、メガネのレンズ越しに俺を見た。トクン、と、心臓が鳴る。

 「真尋は、好きな人とかいないの?」

 まひろ、仁科先輩にそう呼ばれると、なんかふわふわする。

 「いないですよ」

 まさか、仁科先輩が好きです、なんて言えない。気持ち悪い。

 「先輩で可愛いと思う人とかいないの?」

 純一郎が聞いてくる。

 「んー…、葉山玲奈先輩とか?」

 「はぁ? 玲奈ぁ?」

 爆笑された。

 「純一郎笑い方キモい」

 けたけた笑い続ける純一郎に、仁科先輩が言った。

 「ちょっと俺、言ってくるわ。玲奈に今の言ってくるわー」

 気にする様子もなく、教室を出て行こうとする純一郎。俺はそれをあわてて止める。

 「やめて。やめて好きじゃない」

 「いや、でも俺はちゃんと聞いた。可愛いって言ってた。ね、森さん、言ってたよねー、聞いたよねー」

 ぶへっ。

 急に声をかけられた森菜摘は、音を外した。ユーフォから顔を離して、こっちを見る。

 「見てなかった…です。……すいません」

 森菜摘は、言葉を探すように言った。

 「純一郎なんかに謝んなくていいんだよ」

と、俺が言うと、怪訝そうな顔をして俺を見た後、森菜摘は再びユーフォを吹き始めた。一応は先輩である純一郎を呼び捨てにしているのが気に食わなかったのだろうか。

 「わー、無視されてやんの」

 「うるさい!」

 「お前らが2人で騒いでる方がよっぽどうるさい。というか暑苦しい」

 仁科先輩に釘を刺される。

 「なんだよ仁科ー。仁科は、実は!」

 身の危険を察したらしく、仁科先輩が純一郎に負けじと声を出す。

 「そういえば、智樹がコンバスの咲良って子可愛いて言ってんだけど」

 「言ってない!」

 即座に否定したのは、もちろん智樹。さっきまで会話に入ってこなかったのに。

 俺の従兄弟だ、というと、よく驚かれる。確かに見た目も性格も違うけど、そんなの別に普通だと思う。従兄弟≒兄弟で考えるからそうなるんじゃないのか? とも。

 「つーか仁科無神経すぎる。今いないけどいつもだったらコンバスこの教室でやってんじゃん」

 改めて、純一郎のしゃべり方はいちいち『w』のつきそうなしゃべり方だと思う。

 「別にいいじゃん、智樹だし」

 「あはは」

 「仁科ひでー」

 俺と純一郎がバカにするようなリアクションをしても、智樹は黙っている。

 「お前さ、なんか喋れよ。そんなんだからパートでも孤立すんだろ? 部長とかめっちゃお前に気ぃ使ってんじゃん。見てるこっちが申し訳ないよ」

 お母さん、悲しい、と、純一郎が言う。馬鹿、と、仁科先輩がたたいた。

 「しょうがないじゃん、パート女子しかいないし…。話せってのが無理だって。話すことないし」

 「暗っ」

 純一郎が笑う。

 「トロンボーン男子入りそうだったじゃん」

 「野球部行った」

 「なんかあれだ。智樹が喋ると何でも悲しく聞こえる」

 「わかります」

 頷く。

 「毎日失恋してんのか? って感じだな。え? コンバスの咲良って子に?」

 「違うって」

 「マジだろ? マジだろ?」

 純一郎の高い声が耳に響く。

 「智樹、咲良って子マジで好、」

 ガラ、とドアが開いて、俺たちは一瞬固まって、そっちを見る。

 「あれ、邪魔した? ごめん」

 葵先輩だった。ほっとしてため息をつく。

 「というか男子じゃん。なにしてんの? 悠也君連れてきすぎ。菜摘ちゃん1人だし!」

 大袈裟に驚く葵先輩。森の方に駆け寄る。

 「よくこんなところで1人でやってたね。彩音ちゃんと咲良ちゃんは?」

 噂の奥畑咲良の名前が出てきたことに反応して、3人一斉に智樹を見る。

 その反応に対して葵先輩が、

 「智樹君知ってんの?」

と聞いてくる。

 ふ、と仁科先輩が笑うと、純一郎があははと笑う。

 「何その笑い。まぁ、菜摘ちゃんに手を出してないならいいんだけど」

 「大丈夫っす」

 葵先輩のちょっとおかしいセリフに、仁科先輩が即答した。それがおかしくて、声を殺して笑う。

 「よし! はい、はい。男子解散ー。もうすぐコンクールなんだからちゃんと練習しなって」

 智樹がドアを開け、出て行く。それに続いて純一郎も出て行く。

 ちょっと名残惜しい気もしたけど、俺も仕方なく教室を出た。

 ドアを閉めたときにガラスを挟んで反対側にいる仁科先輩と目があった。

 ドヤ顔みたいな、『仁科先輩の笑顔』を見て、つい俺も笑顔になってしまった。

 仁科先輩の近くにいると、自然と笑顔になる。こういうのを、なんていうんだろうか。

観覧感謝です(・v・)。


誤字脱字あったら指摘お願いします!


もし暇だったら、感想いただけると嬉しいです!


ありがとうございます



*・゜゜・*:.。..。.:*・*:゜・*:.。. .。.:*・゜゜・**・


編集しました

ちょっとだけ追加しました!

話自体は変わってませんが…





11/4

従弟になってたので従兄弟にしました

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