第一王子の腰巾着ですが、この度第一王子の婚約者を誘拐します。
なんだーかんだみんな仲良し。
※戦闘シーンがあるため念の為R15をかけています。
「ゼノ」
「はいよ」
俺は、乳兄弟でありわが国の第一王子、シグルド・ステュアートが必要としてた書類を渡す。
「よくわかったな」
「優秀な腰巾着なので」
「ふ、ありがとな」
俺は確実に早く仕事を終わらせたくて焦っている乳兄弟を見てニヤニヤと笑う。
「何笑ってんだ」
ギロっとシグが俺を見る。一見してると睨んでいるようだが本人にかけらもそんな意思はない。ただ口下手なのだ。
「いやぁ、早く仕事終わらせれば、リリアーヌ嬢に会えるなぁって」
リリアーヌ嬢とはリリアーヌ・フローンス公爵令嬢。シグの5歳の頃からの婚約者だ。ゆるふわ系のお嬢様だ。
ちなみに、リリアーヌ嬢のメイド兼護衛はベルタっていう。こいつは、ただのリリアーヌ嬢オタクだ。
「おい」
今度は地を這うような声。この声を出す時は、怒ってる。
「っていうお前の心の声を代弁しただけだよ」
「あ、あぁ」
「何?俺がリリアーヌ嬢のこと気にしてるって思って嫉妬した?」
シグはさらに目つきを悪くする。こりゃガチで嫉妬してんな。
「ごめんってぇ」
「思ってないだろ」
「あれ?バレた?」
「はぁ、さっさと終わらせるぞ」
「あーい」
たまには真面目にちゃっちゃとやろうか。
コンコン、と言うノック音と共に入ってきた。
「失礼致します」
「あぁ、マルクス・ベリンガム侯爵か、どうした?」
「はい、レナード様の件でして…」
レナードは、シグの異母弟だ。気が弱く周りに流されやすいが、真面目なタイプだ。
だが、最近仕事をサボりがちらしく、アルフレッドの婚約者、イザベラの父である侯爵がこうして相談に来るのだ。
「またレオのことか?」
「はい、イザベラがお仕事をするよう促してはいるのですが…可能なら、シグルド様からも言っていただけると」
侯爵は人の良さそうな雰囲気と人当たりの良さで周囲からの信頼も厚い。そんな彼が困ったような表情をするのは珍しい。
「俺が言って聞くようなやつではないだろう」
「ですが、これだと周りのものに示しがつきませんので…」
「相変わらず心配性だな。時間が空いた時話してみるよ」
「お忙しい中、誠に申し訳ありません。では失礼致します」
「あぁ、ありがとう」
侯爵がさった後、爆速で仕事を片付け始める。
相変わらず、デートが後にあると信じられないスピードだな。
俺は鬼の形相のシグを片目に重い手を動かした。
「よし、いくぞ」
仕事が終わった瞬間に、シグルドが立ち上がった。
「あいあいさー」
執務室をでると、誰かからはなしかけられた。
「第一王子殿下、お出かけですか?」
性格の悪さが滲み出た笑いをしたいるのは、宰相のオーランド・グレイだ。
「あぁ、リリアーヌに会ってくる」
「またこんなヒョロイ奴を連れていくんですか…?もう少しちゃんとした護衛を…」
まぁ、こんなヒョロヒョロ男が第一王子の付き人なんて信用ならねぇよなぁ。俺もならねぇ。
「いや、大丈夫だ」
「そ、そうですか。では、頼んだぞ、ゼノ」
「はいはい、言われなくてもわかってるよ」
はぁ…。まぁ、やるしかないか。俺は決心と共に、城を出た。
今日はシグとリリアーヌ嬢は演劇を観る予定だ。
公爵邸まで迎えに行き、リリアーヌ嬢とベルタと合流した。
「シグ様、今日はお忙しい中ありがとうございます」
「…いや俺は別に」
シグがほんのり顔を赤らめながら目を逸らす。
「シグ、めっちゃ書類仕事あったのに死に物狂いで片付けてましたよ」
「黙れ」
「あ、え、そうだったんですか。こ、これ、疲労に効くお茶とお菓子と、あとえっと、」
「お嬢様、お土産は終わってから渡しましょうね」
ベルタが無表情のままツッコむ。
「あ…」
リリアーヌ嬢が顔を赤らめたところで、一旦全員で馬車に乗り込んだ。
「シグー、リリアーヌ嬢がかわいすぎるて、照れてるのはわかるけど、そんな怖い仏頂面してるといずれ愛想尽かされるぞー」
俺はニヤニヤしつつ、あえてリリアーヌ嬢にも聞こえる声でシグに伝える。
これは俺の趣味だ。
「は?」
「そ、そんな」
「…」
反応は三者三様で実に面白い。
ちなみに、シグは図星をつかれて焦っていて、リリアーヌ嬢は照れていて、ベルタは悶えている。
ベルタは無表情で口数が少ないメイドだが、以前
「なんでお嬢様ってあんな可愛いんだろう、まじ天使。ってか第一王子殿下とのカプが最高。不器用溺愛系彼氏と愛され願望の強い彼女。めちゃめちゃどタイプーーー。ああああ、可愛い。癒し。まじすき」
とぶつぶつ言ってるのを耳にしたことがある。要は頭の中でオタクをしているタイプだ。
劇の直前もベルタに
「お前さ、リリアーヌ嬢と距離近すぎねぇか?」
と聞いたら、
「お嬢様の天使な姿を目に焼き付けるのは護衛の義務です。今日もお洋服を頑張って選んでいらっしゃってなんと可愛らしいことか、やっぱり今日のチョイスは…」
と長くなりそうなので途中から無視した。
演劇が見終わった。
俺は一つ大きな深呼吸をする。
シグ、悪いな。これが俺の仕事だ。
「シグ、わりぃ」
シグの耳元で呟く。
「どうした?」
「宰相からの呼び出しの伝言が届いた」
「後回しにはできないか?」
「無理そうだ。俺がリリアーヌ嬢を送るからお前は行ったほうがいい」
「ああ」
「リリ、王宮から急な呼び出しが入った」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ」
「送っていけなくてすまない。ゼノが責任を持って送っていく」
シグは基本的にデートの時、公爵家まで迎えに行き、公爵家まで送る。それができない時は俺を護衛に任せるのだ。
ベルタの腕を信用していないわけではないが複数人の敵が来た時に、女性の護衛一人では限界がある、としてベルタを説き伏せていた。
「ありがとうございます。よろしくお願いいたしますね。ゼノ様」
「あいよー。ほら、仏頂面はさっさといきなー」
しっしっと言ったふうにシグを見送ると、俺はリリアーヌ嬢とベルタと馬車に乗り込む。
劇場から公爵家に行くまでにはちょっとした林がある。
また、劇場と王宮、劇場と公爵家だと公爵家の方が遠い。ましてや、シグは呼び出しで急いで帰っているだろうから…。
ここが一番ちょうどいい。
俺は、ずっと立ち上がると、リリアーヌ嬢を捉え、そのまま馬車から飛び降りた。
ベルタは俺と護衛をしている時、少し気が緩む傾向にある。そして瞬発力は俺の方が高い。だから、
リリアーヌ嬢を攫うにはこのタイミングしかない。
俺は、リリアーヌ嬢を抱えて林の中に消えた。
ベルタは冷静で優秀な護衛だ。そこらへんの有象無象なら20人一人で相手にできる。
そして、実力を図ることも得意だ。最適な判断を考えるあいつは、リリアーヌ嬢を人質に取られたまま、俺と対決することは選ばない。
俺の方がベルタより圧倒的に強いから、唇を噛み締めながら、応援と事実の報告のために王宮へと戻るだろう。
「ゼ、ゼノ様…?」
リリアーヌ嬢の戸惑った声が聞こえる。
「なんだ?」
「どうしたんですか…?何か理由が…」
「だまってろ」
「え?」
「黙っててくれ」
そのまま走り、小さな小屋へと向かう。
「おい」
怪しく辺りをキョロキョロする男に乱雑に声をかける。
「き、きたか」
「あぁ、連れてきたぞ、宰相」
「ほ、本人だろうな、影武者でも使おうもんなら」
「確実に本人だ。まだ俺のこと信用してないのかよ」
「黙れ、第一王子の腰巾着め。地下の牢獄に閉じ込めるぞ」
「はいよ」
相変わらず、彼の方に怯えてる宰相の命令を軽く受ける。
「なぁ、宰相」
俺はポツリと声をかける。
「なんだ?」
「お前がこの作戦に参加する目的はなんなんだ?」
「は?」
「俺は無愛想でウザい第一王子のお守りよりも別の高い地位につくことだ。あんたは?」
俺はリリアーヌ嬢の手と脚を縛り目隠しをしながら淡々と問う。
「第一王子は、俺を宰相の座からおとそうとしていると、彼の方に言われてな…。あいつは妾の子。皇太子になるためには公爵令嬢との結婚が必須だ」
「なるほど、こいつを亡き者にするか、傷物にすれば、あいつじゃなく、第二皇子が台頭するってわけか」
俺は拘束し終えたリリアーヌ嬢を牢屋に担ぎ、宰相と共に地下へと向かう。
そこには一人の男がいた。
「べらべら話すな。アホが」
「マルクス・ベリンガム侯爵…」
意外に地下に音が響いていたらしく、俺たちの会話を聞いた侯爵が不機嫌そうに宰相に話しかける。
「まさかあなたが味方になってくれるとは思いもよりませんでしたよ。このアホを味方に付けた甲斐があったと言うものです」
打って変わって俺には笑みを向けて話しかけてくる。
「ふ、お前から声をかけられても俺は乗ってたぞ?」
「それはそうですね」
「珍しいじゃないか、あなたが策略じゃなく、こんな強硬手段に出るだなんて」
「傀儡が言うことを聞かなくなりましたので致し方なく…」
「なるほど。そろそろ王太子も決まる頃だしな。しょうがないか」
王太子は一度決まればそいつが死なない限りどんなことがあろうと取り下げられることはない。確かに、あいつを殺すのは現実的ではないな。
俺はクッと喉を鳴らして笑う。
「えぇ、焦ってた頃にあなたが計画をかぎつけそうだとポンコツから連絡が来た時はびっくりしましたよ。ですが、まさかこちら側に入るとは」
「こっちの方が出世できそうだったんでな。これで第一王子の腰巾着と呼ばれる生活とはおさらばよ」
「もちろんですよ、あなたは第一王子に任され王太子となった第二王子を献身的に支える宰相になっていただきますよ」
「悪くねぇ案だな」
「えぇ、では最後の仕上げをしまょうか」
「その前に祝勝をしてもいいんじゃねぇか?」
「いやいや、それは…」
「馬車に細工をしてあるからこいつのメイドが王宮に着くのは遅くなる。この小屋もそう簡単には特定できねぇしな。そもそも、今傷物であるか否かをはっきりさせる技術ってあったか?どうだ、宰相」
「あ、ありません」
「そうだよな。てことは誘拐された時点でこいつの負けってわけさ」
「ふむ、なるほど。では一旦祝勝の宴と行きますか」
「あぁ、そうだな」
俺たちはそうして、酒盛りを始めた。
「おっと、流石にそろそろ仕事をしますか」
小一時間飲んだ後、侯爵がサッと立ち上がる。
「お前が手を下すのか?」
「そんなわけありませんよ」
「なるほど、破落戸ってことか。じゃぁ任せて俺らは上で飲み直そうぜ」
「何言ってるんですか?あなたたち二人が誘拐の主犯格であり、あなたたちが手を下したのでしょう?」
「は?」
「公爵令嬢を犯した後ここで酒盛りをしていた、そうでしょう?」
「どういうことだ?」
「そのままの意味ですよ。そして私はリリアーヌ公爵令嬢を助けにきたと言うわけです。やれ、お前ら」
ちっ…。俺は舌打ちをすると護身用のナイフを取り出した。
俺は宰相をリリアーヌ嬢が入ってる牢屋とは別の牢屋に投げ入れる。
「邪魔だからそっから出んなよ、宰相」
相手は5人…。もつかなぁ、俺。早くこいよ。
そのまま5人をけっして自分より後ろに通さぬようにしながら戦い続ける。
刃が頬を掠める。俺は反射的に身を沈める相手の懐に滑り込み、一人を気絶させる。
「あー、やってらんねぇ」
もう一人は大きく刃物を振りかぶった。
「そんなでかい刃をこんな狭いところで振り回してんじゃねぇよ」
俺は相手が刃を壁に食い込ませた瞬間鳩尾に拳を叩き込む。
「これで二人か……いって!!」
完全に油断した。利き腕の肩に鋭い痛みが走った。熱い。
俺はリリアーヌ嬢がいる地下牢を背に再び構える。
「ちっ…面倒くせぇな」
俺はは肩の痛みを無視して笑った。
笑いながら敵の懐に踏み込み、逆手に持ったナイフを滑らせる。
止血はできていない、おそらく止血防止剤も塗られているだろう。
「さて、どこまで持つか…」
長くは戦えない。ここで死んだらもともと顔向け出来ねぇのに、さらにできなくなっちまう。
早くこいよ。ばかやろう。
そのまましばらく3人を相手に戦い続ける。
3人目を気絶させたところで視界が合わなくなってきた。
「まずいな」
その時、ドーンと大きな音が鳴り響いたと同時に地上から地下へと続く階段を下る二人の足音が聞こえた。
「おせぇよ、ばか」
俺はその二人が来て、残りの二人を背後から捉えたのを見て、意識を手放した。
目が覚めると、見知った天井が見えた。いつも使っている俺の部屋だ。
「目覚めたか」
地を這うようなシグの声が聞こえる。
俺はなんとも言えず顔を逸らした。
「侯爵と宰相が国家転覆罪で捉えられた」
俺はそのまま次の言葉を待つ。
「証拠はリリの靴の中に入っていた録音機だ」
「で?」
「入れたの、お前だな?」
「何言ってんだよ。じゃぁその録音にはっきり残ってんじゃねぇの。俺の目的」
「あぁ、それはもちろんだ」
「じゃぁ、俺も国家転覆罪でいいんじゃねぇの」
「今回のおかしいところその一、レナードの行動だ」
シグは俺の反応を見た後、
「あいつは基本的に真面目なタイプで、ことを荒立てたいタイプじゃない。特に、王位継承権とかな。だからあいつは最低限のことしからやない。が、最近は最低限のことすらしなくなってきた。ここで考えられる原因は二つだ」
なんだと思う?とシグが尋ねてくるが、無視をする。
「一つ目はあいつ自身が周りが自分を王に担ぎ上げようとする動きが活発となったことに気がついた。二つ目は、誰かから言われた、だ。あいつの王位には関わりたくない、でも周りには迷惑をかけない、という性格を考えてもあいつ一人の考えで動くにはいささか、急すぎる。ならば、二つ目の原因を考慮するべきだ。そして、あいつが最低限の仕事をやらなくなり始めた直前にあいつに会いに行ったのは、お前と侯爵と後数人くらいだ」
「それで、俺が録音機入れた証拠になるかよ」
「今回のおかしいところその二、リリアーヌの持ち物だ。リリアーヌは普段ベルタと行動を共にしている。ベルタを出し抜けるやつなんてそうそういないから、あいつは録音機など持ち歩いていない」
「ベルタが咄嗟に入れたかもしれないだろ」
「そんなのができるスピードじゃなかったとベルタが言ってるぞ?あいつはリリ第一主義だからリリを危険に晒したお前を庇うとは考えられない」
「それでも身内の意見だ。おかしな点の証拠にはならねぇよ」
「今回のおかしいところその三、お前の言葉だ」
「は?」
俺は訝しげにシグを見る。
「お前が知らないわけがないだろ。ずっと俺と一緒にいたんだ。純潔を保っているかどうかを確かめる方法があることを」
「そんなの…」
「俺と一緒に授業を受けてたんだ。知らないとはいわせねぇよ」
「そして、最大の証拠はこの録音機だ」
「は?」
「これは俺がお前にあげたやつだろ」
「いや、そんなのどこでも売ってるだろ」
「な訳ねぇよ。伝えてなかったかもしれねぇが、これは俺がよく諜報活動とかをしてくれるお前のために作った特注品だ」
「は?そんな話しらねぇよ」
「これを持ってるのはお前しかいないんだよ」
「似たようなデザインが出た可能性だって」
「第一王子が一点ものとして作れ、今後同じデザインは二度と使うなって言ったのにか?」
「他の職人の可能性だって」
「それはないと、作った職人が断言した」
「は…」
「今回のお前の計画は俺じゃなかったら見抜けてなかったな」
「ちっ…」
「なぜ、こんなことをした」
シグの怒った声が響く。
「異分子の排除に最も効率のいいやり方だったからだ」
「は?」
「お前はずっと宰相にを怪しんでいた。だが、俺が怪しんでいたのは最初から侯爵だった。けど、いつまで経っても尻尾を見せやしねぇ。証拠もない、ただの俺の勘だったからお前を惑わせるわけにもいかねぇ。そんな時にリリアーヌ嬢誘拐計画を知った。でも、首謀者は宰相だった。宰相は腑抜けだ。そんな大それたことを一人で計画ができるわけがない。だが裏にいる人物は掴めない。だから俺は、宰相の計画に乗ったんだ」
「それでお前はリリアーヌを危険に晒したと」
「あぁ」
「失敗したらどうするつもりだったんだ?」
「失敗して、リリアーヌに何かがあったらレナードが行方をくらます予定だった」
「どういうことだ?」
「俺もレナードも王はシグだと思ってる。そのためにはシグが王になる時に障害になる異分子は排除しなきゃならねぇ。そして、その一番でかい異分子が侯爵ってのが俺とレナードの共通認識だった。今回はその異分子を排除するための計画だったってわけだ」
「リリを囮に使ったと言うことか?」
「あぁ、流石に俺だってバカじゃねぇからいくつかお前らがリリアーナ嬢を保護できるようにきっかけは作ったさ。だが、俺らにとって優先はシグが王になることだ。リリアーヌ嬢がどうなっても最悪問題はなかった」
と言った瞬間に拳が飛んできて、ベットから吹っ飛んだ。
「いててて、何すんだよ」
「俺がリリを犠牲にしてまで王になると思うか?」
「お前ならなる。それがリリアーヌ嬢との約束だからな。リリアーヌ嬢にすまないと言っておいてくれ」
俺はそのまま、窓から脱走を試みる。
シグと一緒とは言え勉強させられることや仕事をさせられることが嫌だった俺が作った、部屋から脱走するための仕掛けがこの部屋にはたくさんある。
それを使って逃げようと思った瞬間に、黒い何かが飛んできてそのまま俺に衝突してきた。
「ぐっ…」
「逃げられるとお思いでしたか?」
「ベルタ…」
「どうせ、許されたとしても乳姉妹の婚約者を危ない目に合わせたから、とか言って行方くらませるきだったんだろ?」
シグが呆れたように言う。
「お嬢様を危ない目に合わせた謝罪を、伝言で?人間の所業ではないですわ。お嬢様を危険に合わせたことは万死に値しますが、なんか色々ありそうですし、とりあえず、なんか不器用な臣下と信頼している殊勲とか意外に萌えますしね。ほら行きますよ」
「は?」
俺はそのままベルタに引っ張られて部屋を出る。
連れて行かれた部屋にはリリアーヌ嬢がいた。
「リリアーヌ公爵令嬢、危険な目に合わせてすまなかった」
「あら?何を言ってるのですか?私は一切危険な目にはあってませんわよ。ただ、お気に入りのドレスでしたのでクリーニング代だけは請求させていただきますね。とびっきり高いので、逃げずにシグ様の元で働いて返してくださいね?」
俺は驚きのまま固まる。
「それがリリとベルタと俺の下した結論だ」
「馬車馬のように働け」
「「「第一王子の腰巾着が」」」
表情は仏頂面、笑顔、真顔と三者三様だが、3人が同じこと揃って言った。
全く違う3人だが、変人なのとお人好しなのは共通点だな。
俺は、泣きそうになるのを堪えて、笑顔で言った。
「ありがとう、みんな」
「って!聞いてねぇよ!」
「何がだ?」
「俺の仕事増えてんじゃねぇか!!病み上がりだぞ!」
「あぁ、レナードがサボった分の仕事が今お前に回ってきてるからな」
「な?それはあいつが」
「お前がサボらせたのにレナードに全部押し付けるなんて可哀想だろ」
「ちくしょーーーーー」
読んでいただきありがとうございました。少しでも面白いと思ったら☆を★にしていただけると嬉しいです!
別の話でも、お会いできますように。




