魔王との邂逅
タケアキとドンズが破壊神ギガイガンの体内でサナダワームに対峙している一方、場面は魔王城裏で営業するらぁみょん屋に何故か転移してしまったサオリとリリィに転換する。
店内で、らぁみょんが出来上がる間に禍々しいオーラを放ったお客さんが1名入店したところである。
彼は、お行儀よく2人の後ろの食券機で食券を購入したかとおもうと、L字型のカウンターの、一番奥に着席した。リリィが決してその客人の方向を振り向かないよう制したため、はっきりした顔や形を視ることは叶わなかったが、寡黙な店主は彼がカウンター上に食券を置いたのを無視し、2人のらぁみょんを黙々と仕上げていった。
そして、ほれぼれするような、見事な平ざるでの湯切を終え、醤油らぁみょんに麺が投入された。次に、オーク肉、海苔とメンマ、青ネギのトッピングされた2杯が、白い札の置かれたカウンター前に置かれたのであった。
「いただきみゃーす!」
と、リリィが小声で手を合わせ、サオリも追随した。店内に響いた元気な声に、店主が一瞬、こちら側を睨みつけるが、すぐに次は、新規客の札を確認し、新たに麺を大鍋へ泳がせはじめた。その間に2人はスープを啜った。
「!!!???」
旨すぎる。はっきりいって、サオリには、脳天に衝撃の走るような味がした。スープはあっさりとした淡麗系であり、鶏と豚の出汁、それに醤油が調和し(それぞれが、厳選して調達した食材のようだ)、まるで一つの壮大なオーケストラを聴いているような気分に陥った。なんなんだこれは。もしかして、転生してきたこの舞台は、ファンタジーものにみせかけて、グルメがメインテーマではないのか!?
「うみゃーい!」
「リリィちゃんすごいわね。こんなにおいしいの、食べたことが無いわ」
次に、2人とも麺を啜った。サオリは直接箸で持ち上げ、口に運ぶのにたいし、リリィは一旦、レンゲに載せてから、口に運ぶのであった。
そうこうしているうちにもう1名、お客さんが入店してきた。瞬間、店内はまたしも異様な雰囲気につつまれた。といっても、今度の客人に邪悪なオーラはなかった。客人は、デップリと太った体臭のキツイ巨漢だった。口から涎をたらしているし、何より店内全体が、ツンとしたニオイで覆われてしまったのである。これがオーラの正体だった。いや、オーラなぞといえる代物ではないか。
この時またしても、怪訝な顔をした店主が入口側を一瞥し、一言を発した。
「お客さん、悪いですがね。ニオイのキツい方は入店禁止です。なぜかというと、麺や食材が死んでしまうんですよ。特にコギミュン粉の香りね。デッカイドから取り寄せているんです。うちはね、とにかく食材にこだわっているのですよ。申し訳ございませんがお引き取り願います」
「・・・あぁ!?んだとゴラァ!俺はよぉ。腹がすいているんだよ。俺はよぉ。客だぜぇ!お客様は神様じゃねーのかよ!金を出すんだからヨォ、さっさとご自慢のらぁみょんを、作れや!バァゲェェェェ!!!」
見た目、体臭だけでなく、態度もひどい客だった。コソコソと2人は言葉を交わした。
「(リリィちゃん、今度は見つめているけれども、この人は大丈夫なのね?)」
「(うん、嫌なお客さんだね。リリィが退治してもいいのだけどね、じっとしていた方がいいとおもう)」
「そうかそうか。分かりました、あんたは客じゃないから、追い払ってやるよ。お代はいらないよ。帰っていいよ!!!」
寡黙な店主は、おそらくネギやオーク肉を刻むための包丁を右手に持ち、天高くふりかざした。その刹那、奥にいた男が口を開いた。
「マスター!やめたまえ。貴殿には、この芸術作品とも言えるらぁみょんを作りづけるという使命がある。ここは、某に任せたまえ。魔王デスガイガンの名にかけて、醜いクレーマーを追い払おう」
「デスガイガンさん、あんた、いいのかい。いまはプライベートでしょう」
「かまわんさ」
「んだとゴラァ!、、、ん?、、、あれ、、、、、、」
少したつと、邪悪なオーラがまたしても、そしてこちらは真にオーラといえるものであった訳だが、店内を覆い、気がつくとみるみるうちに、太った体臭のキツイ客人の身体が圧縮されていった。そのまま蝿のように小さくなってしまったかと思うと、ペシャンと音をたて潰れたかのような音がした。
サオリは震えながらリリィを見つめていた。




