千年島
こうして、目的の千年ドラゴンを信じ、サオリ一向はその背中に乗るようにした。この巨大な竜が実は魔物であり、どこかよからぬ場所へ連れて行かれるのではという懸念もあったが、サオリ、タケアキ、ドンズは、いまは巨竜が魔法少女リリィと知り合いであることを信じたというわけなのである。それに、千年ドラゴンという個体はかつて魔王にいどんだ結果、敗北を喫し、攻撃力が大幅に低下、さらにはブレス系の攻撃もできなくなったときいており、これだけの格好良い姿をしておきながら(いままで出会った中で、もっとも、ドラゴン然とした格好をしていた)、空を飛び、背中に乗た対象を運ぶ役割しかできないというのは、なんとも悲劇的にサオリは感じた。
千年ドラゴンのポピンは、宿屋に向かうと知らせてくれたが、どういうわけか、速いスピードをもって、ただただ上空へ昇るばかりなのであった。そのままサオリはおもわず疑問を口にした。
「あのぅ。ポピンさん?いまから私達がいくのは、宿屋なのよね?どんどん地上から離れているように見えるのだけど」
「ウフフフフフ、安心してください。ポッピンホテルにはもう少しで到着いたしますよ」
「これはおそらく、高度5000メートルほどまで上がってしまいましたよ」
千年ドラゴンは、雲の上をまでをも突き抜けたかとおもいきや、そこには見たことのない光景が広がっており、ちょうど、サオリが暮らしていた世界であれば、東京都管轄の伊豆諸島に浮かぶ一つの離島ほどの大地が宙に浮いていたのであった。
「皆様、もう少しでポッピンホテルのございます、千年島へ到着いたしますよ!」
「どういうことやねん!」
リリィ以外の3名は驚いた様子で目に見える光景を眺めていた。天空に浮いた大地は、下半分が岩となっており、上側は緑が生い茂っていた。その天辺に立派なタワー型の建物がそびえており、高さは180メートルほどに及ぶようにみえた。もしもそれがポッピンホテルとするならば、このドラゴンは随分な手腕の持ち主である。ホテルを経営しており、竜にも変化ができる。唯一のコンプレックスがあるとするならば、魔王に敗北したことぐらいであろうか。あとは炎が吐けないこと。この点ではタケアキのキューブに収められているオヂキメラのほうが、勝っていると言えそうだが。
「これはこれは。本当に実在したとは思いませんでしたよ。天空の島、千年島ですね」
「そしてあの建物がポッピンホテルってわけ?随分とご立派ね」
「ウフフフフ、そうでしょう。そう見えますよねえ。あれだけの建物を目にしたらね、それは立派という以外に感想の持ちようがないでしょう。なにせ、私の血と汗の結晶ですからねぇ。ただですね、まぁそれは、到着してからのお楽しみです」
「えらい含みをもたせるわ~。だいたいね、ホテルよりも、この宙に浮いた島が衝撃ですわ!!なんなんこれ??すごすぎて、アップでみんなに見せたいわ~」
「ウフフフフフ」
こうしてサオリ一向は、千年島のポッピンホテル前に上陸し、ポピンは人型の姿にもどったのである。辺りは樹海となっており、中央部にホテルがポツンとそびえ立っていた。かなりの威圧感がある。ホテルというよりは、まるでなにかに備えた要塞にみえる。
「改めて、勇者御一行様、お待ちしておりました。当ホテルで十分に英気を養ってから、魔王討伐にお望み下さい」
勇者?ここにいるのは、モンスターオタクの冴えない男と、関西弁の槍使い、頂き女子風の魔法少女、そして、ようやくヒーラーとして開眼した元こども部屋おばさんじゃないか。勇者はどこにもいないじゃないか。なぞとサオリは心の中で呟いたが、とりあえず黙っていた。




