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2話 寇に兵を藉し盗に糧を齎す 中編

「つ、つまり……あなたはただの一般人だったってこと?」

「ただの一般人ではない!……ヴァンパイアという種族はご存じかな?」

「……!ヴァンパイア……つまりあなたはその種族ってことか……」


ヴァンパイア――吸血鬼とも呼ばれる。民話や伝説などでは、生命の根源とも言われる血を吸い栄養源とする、蘇った死人または不死の存在と言われている。

だが、この世界ではチスイコウモリと人間がハーフとして生まれた種族だ。

そのため、ニンニクや日光、十字架など、吸血鬼特有の方法で死ぬことはない。

ちなみに寿命は人間より200年は生きられる。


大昔では吸血行為をしたことがあるが、現在は科学が発展し、血よりも高成分の食べ物を作り出せるため、人を襲うことはほぼないと言ってもいい。

そう考えていると、レイズ…さんが言いだした。


「そう、君の言う通り、私はヴァンパイアに属する貴族の生まれなのだよ。子猫くん。」

「私は子猫じゃないし!食い扶ちくらい自分で稼げるから!」


私はそう反論すると、レイズさんが「すまない。」と謝った。根は良いやつなのかな……


「とにかく、私はヴァンパイアの貴族だが、旅をしていたのだ。故郷はレートテン(現代の地球だと、イギリス)からジャポニカにやってきた。」

「そんな遠いところから……で、そんな貴族様が何でジャポニカのこんな山奥の屋敷に来ているのですか?」


私がレイズさんに質問すると、レイズさんが口を開いた。


「フッ……何故ここにいるのか?それは……」

「それは……?」

「……財布を盗られたからだ!」


…………………………………………え?


「え?」

「ここジャポニカは治安がいいだろう?だからその治安の良さがどの程度か確かめてみたくて、後ろにいた目の前の人にわざと落として反応を見ていた……結果から言うと、その人は普通に持って行ってそのまま電車に乗ったのだ!」

「うん、馬鹿でしょ。」

「心に響く正論!」


何だそりゃ……じゃあ、ここに泊まっているのは無一文だから、勝手に住み着いているってこと?

うん……なんていうか……うん……この人が馬鹿にしか見えなくなった……


「……あのさ、どこの国も悪いやつはたくさんいるから自分は大丈夫って決めつけない方がいいよ?」

「はい……それは……以後気をつけます。」


反省しているのならよろしい。……あ、そういえば。


「フェリスちゃんだいじょ……」


フェリスちゃんがうんともすんとも言わないので心配になって振り向くと……目をめっちゃキラキラして私の方を見ていた。


「リビア種の少女様ぁ!?え?本物!?感情で猫耳と尻尾が動くあの!?しかもスタイル良いし、顔の表情も可愛いィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!しゅきィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」


フェリスちゃんは私に話しかけて、興奮していた。な、なるほど……熱狂的なファン……ってとこか。


「あ、ありがとうね……あ~……もしかして私の種族の特徴の猫耳とか初めて見る?」

「いえいえいえ!私はただ遠目から見ていたというだけですので、見てはいますがこうして目の前に立っていて、しかも話しかけてくれるなんて……」


そうフェリスちゃんは言うと、ドパッと滝のような涙を流した。……その涙どうなってるの?


「だ、大丈夫!?何か痛かった……?」

「い”い”え”!わ”たし”は嬉しいの”です”!!こ”う”し”て推しに認知さ”れ”るなんで……い”き”でてよかったぁーーー!!!」

「そこまで!?」


この子、依頼の内容だと10歳だよね!?人生2周目を歩んだ人しか言えないような語彙を使うほど、愛が深いことに若干引きつつ、フェリスちゃんに話しかけた。


「フェリスちゃん。もしよかったら、何でここにいるのかの説明と、この人との関係を良かったら教えてくれない?」

「!はい!あなた様の望みならコイツの個人情報すべてふんだくってきます!」

「あれぇ!?私、身ぐるみはがされるの!?」

「そうじゃない!?そうじゃない!?私は何でここにいるのか、そしてレイズとの出会いを知りたいだけなの!」


私はフェリスちゃんが目を輝かせたまま、レイズにスーツの襟に手をかけたので、慌てて止めた。

フェリスちゃんは手にかけるのをやめて、話し始めた。


フェリスちゃんの話によると、フェリスちゃんは元々貴族出身で、両親もろとも猫が大好きの家系に生まれたそう。

父親は大企業の社長で、猫や貧民国にいるリビア種の孤児たちを助けるためにあらゆる分野で、支援しているそうだ。

母親はマイペースのファッションデザイナーで、猫のマークをモチーフにしたワンピースや、ズボンなどを手掛けている。最近は、ガスマスクなどのデザインも担当しているらしい……何でガスマスク?

フェリスちゃんはそんな2人の影響か、大の猫好きになったそう。しかし、猫アレルギーなので、触れられないそうだ。

2人はそのことに苦しみ、フェリスちゃんを連れて、アレルギーに詳しい世界一の医者に見てもらおうと海外に出発しようとしたのだが……離陸する直前。


「待って!?私、空港に猫のぬいぐるみを忘れちゃった!?」

「フェリスちゃん、今からだと間に合わないから……また買いましょう?」

「そうだ、フェリス。猫のぬいぐるみは落とし物届けに届くはずだから…」

「嫌だよ!だって、2人が買ってくれた大切なぬいぐるみだもん!……盗まれたら……私……」

「行くぞ。母さんよ。」

「ええ、行きましょう。あなた。」

「ありがとう!」


親バカの両親は、フェリスちゃんの頼みで航空機から降りて、一緒に空港でロビーの方を探していた。そして……


「あった!あったよ!お母さん、お父さん!」


ロビーの空港のベンチの下にあったぬいぐるみを抱きかかえて、お母さんとお父さんに報告した。


「よくやった。さすが私の娘だ。」

「大変!後20秒でゲートが閉まるわ!みんな急いで!」


そして、駆けだしたその時。


「みぃ~……みぃ~」

「お?何だこの子猫?」

「!?」


フェリスちゃんは声がした方へ振り向くと、チャラい服装をした3人の男子高校生がどこから迷い込んできたか分からない子猫の前に立っていた。


「あれは……いえ、あの方たちは子猫様を保護してくださるはず。私は急いで……」

「コイツ、売ってみねぇ!?」

「……は”ぁ”?」


3人組の1人が子猫を売るという発言にブチ切れたフェリスちゃんは思わず立ち止まった。


「確かにそれいいな!小遣い稼ぎになるし!」

「だな!よーし早速、近場のペットショップを……」

「いいわけあるかァァァァァァァァァ!!!!!!オマエらァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

「は?何、邪魔すん……ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!???」


猫の命を大切にしない3人組にブチ切れたフェリスちゃんは両手に鉢を入れた観葉植物をハンマーのように振りながら、3人組に威圧した。


……観葉植物の重さ……鉢を入れて5㎏あるんですけど……火事場の馬鹿力ってやつ?

とにかく3人組に激怒し、その姿に恐怖した3人組はビビッて動けず、フェリスちゃんに服を掴まれて正座させた。そして二度と猫を売ることをしないと約束させたそう。


「「「ごめんなさい!ごめんなさい!もう二度と馬鹿な真似はしません!!」」」

「約束破ったら……監視カメラで特定してやりますわよ?」

「「「ひ、ひィィィィィィィィィィ!!!」」」


フェリスちゃんは3人組に脅すと、3人組は逃げて行った。


「はん!子猫様に不埒なことをしようとは……私の前では見過ごせませんわ!さて、子猫様、もしよかったら私の家族に……あれ?」


子猫は親猫に連れられてそのまま出て行った。


「ま、まぁまぁ……親猫様がいたのですね……さて、航空機に戻……あ。」


こうしてフェリスちゃんは航空機に乗れなかったのだ。


「……というわけで、私はこの別荘があることを思い出し、そのまま直行したのです!」

「な、なるほど……?」

「ところで、空港からここへどうやって来たのかね?」

「財布には貴族専用のカード、ブラックダイヤモンドカードを持っていたからタクシーに……」

「ブ、ブラックダイヤモンド……入会金100万円で、年会費60万円 (税抜)と最高級のクレジットカードのあの……?」

「もしよかったら猫耳少女様もどうぞ!」

「使えるかァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

航空機から降りれたという出来事はこの世界の独自のシステムです。

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