大木の加護
発射されたツノが貫通し、うめき声を上げながら倒れる二体の馬を眺めながら悲しそうな表情を浮かべる馬車の運転手に、タケアキが冷淡な声掛けを行った。
「運転主さん、つかぬことをお伺いいたしますが、魔王保険は加入済みですか?」
「あなたねぇ!このタイミングでそれをききますか?まあいいでしょう。質問に答えますとね、ええ、加入するよう、保険屋さんに薦められましたからねぇ。当然入っていますよ。自分のことを、『小職』となのる、やけに礼儀正しい保険屋でしたね。もしも加入しておらず、サツホロの窓口にでもいったところで、過去1年以内に魔王軍に襲来されたとあっては、魔王保険にはどこもいれてくれませんからねぇ。でもねえ、今は詳細な契約内容を確認するよりも、あの一角獣をなんとかするほうが先ではありませんか?とはいいつつ、この映像を撮影しておかなければ、保険は下りないかもしれませんがねぇ。それにしても、魔王軍がデッカイドを制圧してしまったとなれば、いくらなんでも、すべての損害を補填しようとしたら、破産してしまうでしょう。魔王保険とは、適度に彼奴らが攻めてこず、シューホンにくすぶっている限りにおいて、保険会社からしてみれば利益のとれるサービスでしょうからねえ。もしかして、グルなんですかね」
「あっ。それ以上は。分かりましたであればね、とにかくご心配はいりません。私の魔法エルエスの応用技を使って、この一部始終を映像におさめているので。水晶に浮かべれてみせれば間違いなく、馬車をもう2頭購入できるぐらいの金額は下りるでしょう!」
「ほほぉ。そうきましたか。分かりましたよ。その水晶を、買い取らせていただきますよ。とにかく今はあのランスキメラを退治してくださいよ」
「あい承りました!」
「キィィィイィ!!!ボンッ!!!」
馬車のドライバーとタケアキが、明らかにこのタイミングではないというときに、スカイワールドなのか、デッカイド国だけの話なのかわからないが、どうにも存在するらしい保険制度について語り合っている間にも、今度はすぐに生えてきたランスキメラのツノが運転手に向かって発射され、運転手がとうとう貫通されるかと誰もがおもった刹那、ドンズが飛び出し、なんと、華麗な槍さばきではじいた。そして、またしても大木の根本に突き刺さった。
「お~ん響くでこれえ!」
リリィは相変わらずグッタリとあえでいるが、先程と比較すると表情が和らいでいるように見えた。
「んっんっ、、ねえドンズっちきいて!大木の精霊が加護をくれたみたいなのー。ドンズっちがんばったから、回復させてあげる。んっ、、、あっ外れちゃった」
リリィは微力な回復系の魔法を発したらしく、癒やされるような風が吹いたけれども、それはドンズの疲れを癒やすことにはならず、ランスキメラ方面に進行し、そのまま直撃してしまった。
「リリィちゃん!敵にあたってしまったわよ!ランスキメラが回復して、元気になってしまうわよ!!!あれ?」
何故か、回復したはずのランスキメラは、逆にダメージを受けているように見え、おまけにそれは、割と甚大なダメージと見えた。タケアキが残念そうな顔をしつつ、解説をしはじめた。
「進化後は、やはりアンデッド系でしたかぁ。リリィちゃん、わざと外しましたね。流石です。オヂキメラ、いきなさい。いまなら力を貯めても。大丈夫ですよ。あーあ、もう終わりですか。敵のモンスターが我々を全滅寸前まで追い込むぐらい、活躍する姿が、みたかったなぁ」
「なにいうてんねんアホンダラァ!」
「冗談です。誤解させてしまったのであれば、深くお詫びいたします」
「グォォォォ」
ドンズがタケアキを一喝したかと思うと、シャチ、ブラックバス、ニジマスがそれぞれ、プルプルと震えだした。サオリは以前のオークボパークで、トミゾウが受けきったときよりも酷い悪寒におそわれた。プルプルとした震えは大きくなり、ここ一体に軽い地響きが発生する事態となった。大木の後ろにある線路がより歪みはじめ、サウンザンドイヤーいきの列車についていえば、復旧時間が伸びそうだった。




