神の試練
オルディアは仕事を済ませて時間を作るから、私は食事が終わったら、すぐに禊して神へ祈りを捧げるようにお願いされた。
私もお告げを聞きたかったから聖堂で無心に祈ってると、神から言葉をもらえた。
『勇者フルル。胸に刻まれたものは他の神からの試練です。
残念ですが、私には解くことが出来ません』
神の試練を他の神が解いちゃったら意味がないから、神同士の盟約で試練中は手を出さない、解除のために直接的な手を貸さないことが決められている。
答えを教えたり、発動しないようには出来ない。たとえ聖剣を授けてくれた神であっても、だ。
さらに祈っていると『弱化の呪い』で今は身体能力なども最低限まで下がったことを教えてもらえた。
『身に着け続けた聖剣ですら、今のあなたには重く感じることでしょう。
ですが勇者フルル、あなたであれば試練を乗り越えてくれると信じています』
神は人の営みには基本的に関与しない。
それでもティーカーにお告げしてくれたことへのお礼を伝えたら、優しい笑顔を浮かべた神の気配が遠のいた。
立ち上がるけど、神も言っていた通り、今は腰の聖剣すら重い。
魔族に襲われたらまずいかなって思ってたけど……オルディアが厳命してるみたいだし、守護者としてそばにいるティーカーが守ってくれてる分、安心出来るのは救いだった。
「ティーカー、守護者として頼りにしてるよ。よろしくね」
『俺にも神の声聞こえた。
けど弱化で俺より弱くなってるって……あの黒い神、フルルにどこまで酷いことすれば気が済むんだよ……』
今や体を動かすのも、違和感がある。聖剣は重くて振るのもやっとだった。
……多分普通の女性と同じ筋力以上にならないよう、呪いで押さえ込まれてるんだ。
体を鍛えて強くなった分さえも封じられてるって、廊下を歩く体が重いことでも分かる。これが筋肉の重みかな。
「今は仕方ないよね、あと十日の我慢だよ。
緩んじゃったら、また鍛え直す余地ができたってことにしよう?」
『こうなったら早く正解探そうぜ。
フルルを恨むやつなんて、やっぱり魔属性の神だよな。聖属性で勇者が嫌いな神いないし』
「うん……神界行った時も「大変だね」「頑張って」って声かけてもらえたから、神に恨まれてる印象がないんだ。
でも勇者である以上、魔族にならどこで恨まれてるかわからないんだよね。
……思いつく相手も一応いるけど、名前は不明。
当てずっぽうに言い続けて当てられるものじゃないと思うし、慎重に調べないとだね」
祈り終わったら執務室に来るように言われてたから、肩にティーカーを乗せて廊下を歩いてた。
だけどティーカーの方が私よりもよっぽど考えてるから、笑って頬を突いちゃった。
「大丈夫だよ、ティーカー。せっかく神界にまで来たみんなに、助けてもらった命だからさ。
絶対に名前も見つけるし、生き残るよ。安心して」
『フルルはあと十日で命も失うし、多分、魂も砕けるんだぞ。転生も出来なくなる。
俺はフルルが頑張ってきたのに、神にそんな終わりを迫られるのが嫌だ』
優しい仲間が、そばにいてくれる。
その事実が、どんなに救いになるのか……思い知った気分でティーカーに頬を寄せてた。
偽物たちだったら「フルルならなんとかなるよな、信じてる」って言われておしまいだった。
でも今は呪われてることを一緒に悩んで、解決のために動いてくれる仲間がいる。
改めて私のために神を考えてくれるティーカーの、優しい気持ちが沁みて……お人形じゃないのに頬擦りしてた。
「心配してくれてありがとう、ティーカー。
でもティーカーは、私の今までも知ってるはず。勇者なりに粘るから任せて」
辛い状況なんて、いくらでも乗り越えてきた。
絶体絶命の局面も、戦ってきたからこそ幾度も経験してきた。
今度はそれが、命を賭けた神の試練なだけだ。
「大丈夫、神の試練ってことは、人間にも必ず解けるってことだから。
そもそも神は人に解けない試練は課せないはずだからね、勝ち目はあるよ」
決意を込めて、仲間を見つめた。
私が死なないことで守れる仲間がいるんだって思ったら、自然と笑顔になってた。
「ね、ティーカーは笑っててよ。そのほうが気楽。今から辛気臭い顔禁止ねっ」
握り拳を差し出す。
ティーカーが文句言いたそうに百面相して迷ってたけど、思い切ったみたいに拳を突き出してくれたから合わせた。
『……ったく、フルルはしゃーねえなー……。
わかったよ、約束な!』
「うんっ、約束!」
不安になってたって、何も始まらないんだ。
前衛同士で拳を合わせて約束すると、ティーカーも吹っ切れたみたいで、ようやく明るく笑ってくれた。




