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ジュリエットの覚悟


 ジュリエットがいつ、自分の料理ベタについてカミングアウトしようかと真剣に悩んでいると、腕をきゅ、と掴まれた。見ると、ロザラインが上目遣いにジュリエットを見つめていた。来て、とその愛らしい唇が動く。はい、と惚けた返事をして、ジュリエットはロザラインについていった。ロミオが不審そうな顔を向けてきたが、ロザラインは知らん顔で歩いていた。


「なにかしら、ロザライン?」


 ジュリエットは首をかしげた。人のいないのを確認して、ロザラインは振り向いた。その瞳は、先程までの誰からも愛されるような生き生きとしたものではなく、ジュリエットを貫くような鋭さがあった。


「貴女、ジュリエットね」


 それはさっき言ったばかりなのに。そう思いながら、ジュリエットは頷いた。


「キャピュレット家の、ジュリエットね?」

「……知ってましたのね」

「あたし、あのパーティにお呼ばれしてたのよ? キャピュレット家のお嬢様くらい、知ってるわ」


 ロザラインはため息を吐いた。それからジュリエットを睨む。


「一体なんのつもり? お兄様に近付いて。わかった、お兄様を殺す気ね?」


 ジュリエットは頭をぶんぶん振った。


「じゃあなんなの。ねえ、お兄様のこと、どう思ってるの?」


 少し考えてから、ジュリエットは微笑んだ。そんなこと、決まってる。


「とにかく好きだわ。名前も知らないのにわたくしを見たあの瞳が、忘れられないの。キャピュレット家とかモンタギュー家とか、なんてくだらないんでしょうね」


 頬を染めながら言ってうつむくと、ロザラインが少し苦しそうに微笑わらった。しばらく見つめあうと、ロザラインが穏やかに口を開いた。


「そうよ、くだらないわ。キャピュレット家とモンタギュー家なんてね、もともとはたった一つの恋がハジマリだった……」

「え?」

「ジュリエット、貴女、お兄様のこと、知ってらっしゃった?」

「……いいえ」

「そんなものよ、憎しみなんて。あたしたち、名前を憎んでるだけ。貴女はお兄様を知らなかったし、お兄様は貴女のことを知らない。でも覚えておいて? 名前への憎しみを、人への憎しみに変えるのは簡単なの。その昔、人への憎しみを名前への憎しみにしてしまったように」


 ジュリエットは考えていた。ロミオには自分の身分を明かしてはならない、という忠告らしかった。


「わかったわ。ロザライン……貴女はどう思っていますの?」


 ジュリエットが訊くと、ロザラインは顔を綻ばせた。その笑顔は、やはり天使のようだった。


「あたし、お兄様のことが好きだわ。そして、貴女のことも好きなのよ、ジュリエット。憧れだったの、本当に」


 ロザラインはくるっと背を向けて、戻りましょ、と言った。ジュリエットも慌ててついていこうとしたとき、ロザラインが不意に、切羽詰まったような顔で振り向いた。


「どうかあの人を、お兄様を、救ってさしあげて。貴女なら……」


 ジュリエットにはなんのことだかわからなかった。それでも、ロザラインの沈痛な顔を見ると、ジュリエットはロザラインの手を握って、言わないではいられなかった。


「きっと、きっと……」


 その先の言葉は、ロミオの声でかき消された。


「お腹すいたんだけどー」


 ロミオの声に、恋する乙女スイッチがオンされて、ジュリエットはキラキラのなにかを飛ばしながら振り向いた。


「はい只今ー!!」




 突っ伏したロミオを見ながら、ジュリエットは止まらない冷や汗を拭った。ロザラインは茫然とそれを見ている。皿に載ったなにかと、カップに入ったなにか。ロミオは、カップに入ったなにかを口に運び、テーブルと結ばれることになったのである。ちなみに、それに驚いてスプーンを落としたロザラインは無事である。


「ろ、ロミオ様……? た、大変だわ。私、愛を込めすぎて愛する人を絶命させるなんて……」

「愛の量如何じゃないわ!!」


 ロミオが飛び起きて叫んだ。ジュリエットはほっと胸を撫で下ろし、よかったと呟いた。


「よくないから。どうやったらこうなるわけ? 僕を毒殺する気? というか今、勝手に僕が死んだことにしただろ。くっそ不味いもの作りやがって。よくもまあ家事ができますって言ったね! 家事ができる、のラインはここなのかよ! この世間知らず!」


 ジュリエットは赤くなった頬を両手で包んだ。

 もう、ロミオ様ったら……。

 ロミオはといえば両手で顔全体を覆い、ぐすぐす言っていた。そんなロミオの肩をだきながらロザラインが慰めていた。


「その気持ちもわかるわおにぃさま。でもね、これくらいで泣いてちゃあ生きていけないの。強くならなきゃ」


 ロミオはこくっと頷き、不意に立ち上がりジュリエットを指差した。


「くびだぁぁああ!!」

 ええええぇぇぇ!?

 覚悟を決めたとたんに、ジュリエットちゃんピンチ…でもなかったりします(笑)

 シリアスはちょっとストレスがたまります。というか、ロミオ様のハチャメチャさがないとストレスです。

 次の展開が思いつかないのだけどどうしよう…。

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