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ノリで秘密結社を立ち上げたら入ってくるやつ全員秘密しかなかった  作者: 恋狸


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ボスと煙

 俺が大手を振って頼れる人間は地味に少ない。

 まずもって、状況(秘密結社ごっこ)を知っている人間であることが前提なため、骨董屋のおっさんとゴンさんは選択肢から自ずと外れてしまう。

 

 んでもってシャルミナに頼るのは確定だとしても、折角研究施設とかいう厨二レーダーがビンビン反応するクソデカシチュエーションを用意してくれたんだ。

 こちらも……抜かねば……無作法というもの……。


 そんなわけで俺が最初に思いついたのはヤニおっさんだった。

 シャルミナが雇ったキャストであり、ちょっと伏線を残して去っていったヤニ香るハードボイルド(?)なキャラである。


 さりげなくシャルミナにヤニおっさんのことについて聞くと、どうやら彼は白木(しらき)(めぐる)という名前で、異能関係を取り締まる刑事らしい。



 ふっ、俺はまたもシャルミナに感嘆せざるを得なかった。


 国家権力!!! 秘密結社ごっこには欠かせない存在!!

 いずれは雇わなきゃいけないよなぁ、と考えていた人材に最初から手を伸ばしているとはさしもの俺も予想外だった。

 本当に有能だなシャルミナ。絶対支援するからな。


「────白木巡、君に頼みがある」

『ハッ、随分と早い再会になりそうだな』


 電話越しにヤニの香りがした。

 普通、常識的に考えて一言二言しか話したことないヤツから電話がかかってきて、第一声が「君に頼みがある」とかいう上からの偉そうな発言だったら容赦なく切ってるよな。


 なのに即座に意図を察して合わせてくるあたり、このヤニおっさんもなかなかにデキる雰囲気を漂わせてくる。うーん、シャルミナの人選だけあって心配はしていなかったけど、これなら早いところ話が進みそうだな。


『……大方、異能実験施設に関することなんだろ?』

「随分と察しが良いな」

『このタイミングで来るってことはな。……それにしても、警察でさえ情報を掴んだのはつい最近のことなのにな……どうやらそっちのバックは大きいようだ。……いや、全てお前の手のひらの上なのか? マスター』


 俺は全部シャルミナに聞いたことを『うんうんそうなんだ許せねーやー』って噛み砕いて計画に移してるだけの無能だぞ。

 正直シャルミナ頼りになりすぎていることを最近の俺は地味に反省しているのもあるため、ちょっと俺から好きに動いてみようかなとも思っている。


 あ、勿論昇給はします。

 月給350万です。早く渡したいな。


「──言っただろう。秘密、さ」

『まァ、良い。それで、俺に頼みたいことってなんだ?』

「研究所の場所は私たちが探し出す。君《《たち》》には戦後処理を頼みたい。少々──派手にやるつもりでね」


 まだノープランです。

 とはいえ研究施設といえば最後に爆発して終わるのが筋だと俺は思ってるから、上手い具合に音響とかその他諸々で誤魔化しながら魅せたい所存ではある。

 そういう意味での「派手にやる」という発言だ。


『…………』


 俺の発言にヤニおっさんは少しの間黙った。

 いや……電話口からは小声で唸るような声が聞こえる。

 

 どうやら悩んでいるフリをしているっぽい。

 うーん、あの感じだったら短期契約っぽくないからいけると思うんだけど……リアルが忙しかったりするんかな。

 あ、そうだ。演技したまま報酬を提示すれば良いか。


「……勿論ただとは言わない。──一度だけ。一度だけ無条件で君に協力しよう。……ともに戦うことも構わないし、資金が欲しければ多少融通することも構わない」

『…………協力……デカいな……』


 ボソッと何かを呟く声が聞こえた。

 だが秘密結社のボスたる者は人の言ったことを聞き返さない(超絶偏見)。

 なので適当に無視することにしよう。

 そんな事を考えながら再びヤニおっさんは黙ったかと思えば、数十秒後にようやく口を開いた。


『……分かった。ただ条件がある』

「できる限り希望には添おう」

  

 ふむふむ条件とな? 

 即答しない辺り取引というものをよく分かっている。

 俺の周りには自分のキャラとか立ち位置に忠実なやつらばっかりだな。すき。


『戦後処理で研究員や用心棒で雇われている異能犯罪者を一斉検挙できるのであれば俺からも異存はない。……止めても無駄だろうしな。日にちさえ分かれば動きやすいし連絡は助かった。……だが流石にお前たちだけに任せることも俺の立場が許さない』


 なるほどな。

 ヤニおっさんは割と刑事の中では重要な立ち位置だったりするのかな? その割にはあの時おしっこ漏らしそうな表情でぷるぷる震えてたけどね。まあ、演技か。迫真すぎる。

 

 だが発言に関しては妥当性がある。

 別段協力関係を正式に結んでいない相手を無条件で信用することなんざ、特に自分の立ち位置が国家権力であるなら尚更信用することはできないだろう。

 だからこそ俺たちだけに任せることもできないのは分かる。


 うーん、となればヤニおっさんが付いてくるのかな?

 流石にメンツが代わり映えないのはなぁ……。


 と少し俺が渋っていると、ヤニおっさんは言った。





『俺の部下でな。無鉄砲だが正義感が強く、実力も十分なヤツがいる。そいつを一緒に連れて行ってくれないか? ……まァ、俺の立場としてはそれもグレーゾーンどころかアウトだが……』



 し、新メンバー投入きたぁぁああ!!!

 いやいやうんうん、メンバーが代わり映え無いのは些かロマンが無いなと思ってたんだよ。

 秘密結社としてメンバーが変わらないのは当然のことだが、社外の協力者の顔ぶれが変わらないのは擦りすぎだろうと文句を言われるに違いない。……いや誰にだよ。しいて言うなら俺か。


 そんな矢先にヤニおっさんから齎されたのは新メンバーの情報。


 ……無鉄砲で正義感が強い……ふっふふ、そんなヤツが俺たちみたいな怪しいことをしてる人間に何も言わないわけがないよなぁ? 非常に良い予感がするぞ俺は。

 

「構わない。日付と場所は追って伝える。この通話履歴は消しておいてくれたまえ」

『ああ、分かってる。……頼んだ。誰かが傷つくのはもうたくさんだ』

「ふっ……それは私も同じ想いさ」

『それが聞けただけでも安心だ』


 その言葉を最後に通話は切れた。

 十分に有用なやり取りをすることができた。


 さて……あとは、




 ──作戦会議の時間といこうか。

 新アイテムを携えて、ね。





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