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ノリで秘密結社を立ち上げたら入ってくるやつ全員秘密しかなかった  作者: 恋狸


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最高の展開

 ──深夜3時、夜も更けきった頃に【プロトコル・ゼロ】の活動は始まる。


 蝋燭(※電子蝋燭)がゆらゆらと揺れ、円卓に座る俺と──深刻な表情に憤りを抑えているシャルミナを照らしていた。

 俺はいつものゲ◯ドウポーズで机に肘をついていると、シャルミナは待ってましたと言わんばかりに好戦的な笑みを浮かべて言った。


「……ついに来たのね」

「ああ、君が研究施設の場所を調査してくれたお陰さ」

「まさか傭兵時代の伝手が使えるとは思ってなかったわ」


 俺がいざ研究施設に踏み込もうと思った理由の一つに、秒速でシャルミナが研究施設の場所を割り出してくれたからだ。

 本来だったらもう少し長く時間を見るのがセオリーだが、どうにも焦っていることからきっとリアルで予定があったりするのだろうか。いつも世話をかけるな。


「……此度の研究施設へと潜入、及び殲滅任務は私も同行する。……訳あって力を出すことはできないが、目的が例の研究者の捜索……いや、奪還であるならば人手は必要だろう」

「……危ない、なんて言ってもボスは聞かないのでしょうね」


 シャルミナが苦笑しながらそんなことを言った。

 まあ、お前あんなこと言ってる割には出撃しすぎだろって文句がどこからか聞こえそうなものだが、今回の任務はどうにもこうにも人手が必要だ。


 それもそのはずで、第1の任務があくどいことをやっている研究者たちを不殺で殲滅し、捕縛した上で警察に引き渡すというもの。

 これは戦闘要員であるシャルミナとヤニおっさんの部下が何とかしてくれるだろう。


 そして第2の任務が例の少女を助けるために身を粉にした研究者の捜索と奪還だ。


 ……うーん、シャルミナがどういうシチュエーションを用意してくれているのかは予測するしかないからな。

 アイツはどうにもクッソ重い展開が好きなようだから、研究施設に行ってみたら例の研究者は骨になってましたテヘペロ! なんてなっても不思議ではない。


 俺としてはバッドエンド嫌い芸人だから何とか研究者役は生きてる、って設定にして欲しいところだが、こればっかりはシャルミナ神様に祈るしかあるまい。


「……情けないボスで申し訳ないが今回も戦闘は君たちに任せるよ。私は研究者の奪還を秘密裏に行わせてもらう」

「そんなことっっ……思うわけないじゃない! ……ボスは自己評価が低いのよ……」


 ボソリと不貞腐れるようにシャルミナは呟いた。

 なにかやってしまっただろうか。まあそこまでネガティブな表情でもないしセーフってことで。


「でも……護衛も無しに大丈夫かしら。勿論ボスの実力を疑ってるわけじゃないけれど……」

「私の任務が潜入である以上、単独行動のほうが姿を隠しやすい。……今はまだ私の存在が伝わるのは困るからな」

「そうね」


 キュッと唇を結んだシャルミナが頷いた。

 びくっ、と彼女の尖った耳が揺れ、緊迫感を助長させた。……え、どうやってやってるんそれ? 付け耳とかじゃないの?

 特殊メイク? ほな何とかなるかぁ……。


 勝手に納得しつつ、俺は懐に仕舞った新アイテムの存在を確かに感じ取っていた。……ふふふ、これを使えばきっと大袈裟に反応してくれるに違いない。

 前から考えていたアイテムだけど今回は俺も戦闘とかする予定ないしピッタリやろ。


「……そうだな配置を考えようか。ヤn……ごほん、白木巡の部下とは当日落ち合う予定だが、連携に支障をきたすのは本意ではないだろう」

「大丈夫よ。あたしは誰にでも合わせられるもの」

「そうか。君がそう言うなら私は信じよう」


 シャルミナはふふーん、と胸を張った。

 その瞬間に豊かな双丘が存在感を表したが、秘密結社のボスモードの俺は表層では何も感情を出さずに接することに成功した。

 

「では他には────」


 作戦会議を続行させようとしたその時だった。



 ガチャっと────開くはずの無い扉が開いた。



「っ!? 誰っ!?」

「……なるほどな」


 シャルミナは一瞬にしてどこかから刀を取り出すと、すぐに居合の体勢を取って臨戦状態になった。

 え、すご。見てなかったけどいつから刀差してたんだ?

 

 そして俺は扉から現れた人物を見て《《納得》》した。

 


「……おねがいが、あります」



 そこにいたのは、オッドアイの少女。

 今回の事件の被害者でもあり、人為的に異能を発現させる拷問同様の実験を受けていたあの少女に違いなかった。



 どうしてここに?

 そんな言葉は今更無粋だろう。


 俺は仮面の奥で口角がとにかく上がっていた。

 そうだよな。そうだよな。当たり前だよな。


 ただただ吉報を待つ人材がここに来るわけがないよな。

 きっと一緒に戦いに行くほどに勇気のある人間。でなければ秘密結社の一員として勧誘することは決してしないだろう。

 《《たとえそういうシナリオだったとしても》》。


 シャルミナがそういうふうに予定していたとしても、実のところ俺はこの少女が何も動かないようであれば、事が終わったとしても秘密結社に勧誘しないと考えていた。

 まァ、杞憂だったようだが……。


 ここに来るような人間だ。

 厨二病的最高のシチュエーションが待ち受けているのに、それを逃すわけがないだろう。俺だったら指をくわえて待ってるなんてできないね。


 さあ、俺は予想できるぞ。次の台詞を。




「わたしを、一緒に連れて行ってください」


「──共に行こう。君は一人じゃない」


「ボス!?」


 だからこそ俺は即答した。

 シャルミナがマジで驚いているように見えるがもしかしたらシナリオに無かった展開なのか? だとしたら俺から少女の好感度は爆上がり中の爆上がりだ。

 いや、今はシナリオなんて重要ではなく、大事なのはこの少女が勇気を出してここに来たということである。


 ふぅ、念のために持ってきて良かったぜ!!!



 俺は円卓の下に隠し持っていた顔の下半分を隠す仮面──昔の日本風に言うのであれば"面頰"だろうか? それの西洋バージョンといった感じか。

 さらにゴンさんから貰った生地は薄いが非常に光沢感のある漆黒のマントと片眼鏡──モノクルを少女に差し出した。


「こ、これは……?」

「君は来るだろうと思った。泣くほどだ。人前を憚らず泣くほどの深い悔恨だ。ただ他人の助けを待つだけなんて許せないと、私は理解していた。だからこそ、念のためにと君の装備を用意しておいたのさ。さ、受け取ると良い」


 すると少女はぐっと唇を結んで強い瞳で俺を見つめ、俺の差し出した厨二病一式装備を恭しく受け取った。

 うん、こういう表情すき。


「──ありがとう、ございます。わたしは、わたしは絶対に由美さんを探し出したいんです……!!」

「君を助けた研究者の名前かい? 勿論だ。元より私たちはそのためにいる」

「ハァ……こうなったらボスは止まらないわよ。……良いわ、あなたはボスと行動しなさい。敵はあたしが一掃してみせるから」


 ほう、俺と行動か。確かに捜索班だし悪くない。

 ……きっと、研究施設に乗り込むまでにシャルミナは俺と少女専用のシチュエーションを用意してくれているだろう。

 実に楽しみだ。まったく厨二病は最高だぜ!!


「君の名前を、教えてくれるか」



「──No.9。前のわたしは一度死んで、由美さんに生き返らせてもらったから」

「ああよろしく頼むよ、ナイン。一緒に助けよう」


 一緒に助けよう。

 その言葉に少女──ナインはハッと目を見開くと、仰々しく頷いてみせた。


「……これがボスの魅力なのかしら……困ったものね」


 後ろで苦笑しながら何かを呟いているシャルミナの言葉を、俺はついぞ聞くことができなかった。


「──作戦は四日後の深夜に行う。各自、ベストコンディションを整えて作戦に備えるように」

「ええ!」

「は、はい!」


 二人の返事に俺は満足したように仮面の下で笑った。



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― 新着の感想 ―
人が増えていきそうだw 研究員 多いにけっこう 組織に研究所は必須だよねw
厨二と言えばゲンドウまである。
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