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吹奏楽のなかの。  作者: 南央
2人のまわり
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部長は何でも知っている

 暑い。すごく暑い。

 前の前の列にいる太一をちらっと見る。首から汗が流れていた。

 「はい、じゃあ今のところ全員で!」

 「はい!」

 楽器を構える。スライドをゆっくりのばして、前にいる葵にぶつけないようにする。

 「ワン・トゥー・さん」

 大きく息を吸う。

 「はい」

 合図とともに、楽器に息を吹き込む。長いスライドにも、管全体に息が行くように。

 周りの音もしっかり聞く。今、メロディーを奏でてるのはホルン。トランペットに回って、クラリネット、そしてまたトランペット。

 ひたすら伴奏を吹いているトロンボーン。だけど、私はそんなトロンボーンが大好きだ。力強い音。皆を支える大切な役目を果たしている。

 それに、伴奏ばっかじゃない。ちゃんと、メロディーだって…。

 音楽が止まる。先生が指揮を振るのやめたからだ。

 あぁ。あとちょっとでトロンボーンのメロディーだったのに。ソリだったのに!!

 「今のところ―――…アルト、テナー、バリトン、ユーフォ、チューバ、コントラバス。でやって」

 「はい!」

 呼ばれた人たちが楽器を構える。

 「ワン・トゥー・さん、はい」

 ターンターンタータタタン。

 メロディーを裏で支えている人たちだ。和音になっている。

 「……」

 先生は沈黙の後、

 「OK。ここ、Gesの人」

 みんながほっと溜息をつく。先生の沈黙以上に怖いものはないくらいだから。…先生が怒ったらもっと怖いけど。

 音とりが始まって、しばらく暇なので、窓の外を見る。

 部長がこんなんじゃいけないんだろうけど…。

 桜は花を散らして、新しく緑の葉をつけている。

 暑い。

 私はYシャツのそでをまくった。

 まだ5月下旬なのに、気候はすっかり夏モード。地球温暖化って、どうなったんだろう、とか、脈略のないことを考える。

 今日は空がきれいだ。わりと風も吹いているし、外に出たら気持ちよさそう。先生の合図で、窓から外に飛び出せたら。

 「はい、今のところ全員で」

 「はい!」

 再び楽器を構える。

 さっきの気持ちを音にのせて吹いてみる。みんなと息がそろった気がした。

 あ、今の音、気持ちいい。

 やっとソリの部分が回ってきて、私は皆が作った音楽にのって、メロディーを吹く。

 指揮を振る先生と目が合う。いいよ、と口の形が動いた。私はそれにこたえるように、メロディーを奏でた。

 その続きを、トランペットが紡ぐ。そこからゆっくりテンポダウンして、フルートが静かにまとめる。次に、サックスのアンサンブルが来て。

 …そのあとにくるのが、アルトとユーフォのソロの掛け合い。きれいな音色。男女の駆け引き。私はこれに、織姫と彦星をあてはめる。

 相変わらず、葵のソロは安定していた。

 ちょうどいいところで先生が指揮をとめた。

 「じゃあ、このあと2時半から課題曲と自由曲通します」

 「はい」

 時計をみると、2時15分。まだ時間があった。

 音楽室から出て行く先生と入れ違いに、1年生が譜面だけを手にして入ってくる。全員で30人とちょっと。最近、名前を覚えてきた。

 あれはクラの佐藤君。男子は人数が少ないから覚えやすい。今のはコンバスの奥畑ちゃん。で、今のがユーフォの森ちゃん。葵が可愛いって言ってる子だ。

 個人的には奥畑ちゃんのほうが一般受けするタイプだと思うんだけど…。

 まぁ、自分の後輩に勝る子はいない! ってやつですか。私は博愛主義ですから。ダイジョウブ、ハンナ、ウソツカナイ。

 近くにいた1年生に部活はもう慣れた? と、声をかけてみると、戸惑ったように、はい、と答えてくれた。

 やっぱり1年生と3年生の壁はまだ取れないのかな。私が1年生のときは、3年生が神々しいフィルターにかけられていた。

 「やばい、部長に話しかけられちゃった!」

 「帆奈先輩、可愛い」

 さっきの1年生の声が聞こえる。

 そっか、部長っていうのもあるのか。ちょっと照れる。

 へへへ。口元が緩むのを隠して、私は葵のところへ行く。

 「おい、葵! お前のその音色が憎い!」

ていっ! っとチョップをすると、やめんか! と返ってくる。

 「今、菜摘ちゃんと話してたの!」

 私は、葵のユーフォの隣で健気に体育座りをする森ちゃんを見る。

 なるほど、可愛い。

 私はしゃがみこんで森ちゃんの頭に手を乗せる。…ふわふわ!!

 「かわい、」

 「菜摘ちゃんに触るなぁー!」

 ビンタが飛んでくる。痛い!

 「この先輩ひどい!」

と、話しかけると、

 「そんなことないですよ。ひどいのは葵先輩です!」

と、葵が言ってきたので、笑顔で口を抑えてあげる。

 そんな私たちを笑顔で見守る森ちゃん。やばい、本当に可愛い!

 「菜摘ちゃんは俺の嫁なんだー!」

 …絶句。

 葵やばい。恐ろしい発言。

 そんなこと言われて、森ちゃんも引いてるだろうなぁと思ったら、普通の顔。

 「え、今の大丈夫なの?」

 「全然大丈夫です。姉のがそういうタイプで、自分も多少は影響受けてるんで…」

 …絶句。本日2度目☆

 でもあれだ、ギャップ!

 葵はにへらーと笑って、菜摘ちゃんと、

 「菜摘ちゃん大好きー」

 「私も葵先輩大好きです!」

という会話を繰り返していた。2人の中では日常会話っぽい。恐るべき、ユーフォ女子。

 ユーフォも上手くて、可愛い良い後輩がいて。葵はずるい。

 こうして私の葵に対する羨ましいメーターは増えていくんですね、わかります…。

執筆中のやり方がわからないので、変なとこで投稿しちゃってたりします。すいません 笑←

議事脱字など、何かあったらじゃんじゃん指摘お願いします。


ありがとうございます。

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