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吹奏楽のなかの。  作者: 南央
2人のまわり
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『先輩』の事情 3

 「フルートは仮入来てくれる子結構多いんだけど…コンバスってどうなの?」

 3時50分。ミーティングが始まるまでにはまだ後10分ある。それまでのあいだ、ぼけーっとしながら話すのが、私と玲奈の日課だ。

 「……来ない」

 めっちゃ声のテンションが低い。自分でもわかる。

 「…なんかごめん」

 玲奈が謝ってくる。

 「いや、フルートに来た子をコンバスにつれていけたらいいんだけどね? みんな、フルートにずっといるとか次はピッコロやりたいとか…」

 そういう奴らは黄緑色の魔人ピッコロに挑んでぼこぼこにされてしまえ。口を。したら管楽器吹けなくなるから。

 「嫌味か」

 玲奈にそういう気持ちがないことはよくわかってる。だって一応、小学校からの付き合いだし。

 「そんなこと言われたってね。こっちだって大変なんだよ。みんな、腕の力がないからずっと楽器を構えていられないし」

 「か弱いなー、ふははは」

 ちょっとばかにしてみる。だって! コントラバスに来てくれないんだよお母さん!

 「部長がいるからトロンボーンも人気だよね」

 「あぁ…」

 そうか。トロンボーンもどちらかというと仲間かと思ってたけど、敵だ、敵!!

 「ユーフォの仮入の子多いでしょ」

 「考えてみれば」

 トロンボーン以上にユーフォなんてマイナーなのに。ユーフォ二ウムか、ユーフォニアムか、ユーフォニュームか、はっきりしないくせに。

 「杉本と仁科がなんかやってるらしいよ」

 「なにそれ、きも…」

 なんかやってるって…。数少ない男子だからとはいえ、吹部男子の団結力は半端ない。常にってくらい一緒に居る。

 「ほんと男子なんなんだろうね。新しく入ってくる可愛い1年生の男子も、あいつらに汚染されちゃうんだー! やだ、可哀想!」

 玲奈、言いたい放題。

 「太一先輩と涼先輩とか仲良すぎだよね? 付き合ってんの? ってくらい」

 「けど太一先輩は、帆奈先輩と付き合ってるじゃん」

 すぐさまつっこむ。

 超ー大好きで、すごーく尊敬してた帆奈先輩が太一先輩と付き合ってるって聞いたときはびっくりしすぎてパニック状態になったのを覚えてる。

 「お似合いっちゃお似合いだけど…。太一先輩の身長が」

 玲奈が笑う。ほんとに言いたい放題、この子マジ勇者。

 「でも、帆奈先輩が選んだ人だから」

 「え、部長から告ったの?!」

 「え、知らなかったの? 私もすごくびっくりしたけど…」

 「なんでー! 帆奈先輩ならもっとかっこいい人と付き合えるのに!」

 「太一が1番かっこいいと思ったからだよ」

 後ろから帆奈先輩の声がした。私と玲奈がそろって驚く。

 「めっちゃ好みなの。やることやるし、面白いし、いろいろ一生懸命だし」

 彎奈先輩は私たちに笑顔を向けると、ミーティング始めるよー、と廊下に向かって叫んで、音楽室のなかに入って行った。

 「今の…めっちゃかっこよかったー!!!」

 やばい。ほんとに部長かっこいい。惚れちゃう!

 「彩音ってレズなの?」

 「どんな爆弾発言?! 本人も知らないんだけど?!」

 「いやー、腐ってる! 彩音腐ってる!」

 叫ぶ玲奈の横を、吹部の男子2・3年5人が通り過ぎていく。

 キモ、と仁科の口が動くのが見えた。

 「なに今の。仁科ウザー」

 「そうだね」

 私は玲奈に、愛想笑いを返すことしかできなかった。

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