部長は何でも知っている 2
「と、いうことがあったわけですよ」
帰り道。部長としての仕事が終わるのを待ってくれていた太一に、さっきあったことを話す。
「森菜摘? あんま気にしたことないけどなぁ…。あんま目立たないし。1年は入ってきたばっかってのもあるけど」
「そっか」
よく考えれば、気にされても困る。森ちゃん可愛いから、そんな子のこと太一が気にするようになったら、焼いたおもちで心がいっぱいになってしまう。世ではこういうことを、やきもちといいます。…違いますね。でもそれは我ながら恐ろしい。
「すっごい可愛いんだよー、接してみると。ほら、2年の男子、誰か森ちゃんのこと好きになっちゃったんじゃない?」
「それはな……いことない」
「え」
自分から振っておきながら、予想外の言葉にびっくり。
「え!? 嘘ー! え、誰?!」
「嫌だ、教えたらはっ倒されるー」
「情けない3年だ」
「うるせ」
これは相当固い。はかせるのは無理とみた。
けど諦めない! 明日の朝のミーティングのとき、2年の男子ガン見してやる。絶対森ちゃんのこと好きな男子見つける!
「そういえば」
太一が私の方に向きなおって、私の唇を指す。
「な、なに?」
何するんだ、こいつは。
「最近お前、『恐ろしい』ってよく使うよな。なんかよくないらしいけど。世の中恐ろしいもんだらけになるとか何とか」
なにそれ、恐ろしい…。あ、今使った。
「いやだー、なんでそんな恐ろしいこと…ってまた使ったぁ」
「あーあー、やばいよそれー、不幸になるよー、恐ろしいこと起こるよー」
「やめっ! 恐ろ…、縁起でもないこと言うなっ!」
太一の背中をたたく。
「いやでも、お前には宮脇がいるもんな。怖いものなしだ」
「葵を何だと思ってんの?」
「普通に勇者」
「絶対馬鹿にしてるでしょ! 葵に謝れー!」
「あーあー、すいません、すいません」
本音じゃない、ひどい!
「けど」
改まった口調で太一が言う。
「帆奈には俺もいるから、な?」
数秒の沈黙。
「…太一、ごめん」
私は勇気を出して言う。次の言葉を言うのをためらう。でも、言わなくちゃ。ここで、言わなくちゃ、これからもっと太一は傷つくかもしれない。
……よし。
「今の、全くカッコついてなかった…。なんか情けなかったかも」
「は?!」
いや! 今の太一の顔面白い!
爆笑している私に太一が言う。
「ビビった。今のビビった。別れ話とかかと思った…」
「そんなわけないじゃん。だって太一のこと大好きだもん」
うわー。自分で言っといて、かなり照れる。
「俺だって、帆奈のこと好きだよ」
へへ。嬉しい。
やっぱり太一に真面目は似合わないなって思ったことも、でも、そういうとこが好きだってことも、太一には内緒だ。
帆奈って読みにくいですよね。はんな なんですけど…笑
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