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アナザースカイと黒い太陽  作者: ALK
エーリカと奴隷編
12/12

謎の魔導とサイクル・デス


「戻れ」


アポロンJは持っていた拳銃をサーモアに戻す。


「行くぞ」


そして駆ける。


――速い


それを見ていたエーリカは素直に感嘆する。あのスピードは一般人では反応することすら不可能であろう。


しかしノアは王である。


アポロンJの拳をかわす。


そしてフランベルジュでアポロンJを

焼き斬ろうと振りかざす。


――甘い


アポロンJはフランベルジュをかわし、更に反撃をくわえようとする。


しかし


「ランス・オブ・アイロン」


突如アポロンJに数多あまたの鉄の槍が降り注ぐ。


――これは……やばい


アポロンJに微かな焦り。

彼は降り注ぐ槍を全て避けていく。


しかし鉄の槍は止むことを知らない。


まだ……


まだ……


まだ止まない……


遂に、一本の槍がアポロンJを貫く事に成功する。


そしてそれを皮切りに、全ての槍がアポロンJを突き刺し、彼の体を覆い尽くす。



「呆気ないな」


ノアは拍子抜けした様に呟く。


しかし次の瞬間、ノアは顔面に物凄い衝撃を感じる。


「おいおい、俺は生きているぞ」


言葉と共にアポロンJのパンチが炸裂し、ノアを吹き飛ばす。


「貴様、何故?」


槍で突き刺したはずのアポロンJ。しかし彼は生きている。それも無傷で。


ノアの質問も無理はない。


「さあな。ただ、魔導の数が多いだけじゃあ、俺には勝てないぜ」


「……。どうかな?」


ノアは微かに笑みを浮かべ、そして新たな魔導の発動に取り掛かる。


ノアの気迫に大気が震えだす。


「サンダーボルト」


突如ノアの体が帯電し、そして雷がアポロンJを貫こうとする。


――無駄だ


それをアポロンJは横にかわす。


しかしそのかわした地点、そこに鉄の槍が降り注ぐ。


今度こそノアは、アポロンJへ攻撃が当たるのを“間違えなく”確認した。


――強い


エーリカはそこでノアの実力を改めて実感する。

相当の実力を持っているとされるエーリカだが、ノアには及ばない。

エーリカは、ノアはアーバンスの実力者四人に匹敵するものだと思っている。


「貴方は強い。一体何を考えてるの?」


エーリカはノアに問う。

エーリカは今まで、ノアに関して何も知らなかった。故に彼の目的を知らない。


エーリカはノアの実力を目の当たりにし、初めて彼の目的に興味を持ったのだ。


「私は新世界を創る」


「新世界?」


「そうだ。誰もが平等な世界。奴隷などいない世界。


それを俺達奴隷が創るのだ。」


ノアは熱弁する。


エーリカは理解した。ノアが自分を手放したくない理由。


それは戦力の為だ。自分の力を利用しようとしている。


「不可能よ。貴方はアーバンスの実力者にも匹敵するだろう能力は持っている。それでも“ギルティ・ギフト”は殺せない」


「いや、殺せるさ。アーバンスのクズだろうと、ギルティ・ギフトだろうと」



――無理よ。ギルティ・ギフト(罪の贈り物)を殺すのは。


――やつは『サイクル・デス』の中でも別格。




『サイクル・デス』とは、大犯罪者で組織される集団のことである。


アーバンスの実力者


アシッド・ボーイ


ブラウン・ボム


クラウン・サイド


ドレッド・フェイス


この四人もサイクル・デスに所属している。

いや、所属しているというのは正しくない。


治安維持組織『keeps』により、一定以上のレベルの犯罪者がそこに登録されるのだ。


現在登録されているのは21人。

その四人が同じ街、つまりアーバンスにいるというのだ。この街の異常さが理解出来るであろう。



「お前がアーバンスのサイクル・デスと互角だと?笑わせる」


突如ノアの背後から響き渡る声。


――この声は……


アポロンJ!



「お前達は分かっていない。あいつらの恐ろしさをな。ノア、お前は確かに強いが奴等は格が違うぞ」


格が違うというアポロンJ。それはまるでサイクル・デスという集団を知っているかの様。


「俺に勝てないようでは、到底サイクル・デスには勝てないぞ」


「待て。何でお前は生きているんだ」


「さあ、終わりにしよう」


ノアの問いは無視し、アポロンJは魔導を発動すべく精神を研ぎ澄ませる。


研ぎ澄まされた精神は、徐々に空間を支配し、そして辺りを無音とさせる。


――この気配は……


エーリカはあまりの迫力に体が動かない。そしてその顔には冷や汗が浮かんでいる。


――大魔導!



「ノンスタイル」


そしてアポロンJは魔導を発動する。

しかし


――何も起こらないわね


エーリカは変化の無さに拍子抜けする。


そしてノアも安堵の息を漏らす。


しかし二人は気付いていないだけだった。アポロンJの確かな変化を。


それに気が付かない限り、ノアは絶対に勝てない!



アポロンJは一度サーモアに戻した拳銃を再び取り出す。

そしてその引き金を引いた。


甲高い音が鳴り響き、銃弾が打ち出される。



「ウォール・オブ・アイロン」


ノアは鉄の壁を出現させ、銃弾を防ごうとする。


もし彼がここで回避を選択していたら、全く問題は無かっただろう。


しかし彼は防御を選択してしまった。


「そいつは良くないなあ」


アポロンJの顔には笑み。


そして銃弾が鉄の壁をすり抜け、ノアを貫く。

血渋きが舞う。


「何故だ……」


その言葉と共にノアは前のめりに倒れる。

そして起き上がることはなかった。


「よく覚えておけよ。エーリカ・ライズ・フェルナンデス」


アポロンJは人指し指をエーリカに向けて衝撃的なことを言う。


「サイクル・デスはこんなものじゃあないぞ。奴等は本当の死神、勝つことは不可能に近いぜ」


それはエーリカにとっても衝撃的な事実。


彼女を圧倒したノア、そしてそれを倒したアポロンJ。そのアポロンJがサイクル・デスに勝つことは不可能という。


――化け物ね


この日エーリカは己の未熟さを知った。

そして大犯罪組織『サイクル・デス』の強さも。


彼女にとってそれは確かな変化。

己の未熟さを知った彼女は更なる高みへと昇るだろう。


――奴隷王ノア、王を名乗るにしては大したことなかったな


アポロンJはノアの実力に不思議を感じるも、特別気にしてはいなかった。





そして1時間後、アポロンJもエーリカもいなくなったその場所で……


血を流し倒れていたノアであったが、突如その傷が回復していく。


「ノア、立ちなさい」


そこに現れたのはクラウン・サイド。

そして傷を全回復したノアは立ち上がる。


「どうだった?アポロンは」


クラウン・サイドはノアに問う。


「強い。間違いなく奴は強い。早めに手を打っておかなければ痛い目をみるぞ」


どうやら今回、ノアとクラウン・サイドは何らかの取引をしていたようだ。


「その必要はないわ。彼では私に勝てない。アシッド・ボーイが何をアポロンに期待しているかは知らないけど、あれでは私達『サイクル・デス』には程遠い」


「本当にそうかな……」


ノアはアポロンJがサイクル・デスに程遠いとは思っていなかったようだ。


「私とアポロンJの闘いを見ていたか?」


「ええ」


「あれは危険だ。実力以上にあの感覚、あの殺気、尋常じゃない」


「まあ、貴方の意見はどうでもいいわ。謝礼は後で」


そう言ってクラウン・サイドは去っていった。


「クラウン・サイドよ。忠告はしたぞ」


神妙な顔つきで、ノアは言う。


それはまるでこれからの未来を予見しているかのよう。



元賞金稼ぎ、アポロンJ


アーバンスのサイクル・デス


エーリカ・ライズ・フェルナンデス


そして奴隷王ノア


強者が集う街アーバンス。この街の行く末は神のみぞ知る。


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